プレミアリーグ5シーズン目を迎えるチームの屋台骨
イングランド・プレミアリーグに昇格して5シーズン目を迎えているウルヴァーハンプトンだが、今季は開幕から苦戦を強いられている。ブルーノ・ラージ体制が2年目に突入し、昨季は導入を断念した4バックに再チャレンジ中だ。守備に関してはそれなりに安定したが、ケガの影響でストライカー不在という不運もあって深刻な得点力不足に陥ってしまった。その結果、接戦をモノにできず、思うように勝ち点を積み上げられていない。
そのようなチーム状況の中でもネヴェスはキャプテンマークを巻き、アンカーの位置で開幕から全試合にスタメン出場するなど、チームの主力としてプレーしている。4節のニューカッスル戦では強烈なミドルシュートを突き刺し、チームの勝ち点1獲得に貢献した。
母国の名門・ポルト下部組織時代から「神童」として期待
ネヴェスは8歳の時にポルトの下部組織に加入し、その才能は当時から「神童」と呼ばれるなど頭一つ抜けている存在だった。2014年8月15日のマリティモ戦で17歳5ヶ月でのトップデビューを飾ると、いきなり得点をあげる大活躍を披露。その翌週にはUEFAチャンピオンズリーグ(CL)の予選に出場し、クリスティアーノ・ロナウドが持っていたCLでの最年少出場記録を塗り替えた。
トップチームに定着したネヴェスが初めてフットボール界の話題をさらったのは、2015年10月20日に行われたCLグループステージ3節マッカビ・テル・アビブ戦である。この試合には元スペイン代表GKイケル・カシージャスやベテランDFイヴァン・マルカノらも出場していたのだが、当時18歳だったネヴェスがキャプテンマークを巻いて先発出場したのだ。これがCLにおいて、史上最年少でゲームキャプテンを務めた記録となっている。
順調にも見えたネヴェスのキャリアだったが、トップデビューからの3シーズンのリーグ戦出場数はいずれも20試合程に留まっており、レギュラーとしての立場を確立することはできていなかった。
そうした状況を打破すべく、2017年夏にネヴェスは大きな決断をする。下部組織から在籍したポルトを退団し、イングランド・チャンピオンシップに所属するウルヴァーハンプトンへ移籍したのだ。当時、同クラブは2部に所属していたが、新オーナーの中国の投資グループの大株主が世界屈指の敏腕代理人で知られるジョルジュ・メンデスが保有する会社だったこともあり、そのコネクションでこの移籍が成立した。
同年夏ウォルヴァーハンプトンはネヴェスの他にもヌーノ・エスピリト・サントを監督に招聘したり、アトレティコ・マドリードからディオゴ・ジョタを獲得するなど、メンデスの顧客を集めて一気にポルトガル色を強めた。その結果、2部では考えられない強力なスカッドが揃い、1年でプレミアリーグへと昇格を果たした。
プレミアリーグへと昇格して以降も主力として定着し続けており、2018/19シーズンはUEFAヨーロッパリーグ(EL)出場圏内の7位でフィニッシュに大きく貢献した。その後は毎シーズンのようにビッグクラブへの移籍が噂されているが、本稿執筆時点ではステップアップをしておらず、コナー・コーディが退団した2022/23シーズンからはゲームキャプテンを務めている(正式なキャプテン就任のリリースはなし)。
抜群のキック強度と正確性
メインポジションはダブルボランチの一角やアンカーで、プレミアリーグでも簡単に当たり負けしないフィジカルや球際の強さを生かして中盤でフィルターとなれる。それに加えて視野の広さや高いパスセンスを持ち合わせており、司令塔としてチームの舵を取ることができるプレーヤーだ。
キックの強さと正確性は群を抜いており、低い位置でのパス交換に参加してビルドアップを助けるほか、ロングパス一本で局面を打開することも可能だ。また長距離のスルーパスでカウンターの起点としても機能し、強烈なミドルシュートでゴールを脅かすことも多い。
守備では激しく動き回るタイプではないが、CBの前の危険なスペースをしっかりと埋めつつ、チャンスがあればタックルでボールを刈り取ることも可能だ。ファウルを犯してでも危険なエリアへの侵入を防ぐプレーもでき、攻守両面において信頼できるMFである。
若くしてキャプテンマークを巻いていることからも分かるように、チームを引っ張るキャプテンシーにも定評がある。
自身初のW杯へ
ネヴェスはポルト在籍時に18歳でポルトガル代表デビューを飾った。しかし、代表に定着することはできず、継続的に招集されるようになったのは2018年夏のロシアワールドカップ以降だ。それでも長らく不動のレギュラーになることはなかったが、直近のUEFAネーションズリーグでは6試合中5試合で先発出場するなど、2022 FIFAワールドカップ カタール(カタールW杯)前に序列を上げることに成功した。アンカーやツーボランチの一角でフィルターとして機能しており、自身初のワールドカップでの活躍が期待されている。
(文・加藤亮汰)