FIFAワールドカップカタール2022の開幕が近づく中、開催国カタールで性的マイノリティへの暴行事件が起きたようだ。24日、イギリスメディア『スカイスポーツ』が報じている。

 同メディアは、アメリカ・ニューヨークに本部を置く国際的人権NGO『ヒューマン・ライツ・ウォッチ』(以下HRW)の報告書を引用して報道。同性愛が犯罪とされているカタールにおいて、LGBTQ+コミュニティのメンバーが、カタール予防安全保障局に所属する警察官に逮捕され、9月まで虐待を受けたと伝えられている。

 またHRWは、2019年から2022年の間に、警察による拘留中に6件の重大かつ繰り返しの殴打と5件のセクシャルハラスメントが行われていた事実を文書化したとのこと。6人のLGBTQ+の人々に聞き取り調査を実施したところ、全員がドーハの地下刑務所に拘禁され、平手打ちや蹴り、出血するまで殴打されるなどの身体的虐待を受けたと話していたようだ。なお、言葉による虐待に受けたことや、自白の強要に加え、弁護士、家族や支援者、医療行為を受けることを拒否されていたとも語っている。中には、独房での2か月監禁状態に置かれた人もいたとされている。

 その中で、拘束されていたトランスジェンダーの女性は、「釈放の条件として、(カタール)政府が後援する施設での転換療法セッションに出席することが義務付けられている」と語っていることも併せて伝えた。

 HRWのLGBTQ+権利調査員を務めるラシャ・ユネス氏は、「カタールがW杯の開催準備をしている間、治安部隊はLGBTの人々を、ありのままの姿を理由に拘束し、虐待しており、治安部隊の人権侵害は報告も野放しになると確信しているようだ。カタール当局は、LGBTの人々への暴力に対する不処罰を終わらせる必要がある。世界は注目している」と声明を発表。「カタール政府はこの人権侵害の即時停止を呼びかけるべきであり、FIFA(国際サッカー連盟)はカタール政府にLGBTの人々を差別や暴力から守る長期的な改革を確実にするよう働きかけるべきだ」とも付け加えた。

 なお、カタール政府は「断定的かつ明白に虚偽の情報が含まれている」とし、この報道について否定している。

 また、LGBT+のイングランド代表サポーターで構成される団体、「3LIONSPRIDE」(スリーライオンズプライド)は『スカイスポーツ』のインタビューに応え、「これには失望させられ、ぞっとするが、残念ながら全く驚くべきことではない。『すべての人のためのワールドカップ』であるというPRラインが、私たちのLGBT+家族、特にカタールの家族にとって真実ではないことを一貫して強調する。我々は被害者の声をもっと拡散し、『No Pride Without All』キャンペーンを我々と共に支援するよう、人々に強く促す」と声明を発表した。なお、団体の公式Twitterでもほぼ同じ内容の文章がツイートされている。

 そして、イギリス労働党のサー・キア・スターマー党首もW杯決勝に出席しないことを宣言。「行きたいが、人権記録は私が行かないよう(説得するよう)なものであり、それが労働党のスタンスになると思う」と話した。

 開催目前でも多くの問題が噴出するカタール。サッカーだけではない、様々な問題について考えさせられる大会になりそうだ。