[カタール・ワールドカップ・グループステージ第2戦]日本 0-1 コスタリカ/11月27日/アフマド・ビン・アリ・スタジアム

 11月23日の初戦・ドイツ戦に続き、27日のコスタリカ戦も連勝し、カタール・ワールドカップ(W杯)のグループステージ突破をいち早く決めたかった日本代表。しかし、中南米の強国は想像以上の難敵だった。

 初戦でスペインに0-7で大敗した彼らが背水の陣で攻めてくるという予想もあったが、ふたを開けてみると5-4-1の強固なブロックを敷く守備的戦術を採ってきた。原点回帰を図ったのだろうが、こうなると日本はスペースがなくなり、攻めあぐねる。アジア予選でよく見受けられる悪循環を強いられたのである。

「あれだけコンパクトにアグレッシブに守られると、僕たちだけじゃなくて、どこの国も苦戦する。今日は自分たちの狙っているような守備ができなくて、良い攻撃につなげることができなかった。これが国を背負って戦っているっていうことだし、ワールドカップっていうのはどの試合でも難しいものだなと感じてます」

 スタート時はトップ下に陣取り、途中から2シャドーの一角に入った鎌田大地(フランクフルト)は苦渋の表情を浮かべた。

 ドイツ戦の鎌田は前半から凄まじい守備負担を強いられながらフル出場。堂安律(フライブルク)の同点弾のシーンでは、中盤で巧みに敵を引きつけ、堂安のゴールを導くシュートを放った南野拓実(モナコ)が、飛び出すスペースを作るという黒子の動きも見せていた。
 
 もっとも、フランクフルトで今季公式戦12ゴールを奪っているフィニッシャーの凄みを示せなかっただけに、コスタリカ戦では期待が高まった。が、中3日の過密日程、上田綺世(サークル・ブルージュ)らとの不慣れな連係、相手の強固な守備に阻まれ、イージーミスを連発。山根視来(川崎)に「もっと守備で前に出ていい」と激しく要求するなど苛立ちもにじませるなど、前半は彼らしい輝きがほとんど見られなかった。

「イージーなミスが個人的にすごく多かったなと思う。自分はああいうイージーミスをしてはいけない選手。普段だったら起こり得ないことだし、特に今季はそう。自分のプレーに対して納得してないですけど、もう切り替えるしかないので」と、本来のパフォーマンスを発揮できずに苦しんだことを明かした。

 それが、「W杯の魔物」というものなのかもしれない。過去のW杯でエース級と位置づけられた選手を見ても、中村俊輔が原因不明の発熱や帯状疱疹に見舞われたり、香川真司(シント=トロイデン)がコンディション不良に陥ったりしたケースがあった。

 鎌田は昨季、ヨーロッパリーグ(EL)王者に輝き、今季はチャンピオンズリーグで存在感を示すなど、百戦錬磨のアタッカーだ。それだけの人材にとっても、初めてのW杯は一筋縄ではいかないということなのだろう。

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 後半に入ってからは浅野拓磨(ボーフム)、三笘薫(ブライトン)らの投入があって日本の攻撃は活性化。鎌田がゴール前に行く回数も多少なりとも増えたように感じられたが、日本のゴールが遠い。嫌な流れを断ち切ることができないまま、81分にミスが重なって致命的な失点を喫してしまった。

 鎌田自身は88分に三笘の左サイドの打開から、この日最大のビッグチャンスを迎えたが、放ったシュートはケイラー・ナバス(パリSG)の正面。決めきることができなかった。

「自分の感覚では、薫のクロスに対して拓磨君にちょんと当たって自分のところにこぼれてきたと思いますけど、決めきれてないのが今の自分の実力」と神妙な面持ちでコメントしていた。

 W杯突入前の鎌田は「普段通りにやれば問題ない」とフランクフルトの試合と同じようなマインドで戦おうとしていた。それができると信じていたはずだ。が、W杯の試合で決定機を外す重みは計り知れないものがある。それを彼はこの日、嫌と言うほど痛感したのではないだろうか。

「正直、試合をしている時は意味とかを考えられないけど、試合が終わってみると、1回のチャンスの重みは感じますよね……。ただ、外したシーンを毎回、悩んでいても仕方ない。サッカー選手なら起こり得ること。あとはホントにチャンスの回数を増やすことを続けていくだけかなと思います」
 
 気丈に前を向く背番号15が今、やるべきなのは、12月1日のGS最終戦・スペイン戦で結果を出すことだ。3戦連続先発は回避ということになるかもしれないが、勝利が必要な大一番だけに、森保一監督は重要局面で必ず彼にチャンスを与えるだろう。

 そこでフランクフルトの時のように鋭い嗅覚を見せつけ、ゴールという結果を残すことができれば、ここまでのモヤモヤは全て払拭できる。昨季ELでバルセロナに勝った経験も含め、持てる全ての力を注いでほしいのだ。

「ワールドカップの借りはワールドカップでしか返せない」と長友佑都(FC東京)らも口癖のように言うが、鎌田もここでやらなければ後がない。ここまでの悔しさを晴らし、日本を勝利へと導く結果をもたらすことが肝要だ。

 森保ジャパンのエース級と位置づけられるべき男がこのまま沈黙していたら、グループステージ突破も、悲願のベスト8進出もあり得ない。まずは心身ともにいち早く切り替えを図り、スペイン戦での復活を待ちたい。

取材・文●元川悦子(フリーライター)