指揮官対決もW杯本番の醍醐味

日本代表がワールドカップで対戦するドイツ代表とスペイン代表は、どちらもワールドクラスのタレントを揃える強豪だ。今年のカタール大会でも優勝を狙うだけの力は備えている。

もちろん選手も注目なのだが、それと同時に気になるのが両チームの指揮官だ。ドイツはハンジ・フリック、スペインはルイス・エンリケが指揮しており、両者ともクラブで3冠を獲得した経験を持っている。フリックは2019-20シーズンにバイエルンで、エンリケは2014-15シーズンにバルセロナで達成しており、現代表チームの中ではトップレベルの指揮官と言っていい。

スペインは2010年の南アフリカ大会を制したものの、4年後のブラジル大会ではグループステージ敗退。ドイツはブラジル大会を制し、4年後のロシア大会でグループステージ敗退に終わるなど、両チームはこの10年の間に良い時期と悪い時期の両方を経験している。当然ながら、それぞれのチーム力はワールドカップを制した時の方が上だろう。今はまだ再建途中にあると言っていい。

ドイツは昨夏のEURO2020でイングランド代表に0-2で敗れ、スペインは今月に入ってからのネーションズリーグでもポルトガル、チェコと引き分けに終わるなど両チームとも当時ほどの圧倒感はない。スペインに関しては、5日のチェコ戦は後半アディショナルタイムに同点ゴールを決めて何とか引き分けに持ち込んだものだった。まだチームとして固まっていない部分もあるだろう。

だが、フリックとエンリケに本番まで残り半年間が残されているのは少々怖い。前述したように両者にはクラブでの確かな実績があり、長期政権を築いたヨアヒム・レーヴからチームを引き継いだフリックも試合ごとにドイツ代表を強化出来ていると一定の評価は得ている。

日本は“3冠経験者”の指揮官とどう戦う? フリック、エンリケは現代表トップクラスの指揮官だ
スペイン代表を指揮するエンリケ photo/Getty Images

エンリケも早い段階からバルセロナ所属のガビやペドリ、アンス・ファティといった若手に出番を与えており、バルセロナ流はエンリケもきっちり理解している。彼らバルセロナ組の活かし方も頭に入っているはず。

気になるのはドイツとスペインに絶対的なゴールゲッターが見当たらないところで、決定力には課題もあるだろう。フリックが3冠を達成したバイエルンにはロベルト・レヴァンドフスキ、エンリケが3冠を達成したバルセロナにはMSNという絶対的な存在がいた。その点は現代表チームとの違いと言えそうだが、それでもフリックとエンリケはワールドカップまでに代表チームを仕上げてくるだろう。日本代表は5大リーグとチャンピオンズリーグで確かな実績を残した両指揮官を相手にすることになり、両者が組み上げてくるであろう組織的フットボールを崩すのは容易ではない。

彼らが持つ個の能力に加え、組織力まで完成すればかなり厄介だ。果たして3冠達成経験のある2人の指揮官とどう渡り合っていくのか。指揮官によるバトルもワールドカップでは大きな注目ポイントとなりそうだ。