中東カタールの地で開催されている、2022FIFAワールドカップ(W杯)。各大陸の予選を勝ち抜いた実力者の集う場所なだけあって、過去の大会と同様に盛り上がりを見せている。そんな中これまでのW杯とは少し違った印象を世界に与えているのが、日本を含むアジアの国々だ。

直近2大会のアジア勢といえば、前回2018年(ロシアW杯)グループリーグ突破したのは日本のみ。その前の2014年(ブラジルW杯)はベスト16にアジアのチームが1つもないというように、目立った成果をあげられていないが、今大会は少し様相が違ってきている。

残念ながらグループAに属する開催国カタールは、2連敗で既に敗退が決定した。しかし、その他の5か国(イラン、サウジアラビア、オーストラリア、日本、韓国)はいずれも2戦目まで終わった段階で、まだ突破の可能性を残しているのだ。強国を撃破するチームも出ており、グループリーグ最終戦を前により一層アジア勢の試合に注目が集まることだろう。

次回2026年大会からは、出場国が現在の32カ国から48カ国に増えるW杯。アジア枠も今回の4.5から8へ大幅に増加するが、今大会でアジアサッカーの強さを示すことができれば、必要枠と証明することにもつながる。アジアサッカーのさらなる躍進のため、ここではカタールW杯グループリーグ突破をかけて戦う、アジア勢5か国のキーマンたちを紹介していく。


【カタールW杯】アジア勢5か国のグループリーグ突破のキーマンたち
イラン代表 FWメフディ・タレミ 写真:Getty Images

イラン:メフディ・タレミ(グループB)

グループBにて、初戦となったイングランド戦(日本時間11月21日)で大量6失点を喫し、一気に窮地へと追い込まれたイラン(試合結果2-6)。その厳しい試合の中でも2得点を挙げるなど、決して多くない決定機で力を示したのがFWメフディ・タレミだ。

タレミはポルトガルリーグのリオ・アヴェへ移籍した2019-20シーズンに、リーグ得点王を獲得。以降活躍の場を同リーグのポルトへ移してからも、シーズン2桁得点を続けているまぎれもないストライカーである。

2戦目のウェールズ戦(11月25日)は、負けが許されないプレッシャーの中、タレミのアシストでの得点を含む2得点で勝利したイラン(2-0)。初戦の大量失点こそあったものの、攻撃陣は2試合で4得点と好調と言える成果を上げている。グループリーグ最終戦のアメリカ戦(11月30日4:00)でも、攻撃の要となるタレミのボール保持能力とゲームメイクに注目だ。


【カタールW杯】アジア勢5か国のグループリーグ突破のキーマンたち
サウジアラビア代表 MFサーレム・アッ=ドーサリー 写真:Getty Images

サウジアラビア:サーレム・アッ=ドーサリー(グループC)

初戦のアルゼンチン戦(11月22日)で見事な逆転勝利(2-1)し注目を集めたサウジアラビア。この逆転ゴールを決めたのが、MFサーレム・アッ=ドーサリーだ。特徴はなんといってもその高い技術。ゴール前でも落ち着いたプレーと確かなボールさばきで決定機を演出できる。

2戦目のポーランド戦(11月26日)はPK失敗という残念なシーンもあり敗北を喫した(0-2)が、多くのチャンスを演出できていたアッ=ドーサリー。何より初戦の歴史的な勝利もあってか、チーム全体としても自信を持ったプレーが多く見られ、結果ゲームメーカーとして仕事もしやすい状況になっていることだろう。

グループリーグ最終戦(12月1日)では難敵メキシコが待ち構えている。しかし、今大会で掴んだ自信とアッ=ドーサリーの技術で、アメリカ大会(1994年)以来となるベスト16入りを勝ち取ってほしいものだ。

【カタールW杯】アジア勢5か国のグループリーグ突破のキーマンたち
オーストラリア代表 MFアーロン・ムーイ 写真:Getty Images

オーストラリア:アーロン・ムーイ(グループD)

オーストラリアは、アジア予選プレーオフ、大陸間プレーオフと、難しい状況を勝ち抜き今カタールW杯本大会への出場を掴んだ。前回王者フランスと同組となったグループリーグが厳しい戦いになることは、大会前から予想されていた。

初戦はいきなりそのフランス戦(11月23日)。先制こそしたものの、その後4失点を浴びて逆転負けを喫し(1-4)グループリーグ突破に向けて暗雲が立ち込める結果となっていた。

このフランス戦で、豊富な運動量でチームの心臓としての役割を果たしていたのが、MFアーロン・ムーイだ。崖っぷちで迎えた2戦目のチュニジア戦(11月26日)でも、攻守に渡って軸としての役割を全うし、3戦目に望みをつなぐ勝利(1-0)に大きく貢献している。

グループリーグ最終戦(12月1日)は強靭なフィジカルと組織力を誇るデンマークが相手。中盤の負担は大きくなるだろうが、ベテランとしてムーイの落ち着いたゲームメイクに期待したい。


【カタールW杯】アジア勢5か国のグループリーグ突破のキーマンたち
日本代表 MF遠藤航 写真:Getty Images

日本:遠藤航(グループE)

ブンデスリーガで2年連続デュエル王となるなど、対人能力を高く評価されている日本のMF遠藤航。初戦となったドイツ戦(11月23日)でも、普段から対戦している選手たちが多くいることもあってか、的確なポジショニングや体の入れ方で攻撃の芽を摘み取る活躍を見せ、歴史的な勝利(2-1)に貢献した。

しかし、2戦目のコスタリカ戦(11月27日)では遠藤含む中央が沈黙。守備面の強度は従来と遜色ない働きで終始日本のペースで試合を進めたが、攻撃面では効果的な縦パスの本数も極端に少なく、結果相手にワンチャンスをものにされてしまう(0-1)。

グループリーグ最終戦(12月2日)の相手となるスペインは、いずれのポジションも能力の高い選手が揃う。特に中央はタレントの宝庫だ。また、スペインはドイツ戦に引き分けた(11月28日1-1)ことで、日本戦も主力をそのまま起用することも大いに考えられる。中央で身体を張って攻撃の芽を摘める遠藤の存在は大きい。

遠藤については、コスタリカ戦後右ひざを痛めたとの報道もあり、スペイン戦の出場が危ぶまれる状況だ。重要な潰し役である遠藤不在となれば、一方的に殴られる展開も予想できる。それほどまでに現在の日本代表にとって遠藤の存在は大きなものだと言えよう。


【カタールW杯】アジア勢5か国のグループリーグ突破のキーマンたち
韓国代表 FWソン・フンミン 写真:Getty Images

韓国:ソン・フンミン(グループH)

初戦となったウルグアイ戦(11月24日0-0)で危険なシーンを多く作られてしまった韓国だったが、チャンスを作っていたのはやはり絶対的なエース、FWソン・フンミンだった。大会前に左眼窩底骨折による影響を不安視されたが、試合では複数のチャンスに絡む活躍を多く見せてくれた。

2戦目のガーナ戦(11月28日)では、2点先行された中でも左サイドの落ち着いたプレーでチームを牽引。同点に追いつくシーンでも起点となる働きを果たしている。

残念ながら2戦目を落とした(2-3)ことで、残るポルトガルとの大一番(12月3日)は勝利が突破に必須の条件となる韓国。しかし、アジア勢のジャイアントキリングが目立つ今大会では、韓国も番狂わせを起こすチャンスと見ることもできる。ソン・フンミンは、まだ今大会得点がなく、強豪国相手のこの重要な試合でこそ高い得点能力を発揮してほしいものだ。