1962年のチリW杯から現地取材を続けるシェルツァー氏を直撃
ドイツ人フリージャーナリストのハルムート・シェルツァー氏は、現在84歳で初のワールドカップ(W杯)取材は1962年のチリ大会。それ以降、すべての大会を取材しており、今回のカタールW杯は16大会目になるという。現在もフランクフルト在住で、日本代表MF鎌田大地の才能に惚れ込む大ベテラン記者は、今回のドイツ代表が初戦の日本戦に向けて極めて高い集中力を持っていることを指摘した。
鎌田とフランクフルトで同僚のMFマリオ・ゲッツェとの関係について、にこやかに話していたシェルツァー氏だったが、ある質問をした時に、その表情が一気に変わった。
明日の試合は、どういうスコアになると予想する? と聞くと、明確なスコアは答えなかったものの、「日本がサプライズを起こす可能性もある。なぜなら、ドイツ代表はそれほど手堅くなく、どれだけ強いのかが誰にも分からない。だから日本にもチャンスはあると思う」と語った。
和やかな雰囲気が、ピリッとしたのは次の質問を投じた時だった。「ドイツは2試合目で、スペインと対戦する。スペイン戦のことが頭の片隅にあり、初戦への集中力を妨げる可能性はあるか?」と言うと、大ベテラン記者の表情が険しくなり、「ノー、ノー」と質問を遮るように即答した。
「なぜなら、彼らは4年前に敗れた経験があるからだ。彼らは1次ラウンドの初戦でメキシコに敗戦を喫した。すべての惨劇はそこから始まった。だからこそ彼らはスペイン戦のことなど、考えないはずだ。最も重要なのは、初戦の勝利。日本に勝つことが何よりも重要。それがドイツ代表の頭のなかにある考えだ」
つまり日本がドイツに勝つのは、本当に難しいことであり、それでも勝てれば日本の強さは本物だということですね。確認するように聞くと「イエス、イエス、イエス」と、深くうなずいた。
「次の試合がドイツにとって、最も重要な試合だ。日本戦でどういうスタート切るか。その試合が終わってからじゃないと、スペインのことを考えないといけない。日本に勝てれば、強い自信を持って、スペインとの試合に臨める。だが、もし敗れてからスペインと戦うことになれば、チームは不安を抱えることになる。スペインに勝たなければいけなくなるからね。だから、ドイツ代表にとっては日本戦が最も重要なんだ」、そう一気に語ったハルトムット氏は、「OK?」と、笑顔に戻った。
日本も重視している大会初戦だが、3試合を戦っただけで荷物をまとめて帰国した前回大会を経験しているドイツは、日本以上に初戦を重視しているかもしれない。油断や慢心が一切ないドイツ。森保ジャパンが初戦で対峙する相手は、言葉にするだけでも恐ろしい相手だ。(FOOTBALL ZONE特派・河合 拓 / Taku Kawai)