先月、男性アーティストとの熱愛を報られたある女性アイドルが、即座にグループからの脱退を発表した。所属事務所の説明は「自覚を欠いている」。一方、現役アイドルでありながら結婚を発表しても炎上せず、むしろファンから祝福されるケースも増えている。
女性アイドル、そしてファンにとって、「恋愛禁止ルール」とは一体何なのか。18日の『ABEMA Prime』で議論した。
・【映像】"恋愛禁止"ルールは必要?でんぱ組.inc&元PASSPO☆×ヲタで本音で議論
■参加者(50音順、敬称略)
・安東孝洋(ABEMA Primeスタッフ、アイドルオタ歴15年)
・柴田阿弥(SKE48元メンバー、現在はフリーアナウンサー)
・古川未鈴(でんぱ組.incメンバー、2019年に結婚、今年1月に妊娠を発表)
・槙田紗子(PASSPO☆元メンバー、現在はアイドルプロデューサー、振付師として活動)
・若新雄純(プロデューサー、慶應義塾大学特任准教授)
■槙田紗子「入って3年くらいは新人。練習に時間を使うんだという覚悟が欲しい」
槙田:振付師の目線では、やっぱり恋愛をすることでかわいくなったり、表現力が磨かれたりすることがあります。ただプロデューサーの目線では、「一生ダメと言っているわけではないんだ、少しくらい我慢したらどうか」という気持ちになりますね。
アイドルというのは、入って3年くらいは新人。その期間に恋愛がバレてしまった場合、バッシングされる可能性も高いので、アイドルという職業を選んだ以上、最初の3年くらいは練習に時間を使うんだ、という覚悟が欲しいです。
若新:同じような条件の新人アイドルでも、恋愛禁止ルールを謳っている方がファンは付きやすいんでしょうか。
槙田:それはあると思います。やっぱり“非日常的”なものを提供するのがアイドルだし、みんなのものであって欲しいと思っていたはずが誰かのものだったとわかった瞬間に冷めてしまうことはあると思います。それは女性ファンも同じで、同性だからといって恋愛を応援するとは限らないし、女の子の方が独占欲が強くて“普通にガッカリなんだけど”と思う子もいるはずです。
若新:家業で、それ以外の職業を選択できなくて…という人が恋愛禁止のルールを課されるのは辛いけど、アイドルの場合、多くの人は自分で選択してなっているはず。その上でビジネスとして成立させて収益を上げていくことを考えれば、プロデューサーや事務所が恋愛禁止ルールを課すのはおかしなことではないと思う。逆に言えば、「恋愛してもOK」という事務所が存在したっていいし、それで人気が出るグループだってあるかもしれない。
■アイドルファン「いきなり契約と違うことが起きれば、それは怒るというか、反論したくなる」
安東:どこまで、誰ならオッケーというグラデーションがある判断を女の子たちに握らせるよりも、事務所としては恋愛禁止を謳った方が、運営としてやりやすいと思います。そしてファンとしては、スポンサーであり、ビジネスパートナーでもあるという感覚もあります。ブランディングやステージ、情報発信を、いわば“カタログ”のように見て好きになっていくわけで、恋愛禁止のルールだったはずが、いきなり契約と違うことが起きれば、それは怒るというか、反論したくなりますよ。
柴田:AKB48は恋愛禁止で有名になったグループですけど、恋愛禁止をはっきり謳っているアイドルって、それほど多くはないのでは…?
安東:確かに、地下アイドルや奇をてらったコンセプトのグループの中には、“うちらは全然オッケーよ”と言うところもありますよ。ただ、限られた“アイドル好き”層のパイの中からお客さんに来てもらって成功していくことを目指すのであれば、いわゆる“正統派”、“ど真ん中”を狙うのが近道でしょう。アイドルになろうと思う女の子たちが目指すのも、やっぱり“正統派”が多いはず。
古川:今のアイドルは多様で、「絶対に恋愛禁止」というグループもあれば、「自由に恋愛していい」というグループもあります。ただ、安東さんのおっしゃることはよくわかるし、そういうファン心理を邪険にしてはいけないと思うので、やっぱり周りや会社には迷惑をかけない、というのが大前提だと思います。
私の場合、プロデューサーたちと事前にかなり話をした上で決めたし、ライブでファンの皆さんを前に発表したのも、アイドルを続けていきたいと思ったからこそのことでした。“金返せ!”と言われたり、その場で帰ってしまわれたりするかもしれないと思って臨んだんですが、驚きの歓声と、嬉しい悲鳴とで会場がワーッとなってくれました。いいファンを持ったと思ったし、もっと信用していれば良かった、という気持ちにもなりました。
■古川未鈴「それまでのブランディングが大事、ということなのかも」
柴田:ただ、(NMB48の)須藤凜々花さんが発表したときにはすごくバッシングされましたよね(笑)。
古川:そこは、それまでのブランディングが大事、ということなのかもしれないです。
若新:古川さんが12、3年にわたって続けていた、ということが大きかったんじゃないでしょうか。槙田さんが言うように、最初の数年間は一緒に頑張る。そういう時期に発表すれば、「何で自分だけ行ってしまうのか」、という気持ちになるでしょう。でも、長く応援しているうちに「自分に何を返してくれるのか」というところから、「もう十分楽しませてくれたし、メンバーにも幸せになって欲しい」という気持ちに変わってくるじゃないかな。
古川:私も、そういうファンの気持ちにライブで返したいなと思ってきました。ハロプロさんやSPEEDさんの、すごくプロフェッショナルなステージが大好きで、あそこには近づけないかもしれないけれど、少なくとも皆さんに恩返しはしたいという思いが強かったので。ライブで発表したのは、そういう理由もありました。
安東:僕はでんぱ組.incのステージも知っているし、古川さんが10年以上も活動をしてきたことも知っています。ファンとの信頼関係があった中で結論に至ったということも十分リスペクトしています。その上で、やっぱり“前例”を作ってほしくはなかったという気持ちがあるんです。
柴田:アイドルである以上、純潔を求めると?
