※ドイツ・ブンデスリーガ1部のRBライプツィヒは3日、ドイツ代表ヴェルナーが左足首の靭帯を損傷のため、今月開幕のW杯カタール大会(2022 World Cup)を欠場すると発表した。

チェルシーから古巣・ライプツィヒへ復帰

ヴェルナーの所属するRBライプツィヒは、創設からわずか8年でドイツ1部のブンデスリーガに昇格を果たした新興チームながら、親会社であるレッドブル社の潤沢な資金力と系列クラブとの密接な関係性を活かして瞬く間に国内屈指の強豪に成長した。だが、今季は開幕から不振に陥って前監督のドメニコ・テデスコを解任。後任にはレッドブルグループで実績を残したマルコ・ローゼを招へいし、同グループの代名詞とも言えるハイプレスを今一度突き詰めようとしている。

今夏チェルシーから古巣のライプツィヒに復帰を果たしたヴェルナーには、前回在籍時のような圧倒的なパフォーマンスが期待されていた。だが、実際はチームの不振に引っ張られるかのように開幕から低調なパフォーマンスを披露。一定の出場機会こそ得ているが、絶対的な存在にはなれていない。ただ、マルコ・ローゼが得意とするハイプレスを基盤としたサッカーとの相性は非常に良いため、これから復調することは十分に考えられるだろう。

2つの転機。ライプツィヒ加入とナーゲルスマンの就任

ドイツのシュトゥットガルトに生を享けたヴェルナーは、地元の名門VfBシュトゥットガルトの下部組織に加入すると、スピードを武器にFWとして圧倒的な成績を残した。また世代別代表にも継続的に選出され、いつしかドイツ屈指のタレントと呼ばれる選手に。シュトゥットガルトの下部組織で指導していた河岸貴氏によれば、10代の頃のヴェルナーは「おとなしくて素直」な性格で、「良い学校に通っていた」という。

2013-2014シーズンにはUEFAヨーロッパリーグ予選でトップチームデビューを飾るとクラブの最年少出場記録を更新し、ブンデスリーガでも30試合に出場した。トップデビューからの2シーズンはウイングでの起用が多かったヴェルナーだが、2015-2016シーズンからはセンターフォワードを主戦場に。同シーズンは33試合で6得点4アシストと個人としては悪くない結果を残したが、チームは不振に陥り2部降格が決定してしまう。

1部でのプレーを望んだヴェルナーは、2016年夏にシュトゥットガルトを退団する。新天地に選んだのは、2部で2位という好成績を残しクラブ史上初のブンデスリーガ昇格を掴み取ったライプツィヒだ。この移籍がヴェルナーにとっての大きなターニングポイントとなった。冒頭でも触れた通り、ライプツィヒはレッドブル社が出資する新興クラブである。同社が世界中で保有する系列クラブは基本的にハイプレス・ショートカウンターという戦術を一貫して採用しており、当然ライプツィヒも同じだ。そのため同チームは、フィジカル能力に優れた24歳以下の選手にフォーカスして補強するというポリシーを掲げている。ブンデスリーガでもトップクラスのスピードを持つヴェルナーは、ライプツィヒの補強方針にぴたりと当てはまっていたのだ。

ヴェルナーは加入からすぐさまチーム戦術にフィットした。持ち前のスピードを活かして守備時はハイプレスに参加すると、ショートカウンターの際には一目散に前線に走りこんで得点を量産。1年目から21得点を記録する大爆発を見せてリーグ屈指のストライカーに変貌した。翌年以降も安定して二桁得点を記録したヴェルナーだが、ライプツィヒでの4年目となる2019-2020シーズンに第二の転機が訪れる。現在バイエルン・ミュンヘンの監督を務める名将ユリアン・ナーゲルスマンが指揮官に就任したのだ。ナーゲルスマンはカウンターとポゼッションを使い分ける監督であり、ヴェルナーにもポゼッションの中でのプレー内容の向上を求めた。ナーゲルスマンの熱心な指導もあり、ヴェルナーはフリーランでスペースを作り出す動きやボールを持った際の仕掛けのクオリティが大幅に向上。様々な形で得点を取れるようになったことで、同シーズンにはキャリアハイとなる28得点をたたき出す大車輪の活躍を見せた。

そしてその翌シーズンにはプレミアリーグに所属する強豪チェルシーへの移籍が決定し、自身初となる海外での挑戦を開始する。途中フランク・ランパードが監督を解任され、トーマス・トゥヘルが就任するという出来事もあったが、1年目からリーグ戦35試合6得点8アシストという成績を残した。CLでも4得点を記録し、チームの欧州制覇に貢献している。一方でオフサイドに引っかかる回数の多さや決定力の低さが指摘されることもあり、課題も多く見られた。2年目にはさらなる飛躍が期待されるも21試合4得点1アシストに留まり、イングランドでは本来の実力を発揮しきれなかった。

自慢のスピードを武器にゴールを量産

センターフォワードを主戦場としているが、元々はウイングということもあり、試合中にサイドに流れることも多い。自慢のスピードを活かして相手ディフェンダーの裏を取るプレーや、ドリブル突破からの得点を得意とする。

ヴェルナーの最大の武器はオフザボールの動きである。また守備から攻撃への切り替えがとにかく速く、カウンター時に相手の陣形が整う前に素早くゴール前に走り込んで得点を奪うプレーは代名詞とも言える。

一方で課題に挙げられるのは、決定機でのミスの多さやポストプレーだ。また以前よりは改善されたものの、ボールを持った際のプレークオリティーはそこまで高くない。

再びドイツ代表のレギュラーに

2017年3月にドイツ代表デビューを飾った。同年のFIFAコンフェデレーションズカップで得点王に輝きチームの優勝に貢献したことで、FIFA ワールドカップロシア2018(ロシアW杯)ではセンターフォワードのレギュラーに抜擢されるも無得点に終わる。その後、スタメンを外れたUEFA EURO 2020でも得点を奪うことができなかった。しかし、FIFA ワールドカップカタール2022(カタールW杯)予選ではチーム最多タイとなる5得点を挙げてドイツの本大会出場に貢献した。

(文・加藤亮汰)