今年もフィッシャー無双は健在だ。プロ将棋界唯一の団体戦「第4回ABEMAトーナメント」予選Dリーグ第1試合、チーム天彦とチーム広瀬の対戦が6月12日に放送され、広瀬章人八段(34)が個人として2戦2勝の活躍で、チームの勝利に大きく貢献した。相手のリーダー佐藤天彦九段(33)、迫力ある早指しの振り飛車党・鈴木大介九段(46)と手強い2人に攻め込まれる局面こそあったが、棋界屈指の終盤力で連勝。今年も主役候補の一人として名乗りを挙げた。
昨年大会は個人で6勝1敗、勝率.857。全36棋士の中でも最高勝率で、個人戦だった第1回・第2回大会でも制している藤井聡太王位・棋聖(18)にも2連勝するなど、持ち時間5分・1手指すごとに5秒加算というフィッシャールールに、高い適性を見せていた。久々の超早指しに、ブランクがどう影響するかもファンの注目ポイントではあったが、今大会初出場となった第2局から、その心配はあっという間に消し飛んだ。
第2局の相手は、名人3期の実力者・佐藤九段。先手番から角換わりになったが、指し慣れた戦型とあってか、間髪入れずに次々と指し進めた。これには思わず聞き手を務めていた武富礼衣女流初段(22)も「すごいスピードですね…」とびっくり。対局を終えた後の感想戦さながらの速度に、ファンからも驚きの声が相次いだ。
やや有利と見られた中盤から、終盤には逆にリードを奪われ、自ら「一時は敗色濃厚」とまで苦しんだが、佐藤九段の攻めを必死に振り切り自玉の安全度を確保。「持将棋になってもおかしくなかった」という熱戦を、153手で制した。
次の出番は第4局。昨年も2戦2勝と勝ち越した鈴木九段との対戦になったが、広瀬八段の居飛車穴熊に対して鈴木九段も四間飛車穴熊と、対抗形の相穴熊に。超早指し戦ながら、がっぷり四つに組み合う持久戦に入った。終盤に入り詰めろ、詰めろと攻めてきたのは鈴木九段。だが、ここでも広瀬八段の生命力が際立った。反撃のチャンスを耐えながら待ち続けると、ここぞという場面で一撃。相手に粘る間も与えない速攻で連勝を決めた。
広瀬八段の2連勝もあり、チームはスコア5-2で快勝。それでも試合後には「内容は悪手もたくさん指している」と盤石ではなかったと振り返るあたりが、さすがはフィッシャー無双の実力者。ファンから「まじで強すぎる」「なんという切れ味」「だいたい詰みを完璧に指しこなす広瀬ブランド」といったコメントが寄せられるのも無理はない。次戦は昨年の優勝メンバーが2人残っているチーム永瀬戦。ここも撃破するようであれば、いよいよ広瀬八段に自然と「フィッシャー名人」の肩書がついてくる。
◆第4回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名漏れした棋士がトーナメントを実施、上位3人が15チーム目を結成した。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選、本戦トーナメント通じて、5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)
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