「踊ってみた」「歌ってみた」 “n次創作”の著作権は? 若新雄純氏「権利者へのリスペクトはAIに判断できない」
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 投稿動画の人気ジャンルの1つになっている「踊ってみた」。ニコニコ動画、YouTube、最近ではTikTokなど、多くの動画サイトで多くの作品が投稿され、視聴を集めている。

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 こうした「踊ってみた」や、楽曲のカバーをする「歌ってみた」などはオリジナル作品を元に、二次的、三次的と派生することから「n次創作」と呼ばれている。コンテンツを広め、盛り上げる役割も担ってきたが、著作権の問題と長年向き合ってきた一面もある。

 ニュース番組『ABEMAヒルズ』では知的財産権に詳しい出井甫(いでい はじめ)弁護士に「n次創作」の現状を取材した。

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「『踊ってみた』動画にはBGMとして音楽も使われている。そこには著作権が発生しているものをユーザーが利用している。ユーザー心理としては、そうした活動自体が権利者へのリスペクトであったり、ある種ファン活動の一環だったりする。権利者としてはそういった活動によってプローモーションやCM代わりになり、無償のプロモーションとして効果的に発展できるということで、見て見ぬふりもしくは黙認されてきた」(以下、出井弁護士)

 経済産業省の調査では、n次創作により収入を得ているクリエイターのうち、40%は「原著作権者の許諾を得ていない」と回答している。その理由として挙げられたのが「手続きがわからない」「なんとなく必要ないと思う」といったものだった。出井弁護士は「ダンスに関しては昨今の裁判で著作権を認める判決が出ている」と話す。

「誰もがとるようなポーズなど、ごく短いポーズは著作権が発生しないと思うが、ダンスに関しては昨今の裁判例で出ているように、著作権が生じている。法律上、舞踊といったものに(権利が)生じると考えていいと思う」

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 権利者もマーケティング的な観点から見ないふりをしてきた「踊ってみた」や「歌ってみた」のコンテンツ。動画を投稿している人たちの認識も浅く、手続きもはっきりしていない。そこで、注目が集まっているのが、エイベックスの関連会社が始めた個人の創作活動と著作権保護を両立する試みだ。

「『アセットバンク』の取り組みは、まず、ある複合的なコンテンツに対して、最小限の著作物デジタルアセット(※資産としての価値を持つデジタルデータ)として、細分化したものを概念に置いておく。利用したい場合には、その複合のデジタルアセットに対してライセンスを技術で実現する。(例えば)ライツホルダーには、アニメや脚本やデザインイラストなど、さまざまな人が関与しているが、『アセットバンク』は個々の権利者に対しても取引を可能にしている。技術で対価の還元を自動的にしていくシステムを実現していく」

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 『アセットバンク』では1つの動画コンテンツから、アーティストの動きや歌詞、メロディーなどを細分化。ブロックチェーンを使ったデジタル資産、NFTとして販売する。このNFTを買い、創作した動画で得た収益が元の権利者にも還元される仕組みになっている。

「今後ユーザーが(使用可否を)連絡しなくて済むメリットもあるが、権利者サイドにとっても利用されるコンテンツに関して、日々膨大に生じるチェック業務は大変だ。自動的に換金できるのであれば、一つ一つ処理するか、もしくはあらかじめルールを設定して自動的に積み上げ処理することが可能だ」

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 楽曲に合わせて個人が投稿する「踊ってみた」「歌ってみた」動画。新たなヒットを生む一方、著作権侵害にもなりうる“グレー市場”でもある。慶応大学特任准教授などを務めるプロデューサーの若新雄純氏は「YouTubeでは特定のアーティストの曲が投稿動画に使用されていれば、AIが自動的に判断して、著作権表示をつけるようになっている。著作権がn次元で使用され、もともと持っている権利や対価をクリエイターにどのように払うか、業界ではずっと課題だった。『アセットバンク』のような取り組みは、もとの著作者にちゃんと利益が支払われるようにできるので、お金の面ではいいと思う」と述べる。

 その上で、若新氏はネット掲示板『2ちゃんねる』創設者・ひろゆき氏が展開しているYouTubeチャンネルに言及。ひろゆき氏が公開した動画を切り抜き、第三者が編集して作る“切り抜き動画”の例を挙げた。YouTubeは切り抜かれても、著作権を持つ側が収益を管理できる。本人が投稿許可を与える代わり、収益の折半も可能で、違法ではなくWin-Winな関係が構築されている。

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「ひろゆきさんは、例えるならデモテープ音源をみんなに提供して、ファンが曲名やアルバムを勝手に作って完成させるような立ち位置。これはかなり面白いやり方で、僕は最初、ひろゆきさんのYouTubeと同じようにテレビ番組も、第三者が編集したり加工したものが投稿されたら、もとのテレビ局にお金が入ればそれでいいじゃん、と思った。だが、お金の面ではいいが、映像の作り手が『こういう風には勝手に編集しないでほしい』とオリジナル性にこだわりを持っている場合には難しい。ひろゆきさん自身も、自分は編集のされ方をあまり気にしない性格だとおっしゃっていて、これがひとつのテーマになると思う。歌であれば歌詞を替えて歌うことで、アーティストが歌に込めた意図が変わってしまうこともある。お金がうまく分配されればいいというだけでなく、音楽や映画など、権利者が『勝手に解釈を変えてほしくない』と思うコンテンツはもちろんあるだろう」(若新雄純氏)

 過去、ロックバンド「X JAPAN」のYOSHIKI氏に強く憧れ、ニコニコ動画などでYOSHIKI氏のコピードラマー「WASHIKI」として活動して注目された経験もある若新氏。「僕が尊敬している大学の先生のWebサイトに『著作権はフリーです。ただ、リスペクトを持ってください』と書いてあった。つまり、誰かのコンテンツを使用する上では、収益のことだけでなく、敬意が大切だということ。投稿されたn次創作のコンテンツに、権利者への敬意があるかどうかは、AIではなかなか判別できないだろう」と語った。

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

【映像】「踊ってみた」“n次創作”の著作権問題 デジタル資産(NFT)販売への動き
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