エクアドル戦はほとんど収穫がなかった

2019年のアジアカップ決勝で日本代表を撃破したとき、カタール代表がこのまま強くなっていくかもしれないと予感した人もいただろう。当時の決勝で日本は1-3で敗れてしまい、確かに当時のカタールには勢いがあった。

強みは連携だ。今回のワールドカップメンバーもアル・サッド、アル・ドゥハイルといった自国の上位クラブを中心に、メンバー全員がカタール国内でプレイしている。同じクラブでプレイしている者を揃えることで連携が取りやすくなり、チーム全体で意思を共有しやすくなる。育成部門アスパイア・アカデミーの卒業生も多く、この組織力こそがカタールの強みと考えられてきた。

チームを指揮するフェリックス・サンチェスもバルセロナのユース組織での指導を経て2006年よりカタールのアスパイア・アカデミーに関わっており、U-19、U-23の指導を経て2017年よりカタール代表の指揮官に就任。これほど長く1つの国で指導する人物も珍しく、選手の特長は細部まで頭に入っているはずだ。

その集大成が今回のワールドカップ・カタール大会だったのだが、初陣のエクアドル戦は散々なパフォーマンスだった。スタジアムにはホームサポーターも駆けつけていたが、結果は0-2の惨敗。特に見せ場もなく、終始エクアドルのペースで試合を進められてしまった印象だ。その実力差にガックリときたサポーターも少なくないだろう。

大会前、元カタール代表GKアフマド・カリルは「アジアカップで優勝した後、カタールの目標はパフォーマンスをさらに改善することだった。難しいグループだが、次のラウンドへ進むことは可能だ。フットボールは驚きに満ちている。サプライズを起こせることを願っている」と前向きにコメントしていた(英『BBC』より)。

もちろんグループステージは残り2試合あるため、カタールがサプライズを起こすことも不可能ではない。しかしエクアドル戦は特にチームの連携を感じさせる場面もなく、球際の攻防も競り負ける機会がほとんどだった。長時間かけてチームを作ってきたとは思えぬ完成度で、ここからセネガルとオランダを撃破するのは厳しいのではないか。

最近の親善試合で結果が出ていないことから不安の声もあったが、集大成となるワールドカップをこのまま終えてしまうのか。アジアカップ2019を制したときは可能性を感じさせたが、あの頃からレベルアップしているか分かりづらい状態となっている。