●ポルトガル代表の決勝トーナメント進出が決定

FIFAワールドカップカタール2022、グループH第2節ポルトガル代表対ウルグアイ代表が現地時間28日に行われ、2-0でポルトガル代表が勝利している。前節に続きポルトガル代表は決して多くの決定機が作れたわけではないのだが、戦術変更によって改善の兆しは見られた。その戦術変更とはどのようなものだったのだろうか。
(文:安洋一郎)

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 FIFAワールドカップカタール2022もグループステージ第2節を終了した。前回大会王者フランス代表、優勝候補筆頭に挙げられるブラジル代表に続いてポルトガル代表はこの時点で決勝トーナメント進出を決めている。

 優勝候補と並んで早々に決勝トーナメント進出を確定させた“結果”だけ見ると順調と言えるだろう。

 しかし、フランス代表とブラジル代表と比較するとその試合内容は順調とは言えない。初戦ガーナ代表戦は3ゴールこそ奪ったものの、その内容はPKと、相手がゴールを奪いに猛攻を仕掛けてきた裏を突くカウンターの2発であり、65分まで続いた0-0のスコアレスにおける攻撃面の内容はかなり酷かった。

 ただ、普段あまりポルトガル代表の試合を見ていない人からすると「攻撃が苦手」ということに疑問を抱くだろう。というのもエースのクリスティアーノ・ロナウドを筆頭にブルーノ・フェルナンデス、ベルナルド・シウバ、ジョアン・フェリックス、ラファエル・レオンら豪華攻撃陣を擁しているからだ。

 それなのにも関わらず、なぜポルトガル代表は攻撃を苦手としているのだろうか。

●ポルトガル代表が攻撃を苦手としている理由

 その最大の要因は守備的戦術を志向するフェルナンド・サントス監督の戦術にある。長くサントス監督は堅い守備ブロックを作ることを重要視するために、ガチガチに選手を起用したポジションに固定してプレーさせていた。簡潔に説明すると、選手たちのプレーエリアに制限をかけて、自分たちの持ち場で精一杯プレーさせるのだ。

 この戦術は攻撃が機能しにくい反面、守備面では穴のない堅守のチームを作ることができる。それが功を奏したのが2016年のユーロ(欧州選手権)だろう。同大会でポルトガル代表は決勝トーナメント以降で1失点しかしなかった。

 しかし、この守備的なサッカーは今の時代にあったものではなく、度々批判を浴びてきた。加えてチームの司令塔であるブルーノ・フェルナンデスは、このようにポジションを固定させてプレーさせると良さが半減するという懸念点があり、実際に昨夏のユーロまでは29試合で4得点5アシストとクラブでの好調とは対照的な成績に終わっていた。

 ただ、昨夏のユーロでの惨敗から徐々にこの守備的すぎるサッカーから脱却しようとしている。それが今節ウルグアイ代表戦でも垣間見えた。

●前節ガーナ代表戦からの戦術変更とは?

 うまくいかなかったガーナ代表戦からの一つ目の戦術変更はロナウドの立ち位置の変更だ。中央だけでなく、ワイドにも積極的に顔を出すことで多くの局面でボールに関与した。これはこれまでのサントス監督のチームではあまりなかったことだったが、さすがに攻撃の機能不全に手を打った形だ。

 この戦術変更の効果はすぐに発揮された。ロナウドはサイドで起点となり、味方選手へ積極的にダイレクトでボールを落とした。結果的にこのロナウドの落としから点に結びつくことはなかったが、このプレーから3本のシュートが生まれている。

 そしてこの試合における最大の戦術変更はブルーノ・フェルナンデスのトップ下起用だ。前節ガーナ代表戦では右WGで起用されていたが、ウルグアイ代表戦では中央にポジションを移している。ブルーノ・フェルナンデスはトップ下という比較的自由が与えられるポジションで試合に出場したことで、味方選手へのサポートに積極的に周り、相手のファイナルサード付近でボールを保持する場面では数的優位を作りやすくなった。

 実際に先制点が決まった場面もブルーノ・フェルナンデスが中央から左サイドに顔を出したところから生まれており、この起用変更がハマった形だった。

 とはいえ、改善点もまだまだ多い。チャンスの数こそ増えたが、その精度は決して高いとは言えず、「あるシュートチャンスが得点に結びつく指標」であるゴール期待値も1.36点に留まっている。そのうちの0.76点がPKだったことを考えると、他のプレーでは0.6点分のチャンスしか作れなかったことになる。

 こうしたことからもポルトガル代表の攻撃は課題が山積みということがわかるだろう。それでも徐々に改善をしようという兆しは見え始めている。成長過程のポルトガル代表は大会期間中にどれだけ成長できるのだろうか。

【グループリーグ順位表】カタールワールドカップ<組合せ>
【全試合日程・結果・放送予定】サッカーFIFAワールドカップカタール2022
【決勝トーナメント表】カタールW杯<組み合わせ>
【了】