●小国と強国の差

 FIFAワールドカップカタール2022でサッカー日本代表はラウンド16敗退という結果に終わった。ベスト8という壁を4度阻まれ続けている理由はどこにあるのか。フォーメーションや戦術といったもの以上に、乗り越えなければいけない壁が、強豪国との間には存在しているのではないだろうか。(文:ショーン・キャロル)
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 カタール・ワールドカップのラウンド16で日本代表がクロアチア代表に敗れたことは非常に残念だった。しかし、冷静に考えてみれば、もちろん驚きはあまりない。

 日本代表、セネガル代表、アメリカ合衆国代表といったチームが大会の後半に残っているはずもなく、オーストラリア代表、ポーランド代表、スイス代表、韓国代表といった新興国とともにノックアウトの最初のハードルで敗退したことは、このレベルの大会では自然の摂理に則っているに過ぎない。

 少なくとも、地位を築き上げた国々はそのように見ている。この考え方の違いが、世界の頂点に立とうとする国々が乗り越えなければならない最大の壁なのだろう。

 1986年以来、ワールドカップで準々決勝に進出したヨーロッパと南米以外の国は8チームしかない。さらに、ベスト4に駒を進めたのは、13チームによるトーナメントで行われた1930年大会の米国代表と、2002年の開催国でもある韓国代表だけだった。ヨーロッパと南米の覇権争いも、1986年以来、準決勝に進出したのは計15ヶ国のみ。韓国代表を除けば、かなり限られたチームのみである。

 当然ながら、最高レベルの試合では監督、選手の能力、戦術的アプローチといったものの差は非常に小さく、最終的に行き着くところは「姿勢」である。小国ほど対等ではなく、挑戦者として試合に臨み、相手に一瞬で主導権を渡してしまい、その連鎖が続いてしまう。

 日本代表のようなチームは新たな課題を設定することに夢中になる一方で、上のレベルのチームはタイトルを狙うこと以外を失敗と考えている。イングランド代表でガレス・サウスゲイト監督の右腕を務めるスティーブ・ホランドは、フランス代表との準々決勝を前にしてこう言った。

●ベスト8という目標に意味はあるのか?

「準々決勝に進出できて嬉しいか? もちろんです。しかし、決勝と準決勝を経験した後では、最初の準々決勝とは少し違うように感じる。傲慢になっているわけではない。もっと上を目指したいんだ」

 日本代表のラウンド16のクロアチア代表戦は時間が進むにつれ、そして特にPK戦の間に、この確信の差が見てとれた。クロアチア代表は以前からそこにいて、それを見て、それをやっていた。日本代表にとってこの試合は、何度も繰り返されてきた史上初の準々決勝進出という目標を達成するか、4度同じ壁に阻まれるか。その分かれ目となる試合だった。

 そのため、日本代表の選手たちは緊張の面持ちで瀬戸際に立たされていた。一方でクロアチア代表の選手たちは平静を保ち、まるで結果がわかっているかのような、完全に掌握しているように見えた。そして、ある意味で、それは事実だった。ワールドカップで準々決勝以降に進出できるのは一部のチームだ。クロアチア代表はその中の1つで、日本代表はそうではなかった。

 もちろん、このような状況はサムライブルーに限ったことではなく、他の多くの国でも分かれ道に差し掛かったときにメンタルブロックに陥ることはある。例えば、メキシコ代表は7大会連続でラウンドオブ16で敗退し、今年はグループステージで敗退した。また、スイス代表はドーハでポルトガル代表に敗れ、1994年以来6大会ぶり5度目のラウンドオブ16敗退となった。

 では、このような目標は意味があるのだろうか? おそらく、選手たちの心の中に目標を植え付けるのではなく、一試合一試合を大切にし、大会のステージに関係なく、目の前の相手にどう勝つかということに集中するという、昔からの固定観念に従った方が良いのだろう。20年前とはまったく違うサッカーであり、同じ選手がピッチに立つことはないのだから。

●この難問の解決策は…

 実際、モロッコ代表はスペイン代表戦の最初の笛から最後の笛まで自分たちの力を出し切り、冷静にPKを決めて史上初の準々決勝進出を果たした。GKウナイ・シモンを打ち破るアクラフ・ハキミのパネンカキックは、この先何十年も語り継がれることだろう。

 そういったやり方、信念が必要だ。スペイン代表やベルギー代表、クロアチア代表と同じように、ここが自分たちの舞台だと信じなければならない。

 この難問に簡単な解決策はない。それがあれば、この状況は存在しない。一度そのハードルを乗り越えてしまえば、また簡単にクリアできるようになる。しかし、それを乗り越えるには、フォーメーションやパス回数の多さ、xG(ゴール期待値)というより、むしろ姿勢が重要で、それを教えることは非常に難しい。選手たちが口にする「敗北から学ぶ」という陳腐な意味以上のものとして、経験することで身につく。

 日本代表が次のステップに進むためには、誰が監督か、誰が青いシャツを着ているか、どのようなシステムでプレーするかということだけに焦点を当てるべきではありません。もっと深く考えなければならない。

 選手やコーチが、サッカー的な意味でも、人間としても、どのように育てられ、どのようにチャレンジし、どのようにピッチに立つのかが重要なのです。サッカーを初めて蹴るときから、気迫と意欲と傲慢さが必要なのです。それがない限り、他の国々に差をつけられてしまう。

(文:ショーン・キャロル)

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