安東:絶対にそうでなければならないというわけではなくて、アイドルとして活動している以上、そのくらい本気というか、そういう気持ちそうであってほしかった、ということだです。今の時代、隠れて恋愛をすることなんてできないと思います。アイドル同士、仲間同士だってライバルなわけで、そういうところからのリークも当たり前の世界ですからね。
柴田:“そのくらいの本気で”というのは、ファンからしたらそうだと思います。ただ、アイドルになった時のモチベーションがみんな一緒かというと、実は親が応募して合格しちゃった子とか、ノリで受けただけの子とか、ただチヤホヤされたいだけというような子もいるんですよ。逆に言えば、アイドルというのはそのくらい間口が広いというか、なろうと思えばなれてしまう職業でもあるんですよね。そうだとしたら、上を目指して頑張るんだ、同じ夢を実現するんだというモチベーションで全員を統一するのも無理かなと。そこがすごく難しいです。
■柴田阿弥「恋愛禁止をルールにしたところで、守らない人は守らない」
槙田:モチベーションの差ってグループ内でも間違いなくあるし、恋愛をしてしまうことでメンバー同士の関係がこじれる場合もあります。こそこそ恋愛していた子が他の子に“恋バナ”を共有し始めることで、そっちに流されていってしまうことも。そういう意味でも、恋愛というのはリスクが高いことなんです。
柴田:皆さん『週刊文春』を読み込んでいると思うし、“どうせみんな恋愛しているんだろう”と思っているかもしれませんが(笑)、現役アイドルのみなさんの名誉のために言っておくと、ちゃんと恋愛禁止を守っている人が多いんですよ。
そして、それは必ずしも“ルールだから“という理由で守っているわけではないです。私もそうでした。人生に勝ち負けはないですが、アイドルが競技だとすれば、いかに人気を集められるかで勝ち負けが決まる世界だし、最も露骨に人気が下がるのが恋愛スキャンダル。特にAKB48グループの場合、総選挙の時期に入ると、どんなメンバーでもネットに載ってしまうことになるから。
逆に言えば、恋愛禁止をルールにしたところで、守らない人は守らないし、人間は禁止されることでかえってやりたくなってしまう。大人だって、不倫はいけない、失うものが多いとわかっているのに、する人はするじゃないですか。そうだとしたら、仕事への意欲、いわば“プロ意識”みたいなものをファンの方が見抜いて信頼し、応援する、という流れにしていく方が効果的だと思います。私自身も、“こんなに応援してくれる人がいるんだから、悲しませてはいけないな”と思うようになりましたから。
若新:しかも48グループは“未完成”であることに対して投資してもらうという新しさのあるグループだったから。“疑似恋愛”というのもあるけど、“自分は投資をしている”という思いは性別に関係ない。一人前になるためにこれだけ頑張って応援してあげたのに、先に行ってしまうの?と。その点、古川さんは今であればファンに許してもらえるのではないかと判断したんでしょうね。
槙田:ファンとしては、アイドルを続けてくれることを選んでくれてありがとう、という気持ちになったんだと思いますね。
古川:発表した時、“おめでとう”よりも、アイドルを続けるということも含めての“ありがとう”が多かったのが印象的でした。
柴田:ただ、悲しくなる気持ちはわかりますけど、まあアイドルにはいくらでも代わりの子がいるから、恋愛スキャンダルが出たらまた違う子を推せばいいんじゃないの?とも思っちゃいますけどね。(笑)
槙田:そうなんですけど、運営サイドとしては「それでいいや」とは言えないんですよね(笑)。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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