日本代表がガーナ代表を4−1で撃破した6月10日のキリンカップサッカー準決勝で、話題を呼んでいるのが久保建英だ。
4−3−3のインサイドハーフで先発出場した久保は、29分には山根視来が挙げた先制点の起点に。さらに73分には、得意の左足で待望のA代表初ゴールまで決めて見せた。
ただ、こうした攻撃面以上に個人的に目を見張ったのが、守備面での貢献だ。柴崎岳が「タケは10番タイプ」と評するように技術や視野の広さを武器とするトップ下タイプの久保だが、この日はインサイドハーフに求められる守備のタスクを十分以上にこなしていた。
90分間を通じて足を止めず、周囲と連動しながらハイプレスとカウンタープレスを敢行し、背後からでもしっかり相手を追いかけ回す。JFAが公式記録を出していないため数字は不明だが、久保はこの試合でチーム屈指の走行距離を記録していたはずだ。
とくに前目の位置で、敵MFにかけるプレッシャーが際立っていた。象徴的だったのが、54分のシーンだ。敵陣中央付近で相手のトラップミスを突いてボール奪取に成功し、そのまま持ち上がって三笘薫のフィニッシュに繋げた。足を止めずに、能動的に守備参加していた証拠だ。本人も試合後、次のように手応えを口にしていた。
「良い意味でも悪い意味でも僕はユーティリティーさがあると思っている。普段インサイドハーフで出ている2人(田中碧と守田英正)と同じ土俵で勝負しても意味がないので、彼らよりも少し前目の位置に出て、運動量を増やしていこうと思っていました」
173cm・67kgと小柄で細身な久保は、もちろんフィジカルコンタクトという意味では限界がある。この日もガーナの選手に吹き飛ばされるシーンが何度かあった。ただし、幼少期から戦術的な組織に厳しいスペインで育っているだけあって、プレスの掛け方や相手の追い込み方など守備のノウハウ、攻守でチームのために戦う献身性、そして相手に食らい付く闘争心はしっかり備わっているように見える。
この特徴は体格が似ているルカ・モドリッチ(クロアチア代表)、ペドリ(スペイン代表)、ベルナルド・シウバ(ポルトガル代表)など、世界的な攻撃的インサイドハーフとも共通する部分だ。
もちろん、現時点で久保が彼らと肩を並べたなどと言えるわけがないし、ガーナ代表は1.5軍に近い構成でモチベーション的にも疑問が残るチームだった。スペイン代表やドイツ代表と戦うカタール・ワールドカップは、試合自体のインテンシティーがまるで違うだろう。
とはいえ、久保はこの試合で決して「闘えない天才肌」ではないと証明。日本代表で4−3−3のインサイドハーフを担ううえでは、攻撃で違いを作りながら守備でも献身するモドリッチやペドリ、B・シウバは格好のロールモデルになるはずだ。
計4試合が組まれた日本代表の6月シリーズは、14日のチュニジア代表戦(パナソニックスタジアム吹田)がラストゲーム。カタール・ワールドカップの登録メンバー争いで当落線上の立ち位置にいる久保は、この試合でもチャンスを得て、攻守で機能性を示せるか。期待したい。
取材・文●白鳥大知(ワールドサッカーダイジェスト編集部)
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