日本代表がW杯で拠点にした宿泊ホテル「ラディソン・ブル・ホテル・ドーハ」を訪問
カタール・ワールドカップ(W杯)でドイツ代表とスペイン代表を破り、ベスト16に進出した日本代表。彼らがドーハの地に残したモノはないかを探しに、拠点としていた「ラディソン・ブル・ホテル・ドーハ」を訪ねた。
このホテルに日本代表が残した折り鶴があることを聞き、実際に見せてもらった。チェックアウトとチェックインの合間の時間ということもあり、受付には待機している人も見当たらず、あるスタッフにホテルを訪ねた趣旨を伝えた。
担当者を呼んでもらい待機している間、スタッフからさまざまな話を聞く。すると、どうやら女性従業員たちは、DF谷口彰悟のイケメンぶりに、骨抜きにされていたことが分かった。「ほかにも従業員の間で人気だった選手はいるか?」と聞くと、「ゴールキーパー!」との声。今大会で活躍したGK権田修一かと思いきや「シュミット! 彼もハンサムだったわ」と、漫画にしたら目がハートマークになっているだろう甘い声を出した。
そんな話をしている間に、担当者がやってきた。エレベーターに乗ると「私たちは、これまでに多くの代表チームを迎えて来ましたが、日本のようなチームは初めてでした」と切り出した。そして、2階の廊下の一角に、代表チームの専属シェフを務めた西芳照氏もSNSで紹介していた折り鶴が飾られてあった。
この取材に行く前に、同じ記者仲間と「もう1週間以上も経ったから、捨てられちゃってますかね」と話していたが、そんなことは全くなかった。ただ、数が少なくなっている。「スタッフが1つ、また1つと、持ち帰ってしまっているんだ。みんな日本が大好きだったからね」と、その理由を明かしてくれた。
「私たちは、今も日本代表がこのホテルからいなくなったことを寂しく思っている。W杯が終わる日まで、日本には残ってほしかった。だから、みんなの目に留まるこの場所に置いてあるんだ。もう少しして悲しみが癒えたら、しっかり展示したいと思っているよ」と、今後もホテルに残していく考えがあるという。
「チームをもてなした感覚ではなく、自分の家族をもてなした感じだった」
森保一監督が、拠点となったホテルやトレーニング施設に感謝していたことを伝えると、「こちらこそだよ。お互いにとって、すごく良かったのだと思う」と言い、「自分たちの家族をもてなしているような気分だった。こんな気分になったのは、初めてだよ」と、担当者は少し照れ臭そうに笑った。
「みんなが本当に親切で、選手たちも、監督も、コーチングスタッフも、本当に良い時間を過ごしてくれたんじゃないかと思っている。チームをもてなした感覚ではなく、自分の家族をもてなした感じだったんだ。あまり日本の人と触れ合う機会がなかったんだけれど、本当に身近に感じたよ。友情、リスペクトを互いにもって接することができていたと思う」
日本代表がドイツ戦、スペイン戦と勝利して戻ってきた時のことはもちろんだが、負けて戻って来た時のことが、より強く印象に残っているという。
「負けた時も、私たちは勝った時と同じように出迎えた。チームは落ち込んでいたけれど、私たちは変わらずに接したよ。試合は試合で終わり。家族ってそういうものだろ?」
そう言って、当時の出来事を鮮明に語っている様子が何とも印象的だった。(FOOTBALL ZONE特派・河合 拓 / Taku Kawai)