11月1日、カタール・ワールドカップに臨む日本代表のメンバー26人が発表された。選ばれた理由や外れた理由に話題がいくと思うが、ここでは本大会でのシミュレーションをもとに、現在考えられる各ポジションの序列を整理する。

『サッカーダイジェストTV』での配信でも指摘させていただいたとおり、おそらくドイツ戦のシステムは4-2-3-1になる。筆者はコスタリカ戦、スペイン戦で違うシステム、選手起用も変わると想定しているので、大会を通しての序列をここで断言することはできない。あくまでドイツ戦のファーストセットを考えて「初戦の序列」を整理し、コスタリカ戦、スペイン戦についても簡単に言及したい。

 ドイツはかなり力が上のチームで、基本的なプレー強度も日本より高い。ただし、ビルドアップがスペインほど正確でも柔軟でもなく、前に出てくるほど強さを発揮してくる。

 そのため日本もミドルサードにコンパクトな4-4-2を作りながら、チャンスと見ればスイッチを入れて前にボールを奪いに行くハードなプレッシングが求められてくる。そこで森保一監督が信頼しているのは、アメリカ戦のメンバーだろう。
 
 ただし、そのアメリカ戦の前半でゴールを守った権田修一の安定感はもとより、シュミット・ダニエルのビルドアップや、最終ラインの背後を狙われた時のカバーの動きは目を引いた。

 確実に守備の安定を求めるにあたり、権田の能力は認めるところだが、相手のハイプレスを逆利用して裏返したり、高いポジションを取ったところからの対応を想定して、シュミットを一番手としたい。

 最終ラインはドイツのアタッカーを考えて、ラインコントロールだけでなく、個人のバトルで防衛できるセットを優先した。本来であれば板倉滉を中央で冨安健洋と組ませるのが最強だと考える。ただ周知の通り板倉は怪我からの回復途上で、その後の試合でパワーダウンしないために活用していくことと、また大会の初戦でもあるので、モチベーティングの能力を買って、吉田麻也を一番手に置いた。

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 左右のサイドバックは相手のドリブルの突破力とスピードのあるセルジュ・ニャブリ、パワーとテクニックのカイ・ハフェルツを想定して、右の酒井宏樹、左の長友佑都は守備のデュエルで信頼できる。今回は5枚交代ということで、ひとつ考えられるのが後半途中から伊藤洋輝を吉田に代えてセンターバックに投入し、冨安を酒井に代えて右サイドバックに回すというプランだ。

 ドイツもやはり後半途中からルーカス・ヌメチャのようなスピードがあり、縦に迫力のあるアタッカーが必ず出てくるので、その強度に耐えうる伊藤の投入に加えて、大会を通して酒井を使っていくために、ドイツ戦で90分やってしまうと回復が間に合わないという想定もある。

 ここまで名前を挙げていない選手はドイツ戦で起用されない可能性が高いと見ている。言い換えれば、コスタリカ戦のファーストセットになりうる選手たちだ。右サイドバックの山根視来、センターバックの谷口彰悟、先にも触れた板倉、左サイドバックの中山雄太はサブというより、大会前からコスタリカ戦で勝点3を取りに行くことを目ざして準備していくのが戦術的にも、チームマネジメント的にも有効と考えられる。

 その理由はコスタリカ戦がドイツ戦、スペイン戦と全く異なる状況になることだ。コスタリカはハイレベルな堅守速攻を強みとする侮れない相手だが、おそらく日本が長くボールを持つことになる。その場合、山根、板倉、谷口、中山のセットがおそらく最強なのだ。板倉を思い切って2戦目に集中させる理由もそこにある。
 
 またドイツ戦に向けた紅白戦を行なう時に、対戦相手側としてサブの選手が組むことになるが、そこでこのセットを組ませておけば、そのままコスタリカ戦に活用できる、一挙両得である。

 基本的にGKは大会を通して代えないほうが安定するが、ディフェンスラインをガラッと代える以上、統率力と安定感を買って権田修一にするプランもあるだろう。

 中盤はドイツ戦で遠藤航、守田英正の2ボランチに鎌田大地のトップ下という組み合わせを使うが、やはり試合の強度が高くなるドイツ戦でパワーを使い切ってしまうのは危険。試合展開にもよるが、後半途中で守田は田中碧、鎌田は南野拓実に交代して、コスタリカ戦でも起用できるようにする。
 
 左の久保建英はあまり後先を考えずに攻守奮闘してもらい、追いかける展開で三笘薫、クロージングするなら守備でも貢献度の高い相馬勇紀などを使って強度を維持していきたい。そうなると遠藤や伊東純也が90分プレーすることになるが、彼らはコスタリカ戦を完全休養に充てて、スペイン戦にフルパワーで行けるように備えてもらう。

 コスタリカ戦の中盤は田中をアンカーにして、左インサイドハーフに守田、右に鎌田という組み合わせ。右サイドは堂安律がスタメン、左は相馬勇紀を先発に起用して、勝負どころで三笘を投入する。

 久保はドイツ戦と違い、途中投入するならインサイドだろう。久保を投入する際、守田に代えて柴崎岳を左に入れるのは有効だ。6月シリーズでも2人のバランスは良かった。

 こうすることで守田をスペイン戦でも使える。中盤のインサイドは遠藤がドイツ戦とスペイン戦でフル稼働、守田と鎌田はできるだけ3試合に出ることで、全ての試合にパワーを出しながら、ターンオーバーになりすぎない流れができるのだ。

 1トップはハイプレスがベースとなるドイツ戦で前田大然、相手を押し込む時間が長くなるコスタリカ戦で上田綺世、堅守からのカウンターが必要になるスペイン戦で浅野拓磨というカメレオン戦法で、それぞれの試合でスタメンではない選手がジョーカーあるいはクローザーとして控える。
 
 相馬が入ったことで、FW陣を無理にサイドで起用する必要が無くなったので、有事が無い限り基本は前線で全力を出せる。

 もちろんオプションとして2トップも考えられるが、その場合は久保や伊東、南野が候補になるので、ベースから派生するオプションとして想定していけばいい。つまりフィールドに関しては大会を通じ、スタメンとサブという序列は無く、少なくともグループステージの3試合は大会前から具体的にシミュレーションして入れ替えていくのが最も有効だ。

 その先に関してはどこがラウンド・オブ16の相手になるか分からないし、怪我人や出場停止、コンディションのバラつきも出てくるので、評価も含めて柔軟に判断していけばいい。

文●河治良幸