自身初出場の檜舞台に向けて、谷口彰悟がほとばしる思いを口にした。
日本代表は現地時間11月11日、カタールW杯に向けたドーハ準備合宿で初トレーング。先乗りした国内組7人だけが参加する中、谷口はフェイスガード姿でピッチに現われた。
川崎フロンターレ所属の谷口は、11月5日のJ1リーグ最終節で鼻骨を骨折。その影響で日本出国時とカタール入国時は小さいギプスを装着していたが、より危険度の高いトレーニングでは黒いフェイスガードを装着することになった。
フェイスガードは特注で手配。できる限りプレーに支障がないような配慮がなされているという。
「フェイスガードは鼻を動かすので視野が狭くなったり、ほお骨で支えるので真下が見えなかったりするんですけど、極限まで皮を薄くしたり、位置を下げることで少しでも足下が見えやすいようにやっていただいた。すごくギリギリまで、極限まで要求に応えていただきました。だから、そこまで見えにくいってことはないです」
しかし、この日のトレーニングでは途中からフェイスガードを外していた。その理由をこう明かす。
「フェイスガードはキャリアで初めて着けました。その着けるストレス、装着時の違和感、鬱陶しさはもちろんある。汗も出るので滑ってきて落ちてきたり、滑らないようにぎゅっと締めると頭に血が通わない感じがあったりして、なかなか難しい。色々と試しながらですね」
日本代表W杯戦士で黒いフェイスガード装着で有名なのが、20年前の日韓大会における宮本恒靖だ。大会直前に同じく鼻骨を折ってフェイスガードを着用し、映画の主人公と似ていることから国内外で「バットマン」と呼ばれて大きな話題となった。同じCBでイケメン選手である谷口も「2002年は小学5年生で試合を見ていたし、バットマンとして話題になったのも覚えています」という。
ただ、バットマン姿でプレーすることの難しさは今、痛いほど身に染みている。「シンプルにあれを着けてやっていたのは凄いなと思います(苦笑)。やっぱり邪魔だし、僕はできれば取りたいと思ってます」とコメント。W杯の試合では、フェイスガードなしでのプレーを考えているという。
「試合に関しては、僕の今の気持ちとしては、できるだけ外したいと思っています。今日やったくらいのヘディングなんかは問題ない。空中戦が多くなるポジションなので、相手の腕とか頭が入ってくると痛いかなと思いますけど、でもやっぱりW杯なんで。それでもう1回折れようが、どうなろうが、別にどうってことないです。折れたらまた治療をすればいい。自分がスッキリしてやりたい気持ちが強いです。問題ないと思います」
31歳にしてようやく掴んだ檜舞台。怪我の恐怖心よりも、W杯のピッチに立ちたい、チームに貢献したいという気持ちが圧倒的に優っている。
「まず自分にできるのは常に目の前の練習と試合に向けて、最善を尽くすこと。いつチャンスが回ってきても良いように準備をして、やるべきことをやる。いざ出番がきた時にドタバタしているようじゃ準備不足なんで。それは今までもずっとそうだし、この大会でもやっていきたい。スタメンで出られるようにアピールもしたい。最後の最後まで競争することがチームを強くしていくと思うので、みんなでそうやって競っていきたい」
鼻骨骨折すらも気にしない谷口の熱い気持ちは、チームの推進力に必ずやなるはずだ。
取材・文●白鳥大知(サッカーダイジェスト特派)
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