“受けたくない”理由ばかり、行列のできる会場ばかりのマスコミ報道…このままでは若者がワクチン接種に消極的に?
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 若者の新型コロナウイルスワクチン接種に関する報道をめぐり、政府の分科会メンバーでもある大阪大学大学院の大竹文雄教授(行動経済学)が26日朝、「この見出しのつけ方が、若者のワクチン接種率に大きな影響を与える可能性について報道機関は真剣に考えるべきだと思います」とツイートした。

・【映像】接種率に悪影響?新聞見出しに専門家"苦言"

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 大竹教授が問題視したのは、東京都が公表した、20代では男性のおよそ6割、女性ではおよそ7割が接種に前向きな回答で、2割弱が否定的な回答だったとのアンケート結果についての報道。朝日新聞デジタルが『ワクチン、若年層の2割弱「接種しない」 都が調査結果』との見出しを付けた記事を配信。さらにYahoo!ニュースが『若年層の2割弱「接種しない」都』との見出しを付けたことだった。

 一方、記事が配信された翌日、東京・渋谷に開設された予約のいらない若者向け接種会場には残暑の中、長蛇の列ができた。翌日には混雑緩和のため抽選券を配布するも倍率は6倍を超え、当選しなかった若者が肩を落とす様子などが連日盛んに報じられている。

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 こうした状況を受け、東京都の小池百合子知事は「若い人の2割弱がワクチンには否定的だというデータもあるが、一方でこれだけ多くの若い方々が会場に集まったということは、8割は逆にワクチン接種の意思があるとも理解がされるわけで、若い方々の接種意欲はきわめて高いということを示していると受け止めている」と話している。

■平石アナ「“分からない”と答えた2割の若者の気持ちも大切だ」

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 SNSで拡散するネットニュースは記事の本文を読まない人も多く、見出しの力はとりわけ大きい。同志社大学ソーシャルマーケティング研究センター長の瓜生原葉子氏も「大竹先生のご指摘の通りだと思う」と話す。

 「接種を受けるかどうか決められていない、もしくは接種したくないという人は不安を抱いていたり、(安全性に)確信を持てないでいたりする人だということが分かっている。人というのは恐怖、脅威の感覚から自己防衛的になりリスクを取らなくなりがちだということが先行研究などでも報告されているので、受けない人のことを強調しない方が良かったのではないか」。

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 ともに20代であるBlackDiamondリーダーのあおちゃんペとテレビ朝日の田原萌々アナウンサーは「10人中2人は打たないという意向を固めているのかと知ったら、“じゃあいいかな”と思ってしまうかもしれない」、「打ちたいと思っている人がなぜ打とうと思ったのかを検証して発信すれば、より多くの人に打ってもらえるんじゃないかな」とそれぞれコメント。

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 ジャーナリストの堀潤氏は「ジャーナリズムの悪い癖だが、権力の監視役であるということで、上手くいっていない点の方を見出しに付けがちだ。だから逆手に取った形で小池さんに“8割は打ちたいと言っている”と言われてしまう。ワクチンを受けようと思っている人のことよりも、受けようと思わない人の方にニュースバリューを見出した意味についてもっと説明するべきだし、確かに8月はこういう状況だが、9月、10月、11月と、どんな計画が立てられているのか、どうなっていくのかについての提案が見出しに取れるように変わっていくといいのではないか」。

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 テレビ朝日の平石アナウンサーは「ワクチンを打つ・打たないの話は“ワクチン・ハラスメントだ”と言われかねないぐらいセンシティブな事柄になっている中で、見出しが与える影響は考えていかないといけない。打ちたいと思っている人たちの気持ちもきちんと伝えていくところも大事かもしれないし、実は小池さんも言った“2割は打ちたくないから8割は打ちたい”も気を付けるべきところで、“分からない”も2割いる。“イエス”か“ノー”かだけではなく、“分からない”と答えた人たちの思いも含めて見出しによって操られてしまう。そこも懸念すべき点だと思う」と指摘した。

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 カンニング竹山は「とある新聞社の人の話を聞いてびっくりしたのは、紙媒体が売れなくなってきたことでネットに記事を出す。しかしそこでは閲覧数を増やしてお金を入ってくるようにするしか生き残っていけない。そういう構図の中では、2割を出した方が多少はセンセーショナルになるということになる。しかしそれでは社会のことを考えていないんじゃないか、と言われてしまう。権力をチェックしなくてはいけないし、小池都知事が“8割”と言ったことに対しても記事を書かなくてはいけないと思う」と話した。

