史上最高のゴールハンター

C・ロナウドはチャンピオンズリーグ歴代最多得点、男子サッカー史上歴代最多得点、代表ゴール数歴代最多、世界最高の選手に贈られるバロンドールを5回受賞と栄光を築いた。競技面での栄光だけでなく、人気も絶大で世界一のインスタグラムのフォロワー数を誇るなど、その影響力は計り知れない。

そんなC・ロナウドは今、かつてないほどの苦境に立たされている。シーズン開幕前にはCL出場を求めてマンチェスター・ユナイテッド退団を画策するも、失敗。結果としてチームの合流に遅れたため、コンディション不良による影響なのかパフォーマンスも上がらず、得点も遠い。今季ここまでベンチスタートが大半を占めている状況だ。

加えて今季新たにマンチェスター・ユナイテッドの監督に就任したエリック・テン・ハーグは選手に規律を求めるタイプで、世界で最も偉大な選手であろうと決して特別扱いはしない。そのため、戦術的に必要でなければC・ロナウドもベンチ送りにする。現指揮官はC・ロナウドに信頼を寄せているが、本人は現状の起用方法に満足はしていないはずだ。

これまでのC・ロナウドがチームの中心である状況とは違い、今はC・ロナウドもチーム全体の一部として適応していく必要がある。37歳にしてチームのためにプレースタイルを変えるのは決して簡単なことではない。しかし、今までどんな困難も跳ね返してきた不屈の男なら、今季も結果を残してくれるのではないかとファンは期待しているだろう。

ユナイテッド、レアル・マドリード、ユヴェントスで得点王

CR7の伝説はポルトガルの名門スポルティング・リスボンから始まった。スポルティングで快速ウインガーとして台頭したロナウドは、加入2年目のプレシーズンマッチでマンチェスター・ユナイテッド戦で圧巻のパフォーマンスを見せる。そのパフォーマンスを見た当時のマンチェスター・ユナイテッドの監督のアレックス・ファーガソンは試合後、すぐにクラブにC・ロナウドを獲得するように要請。18歳にして、イングランドの名門マンチェスター・ユナイテッドにステップアップする。

2003/2004シーズン、加入1年目から主力の一人として活躍し、ファーガソンとの父と子のような信頼関係を築きながらC・ロナウドは世界最高の選手への階段を順調に登っていく。ウイングでありながらも得点力も身につけていったC・ロナウドは2007/2008シーズンに31ゴールを挙げプレミアリーグ得点王に輝く。このシーズンは自身初のCL制覇とともに、CL得点王に輝いた。そしてその活躍を認められバロンドール賞を初めて受賞する。

2009年の夏、CL制覇、プレミアリーグ3連覇などマンチェスター・ユナイテッドで充実の時を過ごしたC・ロナウドはスペインの名門レアル・マドリードに当時の移籍金史上最高額で加入。加入して即、チーム中心となり世界最高のストライカーへと変貌していく。

2010年夏から2013年夏までのジョゼ・モウリーニョ政権ではラ・リーガ得点王とCL得点王を一度ずつ獲得。2011/2012には今もなおキャリアハイであるリーグ戦38試合46ゴールと驚異的なスコアを記録した。

2013年夏から始まったカルロ・アンチェロッティ政権では自身も3度目のCL得点王に輝く大活躍をみせ、白い巨人に12季ぶりのCLタイトルをもたらした。この時のガレス・ベイル、カリム・ベンゼマ、C・ロナウドの頭文字をとったBBCの攻撃陣の破壊力は凄まじく、今もなお世界最強のトリデンテの一つとして語り継がれている。結果的にロナウドはアンチェロッティ政権の間、2度のラ・リーガ得点王、2度のCL得点王に輝いた。

その後、2015年夏からおよそ半年間ラファ・ベニテス監督が監督を務めるもののチーム作りは大失敗。16年の冬には、フランス、レアルマドリードのレジェンドであるジネディーヌ・ジダンが監督に就任した。するとフランス人監督と共に30代にさしかかってもC・ロナウドの勢いは止まらない。前人未到のCL3連覇と3度のCL得点王、2度のバロンドール賞受賞と驚異的な記録を残した。

