名人になっても“現役最強”と呼ばれても変わらない「渡辺明」というとにかく強い棋士
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 新名人となって1カ月半ほどが経った。「名人」と呼ばれることにもようやく慣れた。ただ、渡辺明名人(棋王、王将、36)の様子は、最も歴史あるタイトルを手にしても特に変わらない。「反響は大きかったので、その大きさでタイトルの重みは改めて感じましたけどね」とあっさりしたものだ。歴代5位、現役3位となるタイトル26期と、既に将棋史に名を深く刻んでいる棋士だけに、名人と呼ばれても、時に“現役最強”と呼ばれても特に動じない。ただひたすらに、強い棋士だ。

【動画】前年覇者として出場している将棋日本シリーズ JT杯 プロ公式戦

 8タイトルのうち3つを保持し、序列も将棋界トップ。最年少でタイトルを獲得した藤井聡太二冠(18)と対決した際には、“現役最強”という表現がよく用いられた。「自分ではなく、メディアのみなさんが勝手に書くことなんで、まあ別にお好きにと。最強の棋士の一人というのがありましたけど、『いやいや、最強というのは1人でしょ』とは思いましたけどね(笑)」。長年将棋界を引っ張ってきた羽生善治九段(50)、大注目の藤井二冠と同様に、メディアに取り上げられることも多いが、いたって本人は落ち着いたものだ。

 メディアとの付き合いという意味では、エンターテイナーとしての部分を見せることでもファンには有名だ。王将戦では、主催であるスポーツニッポンの要望に応えて、地方にちなんだおもしろ写真を撮影するのも恒例になっている。対局中の厳しい表情から一変、エンタメ心全開の様子を、ファンは楽しみにしている。

 非公式戦ながら、プロ将棋界初の団体戦として話題となった「第3回AbemaTVトーナメント」では、所司一門の弟弟子たちと一緒に盛り上がった。チームメイトだった近藤誠也七段(24)の登場時には、「その場で適当にやろうかと思った」と、手元にあったうちわを使い、石井健太郎六段(28)とプロ野球風の応援で盛り上げると、これが大ウケに。「1回目の反響が大きかったから、次は何をしようかっていう感じになってきて(笑)近藤くんも『先生、今日は何をするんですか』みたいになっていたから、いろいろ考えましたよ」とアイディアをひねり出した。結果は、対戦相手の「チームバナナ」という名前を利用して、格闘技ばりにバナナを食べて見せるパフォーマンス。さらに、オリジナルTシャツでまゆげが薄かった自分の顔に、妻で漫画家の伊奈めぐみ氏に「ゴルゴ13」風まゆげを描き足してもらうという飛び道具まで用意し、またウケた。自分が道化を演じることで、後輩棋士にも注目を集めるという点においては、会心の一手だった。

 将棋日本シリーズ JTプロ公式戦では前年覇者として準決勝に進み、王将戦では現タイトル保持者として、全員がタイトル経験者という超ハイレベルな挑戦者決定リーグ戦を勝ち抜く挑戦者を待ち構える。「番勝負は1月からなので、まだ何も考えていないですが、12月ぐらいからぼちぼち考えようかなと。年内は対局も少なめだし、疲れを取りつつ年明け以降の準備をしていこうと思います」と、コンディションづくりにも隙がない。最強の挑戦者を迎えた時、メディアは渡辺名人に対してどんなフレーズをつけるのか。ただおそらく本人は「お好きに」と軽く笑って、また戦いに集中する。

「将棋日本シリーズ」二回戦第四局 渡辺明JT杯覇者 対 高見泰地七段
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渡辺明名人のパフォーマンスが話題に
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