東京オリンピック終了後、川崎フロンターレからブライトンへと移籍した三笘薫。2021-22シーズンは労働許可証の関係もあり、ベルギー1部に昇格したばかりのロイヤル・ユニオン・サン・ジロワーズへとレンタル移籍した。

 ユニオン・サン・ジロワーズではレギュラーシーズン1位、優勝決定プレーオフこそクラブ・ブルージュに逆転を許したが、2位で終えて来シーズンのチャンピオンズリーグ予選出場権を手にする好成績を残し、三笘自身も左WBという新境地を開拓した。

 FIFAワールドカップカタール2022の出場権を手にした日本代表では、徐々に存在感を示し、出場権を獲得した3月のオーストラリア戦では2得点で勝利をもたらしている。

 6月にはW杯に向けて大事な日本代表の4連戦を控えるが、合流する直前の5月末、三笘に話を聞いた。

インタビュー=林遼平
取材協力=プーマ ジャパン株式会社

■もっと数字を残したかった

三笘薫

[写真]=須田康暉

―――ベルギーのユニオン・サン・ジロワーズに移籍して1シーズンを戦い抜きました。プレーオフを含め7得点4アシストという結果をどう振り返っていますか?

三笘 もっと数字を残したかったですね。それに優勝できるチャンスがあったからこそ(2位で終えたことに)悔しさが残っています。ただ、最後のチャンピオンシップまで戦えたことや、毎試合勝利できるチームで戦えたことは良かったと思います。

―――チームでは左のWBでプレーする機会が多かったと思います。新たなポジションで得られたものを教えてください。

三笘 守備の対応と言いますか、あれだけ自陣のゴール前まで戻ってくるのは、大学を通してもあまりありませんでした。2トップでサイドはWB一人しかいないので、攻撃では前まで絡み、守備では後ろまで帰らないといけず、シンプルな上下動も多かった。そういったプレーは自分にとっていい刺激になったと思いますし、そこの対応力は磨くことができたと思います。

―――三笘選手は攻撃に特徴がある選手だと思いますが、攻撃と守備の両立についてはどんな考えを持っていましたか?

三笘 守備の比重が多い試合もあれば、攻撃で力を出せる試合もあります。なるべく攻撃で力を出してほしいと言われている中、その回数が増えた試合の評価はチーム内でも良く見られますが、守備ができた上で攻撃での違いを見せないといけないところもありました。自分のところから守備が崩壊してチームが敗れると試合に出られなくなってしまうので、“まず守備から”というのは意識していました。日本の時は「守備ができないよね」と思われていたところもありますし、自分もそう思われたくないという思いもあったので、守備も楽しみながらやれていたと思います。

■ジェジエウ以上はあまりいない

三笘薫

[写真]=須田康暉

―――日本のDFは「相手のドリブルを見てくる」が、海外のDFは「ガツガツくる」とよく聞きます。ドリブラー目線で日本のDFと海外のDFの違いをどう感じましたか?

三笘 まさしく今、おっしゃったような感じです。まずボールにアタックできる範囲が違います。チャレンジして入れ替わられてもいいくらいの守備をしてきます。その文化は大きく違うと思いました。個人的には海外のDFはやりにくい方です。トラップを一つミスしたり、少しドリブルが大きくなってしまうとカウンターのリスクがあります。日本の時は相手DFがディレイしてくるのでゴール前まで運べたんですが、そういうシーンが向こうではあまり多くないので、低い位置からでも抜きにかかるシーンは増えたかもしれないです。

―――ちなみに川崎F時代、チームメイトのジェジエウがなかなか抜けないと。むしろ彼のような選手をガンガン抜けるようになったら海外に行けると話していたのを覚えています。ベルギーにはジェジエウのような選手がゴロゴロいる感じでしたか?

