2020年、DDTプロレスリングは激動の時を迎えた。
プロレスリング・ノアがDDTと同じサイバーエージェント傘下となり、高木三四郎が両団体の社長に。さらに9月からは2団体が「CyberFight(以降サイバーファイト)」として経営統合を果たした。社長は引き続き高木が務めている。
DDT、ノアともに共通しているのは“攻め”の姿勢だ。緊急事態宣言の中でも無観客試合を続け、有観客大会を再開するとビッグマッチも。ノアは8月の横浜文化体育館に続いて11月22日に横浜武道館、さらに12月6日に代々木第二体育館で大一番。DDTは11月3日に大田区総合体育館大会を行なう。DDTグループの東京女子プロレスはTDCホール大会(11月7日)が待っている。
「今だからこそ、止まらずに動きたい」
高木にインタビューすると、会社としての基本的な姿勢を簡潔に表現してくれた。
「縮こまるんじゃなく、動くことで外にアピールしていきたいですから。今、マット界を見渡してもビッグマッチをやる団体は少ない。新日本プロレス、スターダム、サイバーファイトが業界を牽引しているという自負はあります」
10月にはDDT系列のガンバレ☆プロレスが久々の後楽園ホール大会に打って出た。
「ガンプロは去年は後楽園大会ができていないわけで、本来なら今のタイミングじゃないのかもしれない。だからこそ逆にチャンスだなと。今こそ世間と勝負する時なんじゃないかと思います」
11.3DDT大田区大会では、KO-D無差別級王者の遠藤哲哉が佐々木大輔を相手に防衛戦を行なう。コロナ禍で今回は実現しなかったが、遠藤は当初、ケニー・オメガを挑戦者に指名していた。
「ケニーの名前を出したのもそうですし闘いたい相手として武井壮さんと言ってみたり森咲智美さんの名前を出してみたり、マスコミや団体の外の人たちが気になることを言おうとしてますよね。もしかしたら、うちの選手で一番、世間と向き合ってるかもしれない。もともとポテンシャルは高くて“あと一つ何かがあれば”という選手だったんですが、その“あと一つ”がチャンピオンになって出てきたかなと」
DDTを主戦場にするため日本に移住したイギリス人、UNIVERSAL王者のクリス・ブルックス。11.3大田区でクリスに挑戦する上野勇希。さらにデスマッチ戦線で大きく飛躍した勝俣瞬馬など、今のDDTは若い層がぶ厚くなってきた。加えて大きいのがベテラン・秋山準の全日本プロレスからのレンタル移籍だ。ジャイアント馬場の流れをくむ“王道プロレス”を知る男がDDTのメンバーになったのである。技術面だけでなくプロとしての姿勢、ファンへの向き合い方まで含めて秋山加入の影響は大きいと高木。
「秋山さんがいることで、選手の意識が変わってきてますね。もの凄く刺激を受けてます。また秋山さんもDDTにきたことで変化してるじゃないですか。ビックリしたのが、ツイッターのライブ動画配信を毎晩やってるっていう。なかなかできないですよ、そんなこと(笑)。たぶん全日本にいたらやってなかったと思うんですよね」
無観客配信大会では、映像で見せることに特化した試合も。DDTらしいアイディアは、今後も大きな武器になるだろう。
「映像に関しても、新しい手を打とうと思ってます。ただ、これから大事なのは小さくまとまらないこと。DDTは昔から“規模は小さいけどアイディア勝負”でやってきた。でもこれからは、そのアイディアを使って状況を大きく打破することが重要になってくる」
東京女子プロレスに関しては「甲田哲也代表が“着実に満員に”という考えなのでTDCホールになりましたけど、ゆくゆくは両国(国技館)に挑戦してもいいと思います」と言う。スポーツ、エンターテインメント業界にとって厳しい時期だが、だからこそ大勝負のしがいがあるというわけだ。11.3大田区では、高木は青木真也と対戦する。テーマは団体全体と同じだ。
「世間に届かせる試合にしたい。コップの中の嵐じゃなくね」
文/橋本宗洋