華奢な体ながら、必死に歯を食いしばり強豪選手たちに向かっていく姿にファンが急増しているプロ雀士・丸山奏子(最高位戦)。プロ麻雀リーグ「Mリーグ」2019シーズンに、赤坂ドリブンズから大抜擢の指名を受けリーグ入りを果たすと、3人の先輩雀士から日々指導を受け、着実に成長を続けている。その愛らしい様子からマスコット的なイメージを持たれることもあるが、本人は「負けたら本当に悔しい」「このままの状態でチームにいるのはつらい」と、強いプロ意識の持ち主だ。「まだ(契約が)どうなるかわかりませんが」と前置きしつつ、2021シーズンの目標には「±0」という数字を出した。この数字、小さいようで実に大きな数字だ。
プロ歴何十年という選手もゴロゴロいるMリーグに、プロ歴まだ2年足らずの状況でポンと放り込まれた丸山。雀力も場数も圧倒的に足りない状況でスタートしたMリーガー1年目は、とにかく大変の一言に尽きる。「試合どころじゃなかった」と振り返るように試合会場で卓につき、事故を起こすことなく帰ってくるだけで精一杯。相手と勝ち負けする、駆け引きをするという段階まで行っていなかったのだろう。レギュラーシーズン最低出場回数である10試合を経験し、丸山の1年目は終わった。
そして2年目の2020シーズン。同じく10試合の出場でトップは1回から2回に増えたが、悔しさが募った。「もうちょっとトップを取れていたり、ポイントをプラスできていたらと。もやもやしていました」。チームはセミファイナルシリーズ、ファイナルシリーズと進出し、丸山もポストシーズン初出場を果たしたが、ここでは結果を出せずに終了。「よっしゃ!ってなったことがあんまりない、悔しい状況です。この2シーズンの間に成長はしていて得られたものはたくさんあるし、自分でできること、考えられる幅は増えた実感があるんですが、それが強さにつながっているかわからない」。成長と経験の手応えはあるが、個人スコアだけ見れば2019シーズンの個人順位は29人中20位(▲139.8)で、2020シーズンは30人中20位(▲103.9)。強さを感じられるほどの結果は伴わなかった。
チームメイトで先輩の村上淳(最高位戦)からすれば「急に高校野球の選手をいきなりプロにスカウトしてきて、今日先発行くぞ!みたいなこと。かなり無茶なことをしているし、本人も厳しいと思います」というように見える。村上自身のプロ歴も24年を数え、丸山が幼児のころから戦っている。それでもなおMリーグの試合は、終わったその日に見返して研究を重ねるからこそ、成績も上位で安定する。それゆえにまだ駆け出し中の駆け出しである丸山がこの大舞台で戦うことのハードルの高さがよくわかる。
赤坂ドリブンズのロッカールームに、丸山と村上、2人の姿があった。勉強会だ。丸山が自作した考察ノートをベースに牌譜を振り返り、村上の意見を聞いて改善点を見つけていく。同じ配牌、ツモには二度と巡り合わないとさえ言われる麻雀だが、その局面に対してどれが最善かを考え続けることが、似たような局面が出てきた時の対応力を向上させる。無駄に終わることの方が圧倒的に多い努力だが、それをやらねば強くならない。険しい山道を丸山は先輩の力を借りて連日登っている。「自分がこうしたいとか、あの人はどうしたいんだろうとか、冷静に考えられることが増えた。そこはこの2年間で変わったなと自分では思っています」と、見えなかったものも見えてきた。
2021シーズンに向けては、インプットしたものを実戦でアウトプットすることで、さらに身につけることに注力している。「勉強会やセットの予定を組んでいます。本当に悔しくて、このままの状態でチームにいるってことは自分的にもつらいので、どうにか結果を残したい」と、チームの方針である「育成」という言葉に甘えるつもりは少しもない。早く戦力になりたい。その上で本人の口から出てきた目標数字が「±0」だった。「小さな目標かもしれないですが」と恐縮気味に話したが、実際この数字は全く小さくない。全30人のMリーガーの中で、対等に戦えることを意味するからだ。
過去2シーズンで100以上のマイナスを叩いていた若手が±0まで数字を伸ばした時、チーム内だけでなく、周囲に与えるインパクトは強大なはず。それだけプロの世界で「成長」という言葉には力がある。丸山のシンデレラストーリー第3章は、どんな内容になるのか。ハッピーエンドを迎えるための準備は、今日もまた続けられている。
(ABEMA/麻雀チャンネルより)
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