現在公開中の押井守監督最新作『ガルム・ウォーズ』には、「バセット・ハウンド」という日本では珍しい犬種が登場。映画公式Twitterでもドッグショーが開催されるなど、映画ファンのみならず犬好きの注目も集めている。胴長短足で大きな耳が特徴的なバセット・ハウンドについて、ペットの専門店コジマで、その魅力を聞いてきた。

▲ペットの専門店コジマ亀戸本店にいるバセット・ハウンドと、今回お話を伺ったアドバイザースタッフの杉本さん。
――バセット・ハウンドは珍しい犬種のようですね。
杉本:私も成犬を実際に見たのは1度だけです。フランス原産と言われていて、アメリカの方ではわりと飼われているのですが、日本ではブリーダーも少なく珍しいですね。マンションなどに住んでいる人向けに、小型犬を扱うことが多いので。
――胴長で短足だったり、たれた耳などが特徴的ですよね。
杉本:フランス語で「低い」という意味のbasなどが、バセットという名前の由来とされています。もともと猟犬として品種改良されて作られた犬種で、同じく猟犬のブラッド・ハウンドが交配されているんです。先祖の犬種があやふやで、どのようにして現在のバセット・ハウンドになったのかは不明なのですが。
――おとなしそうな犬種なのに、猟犬というのがビックリです。
杉本:バセット・ハウンドたちがゆっくり獲物を追い込んで猟師が狩る、という楽しみ方をするために作られたそうです。その見た目で獲物を油断させるので、激しい運動はあんまり得意ではないですね。
――犬は犬種によって性格が違いますよね。バセット・ハウンドはどんな性格ですか?
杉本:基本的には穏やかで優しいのですが、嗅覚犬といって匂いですべてをたどる犬種なので、一度気に入った匂いをかぎ続けたりする頑固な一面もあります。なので、しつけがちょっと難しくて、初心者には飼うのが難しい犬種と言われていますね。
――飼っている人の話を聞いたのですが、あまり舐めてきたりはしないとか。
杉本:その犬によりけりですね。舐めるのは、愛情表現と言いますか確認行動なので、小さいときのしつけしだいで舐めたり舐めなかったりします。あと、口の部分が垂れて少し隙間が空いてしまっているので、よだれが多いですね。
――そういうところも含めて、犬好きにはたまらない見た目と言いますか。
杉本:皮膚がつまめるくらいぶよぶよしているのですが、もともと猟犬なので、森の中で動くときに木の枝などで体を傷つけないようにそうなっています。ただ、胴長短足の犬種は、腰に負担がかかってしまうのでヘルニアになりやすいですね。
――番犬にもなるのですか?
杉本:気は強くないのですが、響き渡るような大きい声を持った賢い犬種なので、そういう仕事も覚えられるのかなと。熱中症にもなりやすいので、基本的に室内で飼われています。マンションなどの階段の上り下りも体に負担がかかるので、広い一軒家などが適していると思います。
――ありがとうございました!
このあと実際に子犬(3か月)のバセット・ハウンドに触れさせて頂いた。子犬でも皮膚はつまんでのばせるほどあり、確かな生命を感じさせる温かみがあった。その愛らしい仕草とつぶらな瞳に、とりこになってしまうファンが多いことも頷ける。

▲かなり人懐っこく抱き着いて、顔を舐めたりしていた。

▲耳も伸ばしてみると、かなりの大きさに。
映画『ガルム・ウォーズ』では、「グラ」という総称で登場するバセット・ハウンド。大の犬好きとしても知られる押井守監督は、歴代作品『イノセンス』や『スカイ・クロラ』などにも犬をたびたび登場させて、物語で重要な位置づけを担わせている。『ガルム・ウォーズ』は、触れられたものに神からの祝福をさずけるというグラの一挙一動が、物語のカギともいえる。本作のバセット・ハウンドのキャスティングの際、押井守監督が採用を決めた祝福シーンのポーズは必見だ。犬好きの方はぜひ劇場で鑑賞してほしい。
■『ガルム・ウォーズ』ドッグギャラリー

グラの初登場シーン。老人・ウィドは、主人公であるカラに対して、グラの命を助けたことで祝福を受ける資格があると語る。

カラを見上げるグラ。しっかりとした瞳でカラを見つめている。

祝福を受けようと手を差し出すカラだったが……。

敵対する部族の青年・スケルグとの戦いの最中、窮地にたったカラのもとに駆け寄るグラ。

助けられた恩を返すように、カラを祝福するのだった。神聖なグラには手出しできないため、スケリグも身を引くことに。

夜警をするスケリグのもとへと導くかのように、カラを舐め起こしたりもする。

カラが撃ち落とした鳥に向かって吠えながら駆けていくグラ。アグレッシブな一面もあるのだ。
グラの活躍は、物語の最後までお見逃しなく。
取材/文:加藤真大
取材協力:ペットの専門店コジマ 亀戸本店
『ガルム・ウォーズ』絶賛公開中。
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