【独占インタビュー】スペイン代表は「W杯優勝の可能性がある6、7チームの中にいる」

 11月20日に開幕するカタール・ワールドカップ(W杯)。日本代表は、グループリーグでドイツ代表、コスタリカ代表、スペイン代表と対戦するなか勝ち抜けるのか。グループ突破本命の一角、スペインの戦い方とは? スペインを率いるルイス・エンリケ監督を選手時代から知る元同国代表MFのルベン・バラハ氏がW杯を展望。グループリーグについて「ドイツとスペインが有力候補。日本とコスタリカもいいものを持っている」と分析している。(取材・文=島田 徹/全3回の3回目)

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――現在のスペイン代表をどう見ている?

「私は好きだ。見ていて素敵で、確かなスタイルがあり、はっきりしたプレー構築がある。ルイス・エンリケは2002年日韓W杯の時のチームメイトで、明確なアイデアがあり、何がしたいのか分かっている。スペインは若さとエネルギーがあり、プレーリズムが激しく、高いレベルの選手たちがいて勝負を決める個人技もある。何よりチームになっている。ルイス・エンリケが成し遂げているのは最近の大会で優勝を狙えるところまで来ているということ。カタール大会でスペインはそれなりのチャンスがあると思う。最有力候補とまではいかないと思うが、W杯優勝の可能性がある6、7チームの中にはいる。できるだけ勝ち進んでほしいと願っている」

――否定的な見方をするなかには、複数の主力選手が怪我で戦線離脱し、所属クラブでレギュラーではない選手たちが代表にいる、との声もある。

「それはルイス・エンリケのチームマネージメント。私が思うに、彼が選手を代表に呼ぶ時に大事にしているのは、選手たちの状態と活躍具合で、名前(ネームバリュー)ではない。スペインはプレッシャーをかける時に高い位置から激しくいき、自分たちがボールを失えば改めてプレッシャーをかけ、長い時間相手陣内で試合を進める。そういうことをするためのいくつかの条件が選手には求められる。ルイス・エンリケが見ているのは選手の状態とピーク。全員に危機感があり、絶対的な存在がいない。つまり全員が試合に出て、チームを手助けする準備ができている。チームになっていると思う。スペインではいつも大きな大会を前に否定的な見方をして、疑問を投げ掛け、批判する人たちがいる。私から見てルイス・エンリケの仕事ぶりは興味深い。何より大事なのは、彼は就任当初からここまで自分の方針を変えていない。指揮官がやり方を変えず十分なパーソナリティーがある。それはチームやグループにとって常に大事なことだ」

――選手時代からルイス・エンリケは監督としての素質があると見ていた?

「彼は常に勝利者の精神を持ち競争意識があった。2002年日韓W杯では、代表選手として最後の瞬間だったかもしれない。主役を務めるほどではなかったがチームを盛り上げ、チームとしてのコンセプトがあった。あらゆる監督にとって、大事なのはいいグループを持つということ。そういったものは選手の時から持っていて、チームのことや全員にとって良いことを考え、仲間へ発信していた」

グループリーグ展望「日本とコスタリカもいいものを持っている」 大会の注目選手は?

――カタールW杯のグループリーグには、ドイツ、日本、コスタリカがいる。どうなると思う?

「論理的に考えて、ドイツとスペインがグループの有力候補になる。だが下のチームにも十分な注意を払わなければならないだろう。なぜなら今回のW杯はこれまでのどの大会とも違う。まず選手のコンディション。これまでのW杯はシーズンが終わってから行われていたが、今回はシーズンの途中で選手たちの怪我が考えられ、戦力低下が起こる。あと天候や湿気への対応も決定的な要素になるだろう。日本とコスタリカもとてもいいものを持っている」

――最近の日本サッカーのことは何か知っている?

「日本のサッカーが発展していて、ヨーロッパでたくさんの日本人選手たちがプレーしているのは知っているし、それがより競争力のあるチームにしている。日本は走力のあるチームだろうし、スペインを苦しめるだろうと確信している」

――大会の優勝候補は?

「3、4チームが優勝候補になる。まずはフランス代表。素晴らしい選手たちがたくさんいて、彼らの多くがキャリアで重要な時期に差し掛かっている。若手とベテランのバランスも良く、単に11人だけではなくベンチにも十分なポテンシャルがある。次にアルゼンチン代表。常に優勝候補だが、今回はリオネル・メッシが最後のW杯になると言っていて、夢の達成に向けて全力を尽くすだろう。ドイツも同じように常に上位を狙う存在でレベルが高い。ブラジル代表も強力。この4チームが一番チャンピオンに近いところにいる。スペインは第2グループだけど大きなことを成し遂げることができる。それでも調子の上下や(有力チーム同士の)直接対決、ベスト16やベスト8あたりで難しい状況になった時に、今言った序列が変わることもあり得る」

――大会で注目する選手はいる?

「アルゼンチンだったらメッシ、ブラジルはネイマール、フランスならキリアン・ムバッペがチームを象徴的な選手。スペインにもいい選手はいるけど、誰かがそのほかの犠牲の下で際立つということはなく、全員が監督の望むサッカーをする。それがチームを大いに助けることになるかもしれない」

[プロフィール]
ルベン・バラハ(Ruben BARAJA)/1975年7月11日生まれ、スペイン出身。バジャドリードB―バジャドリード―アトレティコ・マドリードB―アトレティコ・マドリード―バレンシア。ラ・リーガ通算338試合47ゴール(公式戦通算581試合98ゴール)。スペイン代表通算43試合7ゴール。現役時代は、高精度のキックと卓越した展開力に加え、高い守備力も兼ね備えたMFとして活躍。バレンシア時代には、31年ぶりのリーグタイトルを含めリーグ優勝2回、UEFAカップ(現UEFAヨーロッパリーグ)優勝1回、コパ・デル・レイ(国王杯)優勝1回に貢献した。2002年日韓W杯に出場するも準々決勝の韓国戦でPK戦の末に敗退。2010年に現役引退後、エルチェ、ラージョ・バジェカーノ、スポルティング・ヒホン、テネリフェ、レアル・サラゴサなどで監督を歴任した。(島田 徹 / Toru Shimada)