正直、落胆したし、多少の苛立ちも感じた。アル・バイト・スタジアムで開催された11月20日のカタールW杯開会式&開幕戦における飲食事情にだ。
まず、取材者用のメディアカフェが長蛇の列。過去に取材した2016年EUROフランス大会や2018年W杯ロシア大会は、大量のメディア関係者をスムーズに捌くために動線も支払いシステムもかなりの配慮がされていた。しかし今回は、はっきり言って手際が悪すぎる。売店スタッフがあたふたして、まるで機能していなかったのだ。
列に並んでいると前後からため息が聞こえてきて、後ろのウルグアイ人記者と目が合うと、「これ無理だよね?」とお互いに苦笑い。結局、諦めてスタジアム内の飲食売店に行くことにした。「サポーターに対応するスタジアム内は流石にまともだろうと」と踏んで。
スタジアム内にあった売店でメニュー表を見ると、水が10カタール・リヤル(約400円)、コカ・コーラが15カタール・リヤル(約600円)、ホットドッグが25カタール・リヤル(約1000円)。街中の約4~5倍と、メジャートーナメントではありがちな超強気の値段設定だ。
とはいえ、その時は喉がカラカラなうえに空腹で、背に腹は変えられない。オーダーすることにしたが、以下のような信じられないやり取りとなった。
記者「水、コーラ、ホットドッグをください」店員「ホットドッグ、ノー」
記者「えっ、メニュー表にあるじゃん。売り切れたの?」
店員「ノー、ノー。元からないんだ」
記者「うっそ。お腹ペコペコなんだけど、何があるの?」
店員「オンリー、ホテトチップス(しかも超小サイズで約400円)」
記者「マジで? じゃあ、水、コーラ、ポテチをください……」
ここの売店だけ特別に杜撰なのかもしれないと思い、コンコースを歩いて別の売店にも寄ってみた。目の前のサポーターが「Are you kidding me ?」(冗談だろ?)と言っていて嫌な予感がしたが、やはりほぼ似たような状況。ファティール(アラブのミートパイ)だけあって買おうとしたが、なぜか隣のレジに回された末、以下のようなやり取りとなった。
店員A「これはいくらだ?」
店員B「わからん」
(※アラビア語であーだーこーだ言い合う)
店員C「はい、どうぞ」
記者「いや、これコーラやん。頼んだのはファティールだよ」
店員C「もうコーラでクレジットカードを切っちまったよ……。もういいや、ファティールを持っていきな」
記者「おっ、おう……」
コーラとファティールの値段はたまたま同じ15カタール・リヤルだったが、もう滅茶苦茶である。メニュー表にある食べ物が用意されていなうえ、店員が値段すら把握していないとは……。杜撰にもほどがある。
他のスタジアムはまだ取材できていないが、大事な開幕戦のスタジアムがこれでは、他も期待はできそうにない。ちなみに、このアル・バイト・スタジアムは今後、準決勝を含む8試合を開催予定で、飲食をめぐってサポーターやメディア関係者とトラブルにならなければいいが……。
取材・文●白鳥大知(サッカーダイジェスト特派)
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