■4-2-3-1で好調な選手を起用

■9月23日/キリンチャレンジカップ2022 日本2ー0アメリカ(デュッセルドルフ・アレーナ)

 いまこのタイミングで見たいものを、見ることができた。時計の針が進むのが、とても早く感じられた。

 9月23日にドイツ、デュッセルドルフ・アレーナ行なわれた日本対アメリカ戦で、森保監督は4-2-3-1のシステムを採用した。カタールW杯アジア最終予選から4-3-3を主戦術としてきたが、W杯本大会で対戦するドイツやスペインとの戦いを念頭に置くと、ボールを握ることよりも攻守にバランス良く戦えるシステムを用意しておきたい。本大会を見据えた戦略を最終的に確認する意味でも、4-3-3ではなく4-2-3-1でスタートしたことには意味があった。

 システムと先発メンバーの整合性も取れていた。所属クラブで好調さをアピールしている鎌田大地と久保建英を先発に選び、彼らの特徴を引き出しやすいシステムとして4-2-3-1が採用されている。

 大迫勇也が不在の1トップには、前田大然が起用された。

 高速のフリーランニングで背後へ抜け出す彼には、パスの出し手が必要だ。ウイングが供給するサイドからのクロスに飛び込むのも悪くないが、スルーパスでDFラインの背後を突く動きも引き出したい。右サイドに伊東純也、トップ下に鎌田、左サイドに久保が並ぶこの日の2列目は、前田が強みを発揮できるものだった。

 サッカー日本代表としての活動は、3か月以上ぶりである。

 久しぶりの試合で、久しぶりの4-2-3-1で、久しぶりの組合せだった。チームとして機能するまでに時間を要してもおかしくないが、序盤から意外なほどスムーズにボールが動いていく。そのなかで、昨年11月以来の出場となったアーセナル所属のCB冨安健洋がビルドアップで存在感を示した。

■良い守備からリズムをつかんでいった

 11分、冨安が縦パスを入れ、鎌田がワンタッチで落とすと、ダブルボランチの一角を担う守田英正がボールを引き取る。ここまでのパス交換で4人を、守田のドリブルでさらに2人を置き去り、ボールは左サイドの久保へわたった。久保はカットインから右足のシュートへ持ち込んだ。

 12分にも冨安の縦パスを守田が受け、すぐに久保へ展開する。ハーフスペースに立つ背番号11は左サイドへフリックすると、左SBの中山雄太がワンタッチでクロスを供給した。

 直後の13分には決定機が生まれる。前田が相手ペナルティエリア内でCBにプレスをかけ、久保がパスカットする。すぐに反応した鎌田へパスをつなぎ、決定的なシュートへ結びつけた。

 その後も前線からのプレスで好機を作り出す。17分、敵陣ハーフライン付近で中山と守田でボールホルダーを挟み込み、守田が前田へ縦パスを入れる。前田がワンタッチで鎌田へ落とすと、鎌田もワンタッチでゴール前へさばく。伊東の足元に入りかけたボールはシュートにつながらなかったものの、得点を予感させるものだった。

 冨安、遠藤、守田らが縦パスで攻撃のスイッチを入れ、鎌田、前田、久保、伊東が距離感良く連動しながら相手ゴールへ迫る攻撃は、一人ひとりの特徴が生かされたものだ。アメリカがボールロストを連発したとの見方もできるが、良い守備からリズムをつかんでいくことができていた。

■前田の1トップに見えた「攻め筋」

 25分の先制点も、敵陣でのパスカットをきっかけとする。伊東が右サイドでボールを奪い、ドリブルで運ぶ。内側へ切り返したボールを守田が引き取り、ペナルティエリア内左の鎌田が右足ワンタッチシュートで流し込んだ。

 その後も前線から意欲的にプレッシャーをかけ、相手のミスを誘発した。1トップの前田が守備のスイッチを入れ、奪い取れる場面では遠藤や守田も高い位置へ出ていった。

 今回の2試合の大きなテーマは、大迫以外の1トップで「攻め筋」を見つけられるかにある。前田が出場した場合は彼のスピードを生かし、前線からの守備をシュートカウンターにつなげるとの方向性は、W杯本大会にもつなげられるものだ。

 前線からのハイプレスが、ドイツ相手にどこまで通用するのかは分からない。GKノイアーを使って、うまく回避されてしまうかもしれない。それでも、執拗に追いかけまわされたら、GKやDFはストレスを感じるものだ。そのうちの1回でも引っ掛けることができ、それが得点につながれば、ドイツを慌てさせることだってできる。アメリカ戦の前半の戦いぶりは、収穫にあげていいものだった。