最終的に、C・ロナウドはクラブ通算438試合451ゴール、4度のCL制覇を含む16のメジャータイトル獲得という伝説的な記録を残してレアル・マドリードでのサイクルを終える。新天地として選ばれたの当時セリエA7連覇を達成していた強豪ユベントスだ。

C・ロナウドはユベントスでも絶対的な存在であることに変わりはなかった。マドリー時代に比べて得点ペースはやや鈍化するも、2018/2019シーズンCLラウンド16セカンドレグ、スペインの強豪アトレティコ・マドリードとの対戦ではハットトリックの大活躍でチームの逆転進出に貢献。加入一年目からCL男ぶりを発揮したが、準々決勝では伏兵アヤックス相手にまさかの敗北を喫し、ユベントスの悲願は達成できなかった。

続く2019/2020シーズンは公式戦44試合37ゴール7アシストでクラブ年間最多得点記録更新し、リーグ9連覇に貢献するも、CLではフランスの強豪リヨンに敗北し、ベスト16止まり。その後2020/2021シーズンリーグ10連覇できずに4位フィニッシュ。CLも2年連続ベスト16止まりと結果を残せず。個人ではセリエA得点王を獲得するも、チームを退団することとなる。

それでもロナウドの物語は終わらない。恩師ファーガソンの説得もあってロナウドはマンチェスター・ユナイテッドに帰還。昨季はチームが不調の中、18ゴールを挙げた。しかし、現在は年齢もあってかパフォーマンスが低下気味で、チームの絶対的な存在とは言えない状況となっている。

ウイングからセンターフォワードへ。得点力がより開花

C・ロナウドは生粋のストライカーだ。主戦場とするポジションもウイングからセンターフォワードへと移り変わっており、よりストライカーとしての側面が強くなっている。

シュート技術ももちろん高い。右足、左足の両方からロケット砲を放つ事ができる上、ワンタッチで合わせるシュートの精度も非常に高い。キックだけでなく、ヘディング能力も高い。歴代最高のヘッダーの議論には間違いなく入ってくるだろう。ジャンプの最高到達地点は256cmとされており、DFはこのポルトガル人を飛ばせてしまうと勝負すらできないかもしれない。シュート技術の高さはもちろんだが、ゴールを量産できる理由には、シュートを何度も外してもチャレンジを恐れない精神力が根底にあることも忘れてはいけない。

フィジカル的な優位性だけでなく、駆け引きも非常に巧みだ。何度も動き直し、相手の死角に潜り込む。年々アジリティは落ちているが、駆け引きの上手さで驚異的な得点力をキープしている。

そして最も説明が難しく、ロナウドをロナウドたらしめる能力がある。それが逆境での勝負強さだ。C・ロナウドは今まで何度となくCLの大舞台で大逆転劇の主役となってきた。15-16のヴォルフスブルク戦、17-18のPSG戦、18-19のアトレティコ・マドリード戦とC・ロナウドの神通力でチームを勝利に導いてきた。チームが劣勢の時のC・ロナウドは味方にとって頼もしい事この上ない存在だろう。

まだ手にしていない唯一のタイトル獲得へ

C・ロナウドは現在、クラブだけでなく代表でも批判を浴びている。ここ数試合のパフォーマンスの低さにはポルトガル国民も不満を隠せず、母国の英雄、スーパースターであれど容赦なく批判している。ただそれでも、キャプテンでありエースストライカーであるという立場はゆるがないだろう。

もしかしたらW杯の大舞台でC・ロナウドが見られるのはこれが最後になるかもしれない。しかし幸い、現在のポルトガル代表の層の厚さは世界屈指でどのポジションにもワールドクラスが揃っている。あらゆるタイトルを獲得してきたこの男がまだ獲得していないのはW杯のみ。

C・ロナウドが本大会に向けてどう調整してくるのか、そして本番でどう活躍してくれるのか期待を膨らませて、彼の一挙手一投足に注目していきたい。

(文・熊谷和浩)

写真:ロイター/アフロ

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