三笘 CBと対峙する機会はそこまでなかったですけど、ジェジエウ以上はあまりいないかなと思います。もっとレベルの高い選手がいたかもしれないですけど、そういう選手とは感覚的には対峙していないです。でも、スピードのある選手は多くて、ジェジエウより速い選手もいました。そういう意味では、日本のDFのスピードよりもベルギーリーグのDFは速いなと思いました。

―――ご自身が海外に行くタイミングとしては合っていたと思いますか?それとも遅かったと感じていますか?

三笘 ベストだったと思います。フロンターレで1年半プレーしましたが、もし冬に移籍していたとしても途中からの参加で馴染めたかはわかりません。それにまだあの段階ではフロンターレでやるべきことが残っていました。そう考えればいいキャリアを歩めてきていると思います。適切なタイミングで試合に出られていますし、違うチームに行きながらも成長できています。これからも新たにアップデートしていけたらと思います。

■「この10分で人生が決まるぞ」

三笘薫

[写真]=須田康暉

―――日本代表では3月のオーストラリア戦でゴールを決めてヒーローになりました。あの試合はどう振り返っていますか?

三笘 自分としても「ここでやらないといけない」と思っていました。短い時間でも結果を出せるタイプだと思っていたので、「この10分で人生が決まるぞ」と言い聞かせて試合に入ったのを覚えています。最初のゴールに関しては、相手サイドに押し込んだ時に、オーストラリアDFが後ろに吸収されていたのでマイナスが空いていました。ここに来ればと思って移動していて、決められてよかったです。

―――ゴールの話がありましたが、やはり2点目の場面。守りに入ってもおかしくない場面で、積極的に仕掛けてゴールを奪いにいくプレーに三笘選手らしさを感じました。

三笘 決め切れたのでよかったですけど、良くも悪くも、あそこで失敗してカウンターを受ければ批判されていたと思います。そういう世界で戦っていることも理解していますし、次はうまくいかないかもしれない。そこは難しいところです。ただ、やはり迷いながら行くよりも、あの時のようにハッキリと行った方が後ろもやりやすいと思いますし、そういう姿勢がチームに響くこともあります。あの場面は相手DFが疲れていたことや運があって決められたので「持っていたな」と思います。

―――そういったメンタリティの部分は海外でより変化したところもありますか?

三笘 海外でも日本の時のように途中から出場して結果を求められる試合がありましたけど、そういう時ってファン・サポーターの反応がすごくわかりやすいんです。ドリブルをすれば盛り上がりますし、シュートまで行けば拍手が起きる。そういうところで中途半端なプレーをすることよりも、大胆なプレーや、やり切るプレーが重要だと感じたところはあります。

―――一方、ベトナム戦ではなかなかいいパフォーマンスを出すことができませんでした。

三笘 先に失点したことで試合を難しくしてしまいました。先制点が大事だった中で、ああいう展開にしてしまった入りのところは問題がありました。個人としても前半こそチャンスを作れましたけど、後半は作れませんでしたし、チームとしても距離感が悪かったので、そういう反省があります。

■4連戦を振り返ったときに自分の名前が出てくるように

三笘薫

[写真]=須田康暉

―――6月シリーズではブラジルなど強豪国との対戦が待っています。

三笘 スピード感を味わいたいですね。相手の技術が高いのはわかっています。どのスピード感でやってくるかを知ることで、自分が足りないと認識できれば、もっと成長しないといけないと強く思うと思います。もちろんそこは思っているんですけど、認識することでもっと変わってくると思っていて、そこを体感したいです。

―――日本代表としてはここからW杯へのサバイバルが始まります。

三笘 毎試合、選考だと思ってやるしかありません。チームとして勝ちにはいきますが、メンバーを見てもライバルが多い中、自分のキャラクターを出していかないと残っていけない。試合後、このシリーズを振り返ったときに自分の名前が出てくるような試合にしていければと思います。

―――最後にW杯への思いを聞かせてください。

三笘 現実的に狙えるポジションまできているので、そこはポジティブに捉えています。ただ、ここから一段階、二段階、成長していかないといけないと自覚しているので、時間は限られていますけど、もっと成長していきたいです。もし選ばれたら、日本のために全力で戦いたいと思います。