9月23日にデュッセルドルフ・アレーナ(ドイツ)にて行われたキリンチャレンジカップ2022で、サッカー日本代表はアメリカ代表と対戦。前半24分に、守田英正からのパスをペナルティエリア内で受けた鎌田大地が先制ゴールを挙げると、後半43分には途中出場の三笘薫が左サイドでのドリブルから追加点を奪い、勝負あり。日本代表が2-0で勝利している。

11月21日に開幕となるFIFAワールドカップ・カタール(カタールW杯)グループステージでは、ボール保持力が高いドイツ代表やスペイン代表と同居している日本代表。守勢に回る時間帯が長くなることが予想される中、今回のテストマッチでは組織的な守備を披露してみせた。

FIFAランク14位のアメリカ代表に対して通用した守備とは、いかなるものか。ここではこの点を分析するとともに、同試合で垣間見えた日本代表の課題についても言及する。


森保ジャパンが目を向けるべき守備決壊シーンとは【日本VS米代表戦分析】
キリンチャレンジカップ2022、日本代表vsアメリカ代表のスターティングメンバー

序盤から整然としたハイプレスを披露

キックオフ直後は、自陣からパスを繋いできた基本布陣[4-1-2-3]のアメリカ代表に対し、日本代表が[4-4-2]の守備隊形でハイプレスをかける展開に。

前半0分44秒からのアメリカ代表のビルドアップの場面で、前田大然がセンターバックのウォーカー・ジマーマンにアプローチ。その後パスを受けたアーロン・ロングには鎌田がプレスをかけたほか、センターサークル付近でボールを受けようとしたウェストン・マッケニーにもボランチの遠藤航が張り付いたことで、ロングに縦パスを入れさせず。ロングの横パスを奪った右サイドハーフの伊東純也が敵陣ペナルティエリアまで駆け上がり、GK強襲のシュートを放っている。快足FW前田を起点とする連動性溢れるハイプレスが、キックオフ直後から威力を発揮した。

森保ジャパンが目を向けるべき守備決壊シーンとは【日本VS米代表戦分析】
前半0分44秒以降の日本代表のプレッシング

日本代表はその後も、前田と鎌田の2トップが相手最終ラインからアンカーのタイラー・アダムスへのパスコースを塞ぎつつ、GKマット・ターナーや2センターバック(ジマーマンとロング)からのパスを片方のサイドへ誘導。アメリカ代表のサイドバック、セルジーニョ・デストとサム・バインズには久保建英と伊東の両サイドハーフが素早く寄せたほか、中盤に下がってボールを受けようとしたブレンデン・アーロンソンとジョバンニ・レイナの両ウイングFWを、酒井宏樹と中山雄太の両サイドバックが捕捉。マッケニーとルカ・デ・ラ・トレの2インサイドハーフにも、遠藤と守田の2ボランチが張り付いたことで、日本代表は敵陣でボールを回収し続けた。

森保ジャパンが目を向けるべき守備決壊シーンとは【日本VS米代表戦分析】
鎌田大地 写真:Getty Images

前半12分10秒以降のアメリカ代表のビルドアップでも、前田と鎌田が相手のパスを左サイド(アメリカ代表の右サイド)に誘い込んだうえで、前田がジマーマンにチェイシング。同選手が苦し紛れに送った縦パスを久保がインターセプトし、その後鎌田にパスが渡ったことが決定機に繋がったほか、前述の先制ゴールも、マッケニーのバックパスを奪った伊東がボールを相手ゴール前に運んだことから生まれている。特に前半は、敵陣でのボール奪取からの速攻を数多く繰り出せていた。

森保ジャパンが目を向けるべき守備決壊シーンとは【日本VS米代表戦分析】
守田英正 写真:Getty Images

W杯では致命傷になりかねない“守備エラー”も

完璧に思えた前半のなかで、日本代表の守備が乱れる場面もあった。

前半6分45秒以降のアメリカ代表のビルドアップで、ロングからマッケニーへの縦パスが前田と鎌田の2トップ間を通過。サイドから中央にポジションを移していたレイナを遠藤が、デ・ラ・トレを守田が捕捉しようとしていたため、2ボランチ間が開く形に。これによって生まれた中盤のスペースをマッケニーとレイナに使われ、ボールを日本代表の左サイドに展開されると、デストのクロスに反応したヘスス・フェレイラにヘディングシュートを放たれている。シュートこそ枠外に逸れたが、失点に繋がっていてもおかしくなかった。

森保ジャパンが目を向けるべき守備決壊シーンとは【日本VS米代表戦分析】
前半6分45秒以降の日本代表の守備

試合序盤より、遠藤と守田が対面のインサイドハーフをマンマークしていたが、この場面では中央にポジションを移したレイナに遠藤が釣られ、守田もデ・ラ・トレによって一瞬左サイド寄りに誘い出されている。また、前半26分55秒以降のアメリカ代表の攻撃でも同じ現象が見受けられ、センターサークル付近でマッケニーがフリーになっている。このようにマンツーマン守備を逆手に取り、相手の守備ブロックに穴をあける攻撃をアメリカ代表に繰り出されていた。

森保ジャパンが目を向けるべき守備決壊シーンとは【日本VS米代表戦分析】
前田大然 写真:Getty Images

カタールW杯に向けた日本代表の今後の課題は、ハイプレスと撤退守備の使い分けだろう。今回のアメリカ代表戦のようにハイプレスやマンツーマン守備一辺倒では、パスワークの質がより高いドイツ代表やスペイン代表にも前述の弱点を突かれ、失点を重ねてしまいかねない。

アメリカ代表戦では俊足の前田とフィジカルコンタクトに長ける鎌田、攻守両面で出足が鋭い伊東と久保を前線に並べた森保一監督の人選が功を奏し、ハイプレスが機能。守備の第一プランが見えてきただけに、9月27日のエクアドル代表戦では新たな戦い方を磨き上げたいところ。オーソドックスな[4-4-2]の布陣によるゾーンディフェンスも然ることながら、アメリカ代表戦の終盤に見られた[5-4-1]の布陣による撤退守備も、次戦のテスト項目になりそうだ。