攻守に隙がないオランダ デパイの状態が懸念材料
オランダの力が抜けていて、カタール、セネガルが2位を争う。エクアドルにもわずかにチャンスがあるという力関係で、大きな波乱は起きないだろうグループだ。
昨年のEUROではラウンド16でチェコに0-2で敗れたオランダだが、大会を通じてフィルジル・ファン・ダイクを負傷で欠いていた。さらに、チェコ戦ではマタイス・デ・リフトが退場したあとに2失点している。2018年ロシアW杯の出場権を逃し、EUROでも不本意な成績に終わっているオランダだが、だからこそ不気味だ。
セネガル、エクアドルに連勝し、第3戦カタールとの戦いはターンオーバーしてラウンド16以降に備える。そんな計算ができるグループステージで、10年南アフリカW杯(準優勝)、14年ブラジルW杯(3位)に続く上位進出が予想される。
ファン・ダイク、デ・リフトに加えて、ネイサン・アケ、ステファン・デ・フライ、ユリエン・ティンバーなど最終ラインには「個」の能力が高い選手が揃っていて、3バックベースの[3-5-2][3-4-1-2]が基本となる。中盤には働き者であるフレンキー・デ・ヨング、トゥーン・コープマイネルス、マルテン・デ・ローンがいる。コープマイネルス、デ・ローンはアタランタでも一緒にプレイしており、連携も問題ない。
あとは前線を任されるメンフィス・デパイのコンディションで、9月に左太ももを痛めたこともありバルセロナであまりピッチに立てていない。俊敏性に優れ、スピード、キレで勝負するストライカーなので、筋肉系のトラブルがあると復帰後も心配が尽きない。欧州予選10試合12得点のこのエースが万全の状態であることが、オランダ躍進の条件になる。
最後にひとつ。オランダを率いるルイ・ファン・ハール監督は進行性の前立腺がんを患っていて、大会後は治療に専念する。勇退する指揮官のためにも、オランダは結果を残したい。
アジア王者とアフリカ王者 2位争いは大陸の威信がかかる
2位争いをリードするのは開催国カタールだと考えられる。19年アジアカップ優勝後、同年コパ・アメリカ、21年ゴールドカップに参戦するなど国際経験を積み、準備を進めてきた。ゴールドカップでは4強入りし、アルモエズ・アリが得点王に輝いている。
さらに、W杯アジア予選が23年アジアカップ予選を兼ねていたため2次予選に出場し、日本が最終予選で1敗したオマーンがいたグループEで7勝1分けという成績を残している。いまのカタールは、間違いなくアジアトップレベルの力を持っている。
強化のベースとなっているのは04年創設のアスパイア・アカデミーで、サッカーに限らず優秀なアスリートを育成するべく10代の選手たちを英才教育している。アルモエズ・アリはこのアカデミーの出身で、スペイン人のフェリックス・サンチェス監督もかつてコーチを務めていた。中・長期的な強化を継続して行ってきたカタールが自国開催のW杯でどんな成績を残すのか、サッカー界注目の的である。
ただ、セネガルもタレントが揃っている。守護神のエドゥアール・メンディ、守備の要であるカリドゥ・クリバリ、得点源のサディオ・マネなど、要所に欧州のビッグクラブでプレイする質の高い選手がいる。22年ネーションズカップを制しており、歴代最強とも言われている。アジア王者のカタールと、アフリカ王者のセネガル。両者が対戦する第2戦は、大陸の威信をかけた一戦になる。
セネガルは初戦がオランダとの戦いで、苦戦が予想される。そうなるとこのカタール戦からの2試合で勝点を稼がないといけない。大会直前で腓骨負傷と発表されたマネの状態も懸念材料だ。ロシア大会では初戦でポーランドに勝ちながら、日本に引き分け、コロンビアに敗戦でラウンド16進出を逃している。前回大会から引き続いて指揮を執るアリウ・シセ監督がグループステージ3試合をどうマネージメントし、決勝トーナメント進出につなげるかがカギとなる。
2大会ぶりの出場となるエクアドルも決して侮れない。普段から南米予選でブラジル、アルゼンチンといった強国と対戦しており、守備の時間が長くなる展開には慣れている。20歳のCBピエロ・インカピエを軸とする守備は安定感があり、9月の対戦では日本もゴールを破れなかった。一戦一戦を僅差の攻防に持ち込み、低い勝点での2位争いに持ち込むことができればエクアドルのグループステージ突破もみえてくる。
文/飯塚 健司
電子マガジンtheWORLD(ザ・ワールド)275号、11月15日配信の記事より転載