フットボール界の人種差別問題に、またも不名誉な出来事が加わってしまった。
現地時間9月27日、フランスのパルク・デ・プランスで行なわれたブラジル代表対チュニジア代表の親善試合で、信じられない事態が起きた。
現地紙『Figaro』によれば、この日のチケットは完売。サポーターの割合はブラジルよりもチュニジアのほうが多く、パリ・サンジェルマンの本拠地であるにもかかわらず、ブラジル代表FWネイマールには試合前からブーイングが盛んに巻き起こっていたという。
しかし、試合は圧倒的にブラジルが優勢だった。11分にラフィーニャが先制点を叩き込むと、18分に失点したものの、直後の19分にはリシャルリソンがネットを揺らす。29分にはネイマールがPKで加点し、40分にラフィーニャがこの日2点目を決めて、前半だけで4-1とリードを奪うと、74分にはペドロがダメ押しの5点目を挙げて、5-1で試合を終えた。
【動画】ゴールを決めたリシャルリソンに、黄色い物体が…! しかし本人はまったく意に介さず
現地メディアによれば、19分にリシャルリソンが得点した際には、観客席からバナナなど複数のものが投げ込まれ、PKの場面ではキッカーのネイマールにレーザーポインタを当てる妨害行為が確認されたようだ。
そのほか、試合中に侮蔑的な意味を込めた指笛が鳴らされるなど、「セレソンのファンタスティックに満ちたプレーにもかかわらず、非常に行儀の悪いサポーターの振る舞いが、素晴らしい夜を台無しにした」(『Figaro』)という。
試合後、ブラジルサッカー連盟はリシャルリソンに対してバナナが投げ込まれた行為について、「我々はこの行為を人種差別と認識している。サッカーにおける新たな人種差別のエピソードが生まれてしまったことを激しく非難する」と声明を発表した。
また、この試合を見守っていたリオ・ファーディナンドの実兄にあたる元プレミアリーガーのアントン・ファーディナンドは、自身のSNSを通じて、FIFA(国際サッカー連盟)やUEFA(欧州サッカー連盟)に対して批判的な声を上げている。
「私は何を見ているのか? この状況のままで人々は私に、(人種差別の問題は)サッカー界で改善されつつあると言おうとしているのか? きちんとした意味のある制裁が行なわれない限り意味がない。FIFAやUEFAは、この最低の行為をいつまで放置し、対処しないつもりなのか?」
ブラジル代表においては、先日、レアル・マドリーに所属するヴィニシウス・ジュニオールがゴール後にダンスを披露する姿に、スペイン代理人協会のトップが「猿みたいに踊るのをやめろ」と発言。さらに、その後に行なわれたマドリード・ダービーでは、アトレティコのサポーターが「お前は猿だ」という人種差別的なチャントを浴びせたことが問題となったばかりだ。
相次ぐ問題行為はいつまで放置されるのか。FIFAやUEFAの毅然とした対応が求められる段階に来ていることは疑いようがない。
構成●サッカーダイジェストWeb編集部