11月20日に開幕するFIFAワールドカップカタール2022。アルゼンチン、メキシコ、ポーランド、サウジアラビアが同居するグループCを展望する。

本命◎:アルゼンチン
対抗◯:メキシコ
3番手▲:ポーランド
蓮下△:サウジアラビア

バランスの取れたアルゼンチンが本命

アルゼンチンは前回王者フランス、FIFAランキング1位のブラジルに次ぐ優勝候補だ。ただし、グループステージに限れば7大会連続でベスト16のメキシコも有力で、過去の直接対決から見ても、アルゼンチンにとっても侮れない相手だ。ポーランドは躍進が期待された前回大会で、日本と同じH組で敗退。当時よりチーム力が上昇しているとは言い難い。

本命のアルゼンチンはスカローニ監督が2108年に暫定監督から正式に就任した当初、経験の少なさから不安の声が多かった。しかし、リオネル・メッシ(パリ・サンジェルマン)を中心に、攻守のタレントをバランスよく配置して、攻守のバランスも整えるなど高い指導力を発揮。2021年のコパ・アメリカ優勝に導いた。ここまで順調に歩みを進めているが、それが逆に怖さとなるかもしれない。とはいえ、チームとしてのまとまりは信頼できる。

アルゼンチンの初戦の相手はサウジアラビアだ。前回大会でモロッコ代表を率いたエルベ・ルナール監督は、アジア予選では日本を上回るボールポゼッションで攻撃的なスタイルを押し出した。しかし、やはり世界での戦いに向けてシステムも4-1-4-1でブロックを作る形を構築しており、ボールを持つ時と堅守からカウンターを狙う時間帯を使い分けることになりそうだ。

それでもでアルゼンチンが圧倒してもおかしくない力関係にあるが、国内組だけで構成されるサウジアラビアは早い段階からチームを集合させて、国際Aマッチデーの無い10月にも北マケドニア、アルバニアと強化試合を重ねている。ほとんど欧州のトップリーグに所属するアルゼンチンよりも良い状態で大会に入ることは間違いなく、中等開催であることも紛れを起こしやすい要素ではある。

メッシの相棒であるアンヘル・ディ・マリア(ユベントス)やパウロ・ディバラ(ローマ)のケガからの回復が心配されるが、ストライカーのラウタロ・マルティネス(インテル)、遅咲きのアレハンドロ・ゴメス(セビージャ)、22歳のフリアン・アルバレス(マンチェスター・シティ)など攻撃のタレントに不足はない。南米予選後の親善試合で無失点を続けるディフェンスも気鋭のクリスティアン・ロメロ(トッテナム)、ディフェンスリーダーのニコラス・オタメンディ(ベンフィカ)など充実しており、油断隙がなければサウジアラビアをシャットアウトできるはず。

ただ、サウジアラビアはFWフィラース・アル・ブライカン(ファティフFC)という絶対的なエースストライカーがおり、いかに彼に良いラストパスを供給するかと言うベクトルがはっきりしている。またW杯の舞台で「中東の笛」はないかもしれないが、サルマーン・アル・ファラジュ(アル・ヒラル)など、バイタルエリアでファウルをもらうのがうまい選手が揃っているので、そこはアルゼンチンのディフェンスも要注意だろう。

ゴールマシーン・レヴァンドフスキの活躍やいかに?

メキシコは初戦でポーランドと戦うが、当然ながら注意しないといけないのは大エースのロベルト・レバンドフスキ(バルセロナ)だ。一般的にはピークを過ぎたと見られがちな34歳だが、新天地のスペインリーグで得点ランキングのトップを走っており、不発に終わった4年半前よりも良い状態でリベンジを目指せる見通しだ。メキシコは2010年W杯でパラグアイをベスト8に導いたマルティノ監督が率いており、伝統的なパスワークを駆使した攻撃に加えて、守備のバランスワークも植え付けている。

攻撃はスピードスターのイルビング・ロサーノ(ナポリ)などに期待がかかるが、自慢のセクションはエクトル・エレーラ(ヒューストン・ダイナモ)、アドソン・アルバレス(アヤックス)、エリック・グティエレス(PSV)などを擁する中盤で、守備強度の高さは大会屈指だ。ポーランドは中盤で喧嘩をすると不利だが、攻守のトランジションをうまく使いながら、得意のサイドアタックでニコラ・ザレフスキ(ローマ)などが鋭く縦を抉り、レバンドフスキやアルカディウシュ・ミリク(ユベントス)の決定力を生かしたい。

2試合目にはアルゼンチンとメキシコが対戦する。マルティノ監督にとっては母国との試合になるが、過去に激闘を繰り広げてきた両国だけに、どういった結末を迎えるか現段階から予想するのは難しい。やはり初戦でアルゼンチンはサウジアラビア、メキシコはポーランドとどういった結果になっているかで意味合いが違ってくる。一方でポーランドはサウジアラビアから勝ち点3を得られないと、3試合目の相手がアルゼンチンになるだけに、非常に難しくなることは明白だ。

ポーランドの問題は34歳のレバンドフスキをどこまで使っていくか。絶対的な存在であるだけに難しいが、ミリクはもちろん、9月ネーションズリーグのウェールズ戦で決勝ゴールをあげたカロル・シフィデルスキ(シャーロットFC)など、フレッシュな戦力の台頭が待たれるところだ。メキシコは3試合目にサウジアラビアと戦う。もちろん油断は禁物だが、やはり16強の壁を打ち破り、3度目のベスト8に勝ち上がることを考えても、できるだけ良い状態で勝ち上がりたいだろう。

文・河治良幸

写真:AP/アフロ