[カタール・ワールドカップ・グループステージ第2戦]日本 0-1 コスタリカ/11月27日/アフマド・ビン・アリ・スタジアム

 ドイツ戦とは裏返しの結末が訪れた。

 おそらくドイツは10回戦っても、もう一度、勝てるかどうかの相手だ。前半の内容を考えれば、ドイツに2点目が入った途端に雪崩となり大量失点の可能性もあった。

 逆にコスタリカは、1998年フランス大会で戦ったジャマイカのように、もう二度と負けそうもない相手だった。だが引いた相手を崩し切れないテーマは森保体制で4年間を経ても解消し切れず、この大事な試合で墓穴を掘ることになった。アジア内でも懸案だったわけだから、いくら相手がコスタリカでも世界の舞台に出れば必然とも言える。
 
 確かに日本は直接ドイツを下したが、そのドイツとの心理戦には敗れていたのかもしれない。前述の通り、ドイツは次に顔を合わせたら到底勝てそうもない実力を備え、それは誰よりもピッチ上で戦った日本代表選手たちが痛感したはずだ。

 しかもドイツは伝統的に力の差のある相手には容赦がなく、グループステージ最終戦でコスタリカへのゴールラッシュは目に浮かぶ。実はドイツに勝った瞬間から、日本陣営はドイツという大国の影に脅え、コスタリカには確実に勝利(できれば大量点)という重圧に苛まれていたのかもしれない。
 
 そのせいか、コスタリカ戦に臨む森保一監督の選択や采配にも歯切れの悪さが透けた。今まで全幅の信頼を置いて来た伊東純也を外し、右MFには堂安律を起用。もちろん右サイドは山根視来に高い位置を取らせたいので、堂安には所属の川崎で絶妙のコンビを見せる家長昭博と同じような役割を期待したのだろうが、反面、伊東温存にはスペイン戦への「保険」がちらつき、目の前の相手を100%で叩きに行くイメージは多少薄れた。
【W杯PHOTO】日本 0-1 コスタリカ|終始ボールを握るも得点奪えず…一瞬のスキを突かれ失点し完封負けを喫する
 それはスペインと対峙したドイツの切迫感と比べれば、一層明白だった。日本は日中にキックオフを迎えた影響もあるのだろうが、指揮官が「総力戦」を強調する割には、ペース配分を考慮し自重傾向が見て取れた。それに対しドイツは、最初から勢いよくプレスを仕掛け、後半に入ると果敢さを加速させた。前半は完全にスペインに主導権を握られたが、さすがにスペインもこのハイプレスで間延びし、徐々にドイツが主導権を手繰り寄せた。

 一方の日本は、後半に入るとコスタリカのDF3枚に3トップで対峙しながら、距離も詰めに行かずに見合うケースが目立った。後半に投入された浅野拓磨がひとりでDFからGKへと追いかけただけでも堂安の回収に成功したのに、際限がなかった。結局、9月のアメリカ戦での収穫は本大会へは繋がらず、むしろここまで来てベストフォームを探しあぐねている感もある。

 また攻撃に目を転じれば、スペインとの大きな落差が歴然とした。スペインは同じコスタリカに対し、ラインや選手間に入った味方に躊躇なく差し込みながら、食いつかせては組織を破壊。ほとんど身体の接触もないままハイテンポでボールを動かし、実に1000本を超えるパスを繋いで7ゴールを連ねた。

 ところが日本は確実に勝とうとする意識が強過ぎるのか、リスクを避ける選択が続き、判断が遅れ、個の打開に頼る局面が連鎖した。個が無理をしようとするから力みが生まれボールタッチの精度を失う。こうしてボールの動きが鈍いので捕まって衝突も多く、一見圧倒しているようで、コスタリカに倍の22度もFKを献上した。

 単独で決定機を創出できる三笘薫も判で押したように後半起用を続けて来たが、総じて先制パンチを浴びせる狙いが乏しく、それはドイツ戦でも失敗している。
 
 ドイツ戦は森保采配が奏功し、コスタリカ戦は裏目に出た。しかし最も注意深く検証するべきなのは「ここでどんな結果を出したか」より「この4年間で何を積み重ねられたか」である。ドイツが同点弾を叩き込んだことで、スペインは日本戦もターンオーバーを最小限に止めて臨んで来るはずだ。もし再び奇跡が刻まれたとしても、そこは冷徹に見極める必要がある。

文●加部究(スポーツライター)