■堀氏「渋谷の行列はこうだ、とやって終わりにするのは寂しい」

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 都では渋谷以外にも接種会場を用意しているが、予約の方法も含め、そうした情報の報道が少ないとの意見もある。

 瓜生原氏は行動変容の観点から「やはり若い人は“乗り遅れないように”と思ってしまう。特に商品ではなく生命に関わるような問題なので、それを助長しないことがとても大事だ。どこに行けば打つことができて、どこが空いているといったこともちゃんと提示していくことが大事ではないか」と指摘。

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 慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「批判するのであれば、何割が受けたくないではなく、受けたいと思っている人のうち、どれくらいがまだ受けられていないかとか、どれくらい予約が取りづらいかといったことも指摘すべきだと思う。もっと言えば数字だけではなくシステムの問題や、この地域はスムーズに予約ができているが、この地域はできていないなど、具体的な解決につながる指摘も必要だ」、カンニング竹山は「ラジオを聞いていると、接種センターの予約状況を説明している局がある。同じようなことを若者向けに対して説明していかないと、あのニュースの画だけでは、“やばい、俺も早く打ちたい”か、“面倒くさそうだな、でもどうせ打てないだろうからやめとくか”となってしまうと思う」と苦言を呈した。

 平石アナウンサーは「テレビは“感情のメディア”だから、本当に行列の映像が大好きで、それこそスーパーから動物園からラーメン店から、放っておくとすぐそっちにワーっと走っていく。本当はそこにデータや解説が付いてこないと、実態はよく分からない。実際は他にも接種会場はあるし、若者が受けられるところもある」。

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 堀氏は「僕が取材した中で非常に印象に残っている話が、自衛隊の大規模接種センターの受付の問題だ。当初、官邸はとにかく電話でやれと言っていた。しかしそのためには大規模なコールセンターではないと捌ききれないと、必死で押し返してインターネット予約にしたそうだ。見えている現象をパパっとそれっぽく取り上げたり、何となくアンケートを取って、その結果を現象に当てはめて紙芝居のように伝えたりするのがマスコミの役割ではないと思う。SNS上にも今回の行列のような映像がバーッとあふれているからこそ、そこに乗らず、舞台裏でどういう意思決定がされて、どこにエラーがあるのかをきっちり調査報道することが求められている。東京都内には各大学や企業による会場もあるわけだし、接種を促していくためにも、そうした情報の発信が大切になる。渋谷の行列はこうだ、とやって終わりにするのは寂しい」と訴えた。

■周囲の大人が不安に応えるべき

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 こうしたメディア環境の中、周囲の大人たちは若者に対してどのように振る舞えばいいのだろうか。

 瓜生原氏は前出の調査結果を引いて「私が学生を対象に行った調査によれば、4月9日~6月4日の間に、“自分が政策を立てる側だったとしたら、どうやって若者の感染を予防し、ワクチン接種を進めるか”を授業の中の課題にしてみた。そこで受け身、他人事だった問題が自分事になり、認識が大きく変わった。さらに6月4日~6月11日の頃になると、職域接種が報じられるようになり、不安が解消されたので受けてみたいと言う学生が増えてきた。自らコミットしてみること、あるいは不安に思っていることに大人が応えてくれたり、信頼できる人がいたりすることが大きな変化を生んだのではないかと思っている」と分析。

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 大学生と接する機会がある若新氏は「確かにメディアは“他の世代と違って若者は打たないと言っている人が多い。それは権力の失策になるんじゃないか”という言い方をするためにネガティブな打ち出し方をしているのかもしれない。ただ、若い世代の判断に影響を与えるのは国に失策があったかどうかよりも、家庭の中、あるいは頼りにしている大人との会話だと思う。親世代が子どもとコロナやワクチンについて話せるよう仕向けていくということも大事だと思う」と指摘。「コロナ禍の1年半で、大人といっても誰を信じればいいのかと、信頼感が相当損なわれてしまったと思う。信頼できるリーダーが出てきて、私の責任の下、ここはこう大丈夫だからこうしてくれという人が出ないと、若者は何を信じていいか分からないとも思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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