11月20日にFIFAワールドカップカタール2022が開幕する。今大会は、2002年に行われた日韓大会以来20年ぶりとなるアジアでの開催。さらに22回の歴史の中で、初めて冬に行われるなど、例年に比べるとイレギュラーな大会だ。
そんなカタールW杯を楽しむべく、今大会の注目選手をポジション別に5人ずつ選出。今回は右ウイング編として、アルゼンチン代表のアンヘル・ディマリア、ドイツ代表のセルジュ・ニャブリ、ブラジル代表のラフィーニャ、イングランド代表のブカヨ・サカ、日本代表の伊東純也を紹介する。
アルゼンチン代表FWアンヘル・ディマリア(ユベントス)
アンヘル・ディマリアは、2007年に行われたU-20W杯でアルゼンチン代表を頂点へと導き、2008年の北京オリンピックでも金メダルを獲得するなど、若手時代からタイトルに恵まれてきた選手だ。2021年のコパ・アメリカ決勝でもブラジルからゴールを挙げて優勝を研げるなど、長きに渡って代表チームの中心として君臨してきた。
柔らかなボールタッチとスピードを駆使して相手を抜き去るドリブルが持ち味だ。特にカウンターの際は一気にゴール前まで持ち上がり、得点につなげていく。チャンスメイクもでき、強烈なシュートでスコアも動かせる、攻撃に不可欠な選手である。
ただし、ボールを持った時のプレーだけではなく、1試合を通して切れることのない運動量を誇り、常に味方をサポートするポジショニングを取り続けるなど、献身性も高い。攻守においてアルゼンチンの中心であるディマリアはまだ、フル代表のW杯タイトルは手にしていない。今大会は悲願への思いも強いだろう。
ドイツ代表FWセルジュ・ニャブリ(バイエルン・ミュンヘン)
セルジュ・ニャブリは、バイエルン・ミュンヘンで主力として活躍を続ける27歳のアタッカーだ。U-16から各世代のドイツ代表として活躍し、フル代表には2016年から選出されているだけに、今大会はチームを引っ張っていく立場にある。
最大の持ち味は、スピードと細かいタッチを駆使したドリブルだ。サイドで繰り出すドリブルは多彩であり、フェイントを織り交ぜながら、縦への突破も中央へのカットインもお手のもの。ボールを持っていない時にパスを引き出す動きにも優れているため、裏のスペースへの抜け出しからのフィニッシュワークも見どころだ。
利き足は右だが、左足の精度も高く、もはや両利きのようなコントロールから、シュートやクロスで相手の脅威となる。パスの種類も豊富であり、フィニッシュパターンも多彩だ。ブンデスリーガでは常にシーズン2桁得点を挙げる決定力は、彼の大きな武器だと言える。ドイツの攻撃をけん引し、文字通り勝利を決める一撃を求められる選手である。
ブラジル代表FWラフィーニャ(バルセロナ)
ラフィーニャは、リーズユナイテッドで頭角を現し、2022年7月からバルセロナでプレーするFWだ。世代別のブラジル代表に選ばれた経験はないものの、2021年にフル代表に選出されると、デビュー戦で強烈な印象を残してセレソンに定着した。
高いテクニックに加え、スピードと強靭なフィジカルを兼ね備え、サイドからの攻撃で多くのチャンスを作り出す。セットプレーのキッカーを任されるキック精度も抜群で、長短自在にコントロールしたピンポイントパスを味方に送り届ける。
好不調の波が少なく、プレーの安定性があること、さらに、守備における献身性も高く、ハードワークをいとわないことも彼がピッチに立つ理由の一つだ。自身初となるW杯の舞台で、能力を遺憾なく発揮できるか。2002年以来となる優勝を果たし、“王国”復活をアピールするためにもラフィーニャの活躍に期待がかかる。
イングランド代表MFブカヨ・サカ(アーセナル)
ブカヨ・サカは、イングランドにおける2021-2022シーズン年間最優秀選手賞を受賞し、アーセナルの中心選手として活躍する21歳の若きアタッカーだ。各年代のイングランド代表でも存在感を示し、19歳の時にフル代表デビューを果たした。
彼の持ち味は多岐に渡る。その一つが、左足から繰り出されるパスだ。サイドからのクロスや決定的なパスを供給し、多くのゴールチャンスを演出できる。もう一つは、身体能力とスピードだ。豊富な運動量を生かし、サイドを何度もスプリントしてみせる。
フットボールIQも高く、戦況や周囲の配置を見ながら瞬時に最適な選択を導き出し、自分で突破するのか、味方を生かすのかを判断してアタックできる。守備でも前線から積極的にボールを奪えるため、攻守両面でチームに貢献できる選手と言える。イングランド期待の新星がW杯でどのような活躍を見せるのか、多くの注目が集まっている。
日本代表FW伊東純也(スタッド・ランス)
伊東純也は、日本が誇るスピードスターであり、今や欠かすことのできない存在だ。日本にアジア最終予選突破をもたらした立役者の一人であり、右サイドを主戦場に攻撃をけん引している。スタッド・ランスでの活躍もめざましく、今大会の飛躍が期待される。
最大の武器は、推進力だ。相手を置き去りにする初速と、緩急をつけたドリブルでサイドを切り裂いていく。クロスの精度も高く、アシストも多いが、伊東は得点能力も高い。自ら中に入っていくアタックから、日本に多くのゴールをもたらしてきた。
持ち味のスピードは、守備でも生かされる。前線から強度の高いプレッシングを見せたかと思えば、自陣深い位置まで戻って守備に奔走するなど、献身的に味方をサポートできることも強みの一つだ。攻守において鍵となる選手であり、日本史上最高成績となるベスト8に向けて、伊東の活躍が不可欠であることは間違いない。
文・渡邉知晃
photo:徳丸篤史 Atsushi Tokumaru