災害時の悪質デマを防ぐ“サイバー防犯ボランティア”KC3の活動 「真偽がわからない情報は拡散しないで」
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 「おいふざけんな 地震のせいでうちの近くの動物園からライオン放たれたんだが」

 最大震度7を二度観測した熊本地震から5年。当時、深刻な問題となったのが、SNSに投稿された事実無根の“デマ”だった。

【映像】“サイバー防犯ボランティア”KC3の活動

 地震発生直後、神奈川県に住む会社員の男性がTwitterに「地震のせいでうちの近く動物園からライオンが放たれた」などと嘘の情報を投稿。投稿後、動物園には問い合わせの電話が殺到。その数は100件以上にのぼり、投稿者した男性は動物園の業務を妨害したとして逮捕された。災害時にネット上でデマを拡散させ偽計業務妨害の疑いで逮捕されたのは、これが全国で初となるケースだった。

 最近でも、新型コロナウイルスに関連したトイレットペーパーの買い占めなど、度々問題となっているデマ。そんなデマの拡散を未然に防ぐため、熊本で活動を行う団体がある。

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 サイバー防犯ボランティア「KC3」。サイバーパトロールを主な目的として活動する、大学生の団体だ。2011年に発足したKC3は、熊本県内4つの大学の学生らによって運営され、熊本県警との連携のもと、SNS上などの違法・有害情報を調べ、危険だと判断したものを警察に報告する活動を行っている。

 『ABEMAヒルズ』は、今月代表に就任したばかりの熊本学園大学4年・吉田海里さんに、「サイバー防犯ボランティア」の活動について話を聞いた。

 「学校のパソコン室に集まって、Twitterを中心に問題のある投稿があれば熊本県警に報告するという活動をしている。実際に報告したのは、例えば『コロナに○○が効く』っていうようなデマであったりとか、『コロナ自体がバイオテロ』といった根も葉もない噂は真っ先に報告させていただいた」

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 デマ投稿を見つけ、報告する。そんな地道な活動が評価され去年、「令和2年 安全安心なまちづくり関係功労者表彰」で内閣総理大臣賞も受賞したKC3。一方で、吉田さんは「自分たちはあくまで情報提供の立場」とした上で、災害時などにデマ投稿を見極める難しさを指摘する。

 「(ファクトチェックは)基本的には公式な情報、官公庁が出している情報とかと見比べるしかない。簡単に誰でも情報発信できるから、リアルタイムの災害で実際に起こっていたら本当の可能性も確かにあるが、やっぱりすぐには判断できないと思っている。真偽がわからない情報については、そもそも投稿しないとか拡散しないというのは僕らが呼びかけないといけないかなと思う」

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 現在は、パトロールの他に小中学生などに向けたサイバー防犯講話なども実施。SNSの危うさを理解した上で、楽しく使って欲しいと吉田さんは話す。

 「実際はすごく便利なものなので、例えば悪意のある投稿やいたずらであったり(を避けて)、マナーをしっかりと守っていただく。真偽のわからない情報については、むやみに投稿であったり拡散はしないということをしていただければ、とても便利で楽しいものになるんじゃないかなと思う」

 慶応大学特任准教授などを務めるプロデューサーの若新雄純氏は、この活動を通して人々がネット上でデマを発信してしまう心理にまで踏み込んで欲しいと期待を寄せる。

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 「どうやったらインターネット社会でデマの発信を減らせるようになるか。別にネットやSNSがなくても、人間はデマ情報やしょうもない噂が大好きで、本当かどうかわからない話にやたら飛びつくものだと思う。そういう心理はインターネットによって拡張されただけだと思うので、デマ情報をどうチェックするかだけでなく、なぜ僕らはいい加減な情報が好きなのか、どうすればその発信を注意することができるのかということにもこの活動を通して踏み込んでほしい」

 また、KC3(くまもと・サイバー・産学官)の名前の由来にもある「産学官」の取り組みである点に着目した。

 「最近、大学がオンラインで授業を受け入れるようになった時代の中で、“その地域ごとに大学がある意味”がよく議論される。地域に密着した大学の存在価値が話にあがるが、こういったことを地元の自治体や警察など地域の中で連携していくことに意義があると思う。大学のゼミのメンバーやボランティアメンバーだからこそ信頼できるし判断しやすいということで、新しい仕組みに発展していっていると思う」

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

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