将棋の藤井聡太王位・棋聖(19)が9月13日、叡王戦五番勝負の最終第5局で、豊島将之叡王(竜王、31)に111手で勝利、シリーズ3勝2敗の成績でタイトルを奪取し、史上最年少19歳1カ月で三冠を達成した。10代としても初の三冠で、羽生善治九段(50)が保持していた22歳3カ月という記録を28年ぶりに、3歳以上も更新。対局後に行われた記者会見では「自分自身の今後がさらに問われる」と、偉業達成に気を引き締めていた。会見の内容は以下のとおり。
――率直なお気持ちをお願いします。
叡王戦で獲得という結果が出せたんですけど、あまり実感がない気がします。今回のシリーズは自分にとって初めてフルセットになって、将棋の内容的にも勉強になるシリーズだったと思います。
――対局の朝の気持ちはどうでしたか。
フルセット、最終局は初めてだったんですけど、あまり意識しすぎず、普段どおり臨めればと思っていました。
――今回の対局についてはどのような準備を。
叡王戦についてはやはり第4局がこちらの完敗だったので、その反省を踏まえて。第4局は序盤で形勢を損ねてしまったので、そういうことがないように、1手1手しっかり考えて指そうと思っていました。
――番勝負は新人王戦から全て負けなしです。
番勝負は1つ負けても終わりではないので、その分、伸び伸び指せているところはあるのかなと思います。
――現役棋士として三冠は、渡辺明名人と並びました。
タイトル数自体はあまり自分としては気にしてはいないんですけど、去年からタイトル戦に結構出る機会を多く得ることができて、それで得たものも大きかったですし、そういった経験も今回の番勝負でも活かせたと思うので、いいサイクルでできていると思います。
――対局後に言っていた「最終的な」というのは。
どこが最終的というのは現時点で特にないんですけど、どこまで強くなれるかということが、自分にとって一番大事なことかなと思っているので、年少記録よりも常にそのことを意識して取り組んでいきたいと思っています。
――豊島叡王に対して、これだけ対戦成績で盛り返せたことについては、どう分析していますか。
内容的には押されている対局が多いので、あまり盛り返したという意識はないんですけど、ただ今年の朝日杯で初めて勝つことができて、それで王位戦と叡王戦に落ち着いて臨むことができた面はあると思います。まだ結構、力としては及ばない部分もあると思います。
――おやつの「コロコロしばちゃん」の味と、食べる時に(かわいくて)心が傷まなかったかをお願いします。また(記念品の)ペコちゃん(人形)は自宅に飾りますか。
すごくかわいらしい見た目で、あまりじっと見ていると食べるのが惜しくなってしまいそうだったので、なんというかすぐにおいしくいただきました。不二家様からペコちゃんの人形をいただいてサプライズでとても驚いたのですが、この後、おうちに飾れたたらと思います。
――以前から25歳ピークと言っていました。19歳で三冠に達しました。
25歳が絶対的なピークかどうかわからないというか、その段階になったらまだまだ強くなる余地があると思うことになると思うんですけど、現時点ではそういったイメージで取り組んでいけたらと思っています。こうして日々の対局でいろいろ課題が見つかるので、少しずつ改善していって、引き続き強くなることを目指したいと思っています。
――羽生九段は25歳で七冠に達成しました。三冠まで来て、八冠の可能性をどう考えていますか。
全冠の制覇は現時点では全く意識することではないかなと思っていますが、一つの理想の形ではあるので、そのためにはまずは実力を今以上に必要になってくるので、現時点で意識するのではなくて、より実力を高めた上で、そういったところに近づくのは理想だなと思っています。
――将棋を指すことを通じて、新たな盤上の景色を見たいと言っていました。豊島叡王との戦いで新たに得た気付きはありますか。
今回、豊島叡王と王位戦、この叡王戦で対戦する機会が得られて、自分にとって得るものの多いシリーズだったと思っています。特に、序盤や中盤の形の認識といったところで、精度で差をつけられてしまう場面があったので、今回の対戦で強く感じたところではあったので、次につなげていけたらいいと思っています。
――お二人ともシリーズを通じて勉強になったと言っていました。今後、豊島叡王とはどう向き合っていきますか。
自分にないものを多く持たれている方だと思っているので、対戦するところで自分としては勉強して、取り入れていけたらいいのかなと思っています。
――三冠は一時代を築いた名棋士たちが築いてきた偉業。19歳で達した気持ちはどうですか。
過去に三冠になられた方は偉大な方ばかりなので、その点、光栄に思っています。自分自身の今後がさらに問われることだとも思っているので、むしろ今まで以上に取り組んでいく必要があるのかなと思っています。
――名棋士の系譜に連なる一人になるという責任感などは感じますか。
三冠という立場で身の引き締まる思いではあるんですけど、あまり責任感を感じるというわけではなく、将棋は個人競技なので、自分の将棋に向き合っていきたいという気持ちが強いです。
――叡王戦の前身が電王戦でした。ルーツとしてソフトの存在がクローズアップされたタイトル戦でもありました。
電王戦というのは、将棋界を注目していただいた棋戦だと思うので、大きな意義があったのかなと思いますし、今後は人間の方がコンピューターの長所を取り入れて、強くなっていくことを目指すという段階だと思うので、自分がそういう将棋を体現できれば、いいなとは思っています。
――地元ではパブリックビューイングなどで応援をやる予定だった。瀬戸市民にメッセージをお願いします。
瀬戸市のみなさまには応援いただいて、大変な励みになっています。よい報告をできることをうれしく思いますし、今後も楽しんでいただけるような将棋を指していければと思います。
――竜王戦への抱負をお願いします。
竜王戦でも豊島竜王とのシリーズになるので、王位戦、叡王戦の経験や反省を活かしていければと思います。
――おやつが非常に充実していたようですが。
今期から主催の不二家様におやつを提供いただく形になって、毎局楽しみにしていましたし、実際、対局中にお菓子をいただくことでリフレッシュして、対局に臨むことができたのかなと思います。
――(三冠の)実感というのはどのぐらい経ったら沸きますか。
先ほど、花束やお人形いただいて少し実感が沸いてきた部分があるんですが、現状の立場に満足してしまってはよくないと思うので、あまりそういったことはこれからも意識せずに前を向いていけるのがいいのかなと思います。
――ファンへメッセージをお願いします。
今回叡王を獲得することができてとてもうれしく思っています。今回の五番勝負で勉強になったことを多いシリーズだったと思うので、竜王戦はじめ今後の対局に活かしていければと思います。これからも全力を尽くして指していければと思います。
(ABEMA/将棋チャンネルより)