11月に開催が予定されている2022FIFAワールドカップ・カタール大会(カタールW杯)。6月にいくつかのプレーオフを控えて出場国が出揃うが、4月2日にはグループリーグの全組み合わせが決定した。組み合わせにおいて毎回注目されるのが、強豪チームで構成される「死の組」だ。
W杯のグループリーグでは、4ヶ国中上位2ヶ国が決勝トーナメントへ進出する。カタールW杯では、日本が属する「グループE」が「死の組」と目されている。未だ大陸間プレーオフを控え1枠は未定(コスタリカ対ニュージーランドの勝者)ながら、スペインとドイツという優勝経験のある強国が同居するためである。
もちろんどのグループでも決して楽な戦いではないが、強国が集う「死の組」では過去のW杯でも多くのドラマを生んできた。ここでは、出場国が32ヵ国となったフランスW杯(1998年)以降、大会をにぎわせた歴代の「死の組」についてまとめていく。
1998年フランスW杯:グループD
- ナイジェリア
- パラグアイ
- スペイン
- ブルガリア
出場国が従来の24ヵ国から32ヵ国へと増加したフランスW杯。強豪国が集中するグループが少なくなることも予想され、実際全体的に見れば均等なグループ割りとなった一方、1994年アフリカ王者のナイジェリア、無敵艦隊スペイン、1994年アメリカW杯ベスト4のブルガリアが「グループD」に集まった。
結果、初戦でスペインを下したナイジェリアが1位突破。PKやフリーキックのキッカーを務めることでも知られるGKホセ・ルイス・チラベルト擁するパラグアイが、1失点無敗の2位で突破を決めた。
当時のスペインはFWラウル・ゴンサレスやFWフェルナンド・モリエンテスらを擁し、優勝候補の一角として数えられていたこともあり、波乱の「死の組」と呼ばれた。
2002年日韓W杯:グループF
- スウェーデン
- イングランド
- アルゼンチン
- ナイジェリア
優勝経験を持つイングランドとアルゼンチン。当時ヘンリク・ラーションやフレデリク・ユングベリら強力な攻撃陣を擁していたスウェーデン。さらにアフリカネイションズカップで強さを証明(2000年準優勝、2002年3位)してきたナイジェリアと、魅力的な4チームが集った日韓W杯の「グループF」。
イングランドとアルゼンチンは、前回フランスW杯でも決勝トーナメント初戦で激突。当時まだ代表招集を受けて日も浅かったデビッド・ベッカムの退場劇や、フルタイムでも決着がつかずPK戦までもつれ込むという激闘を繰り広げた。注目が集まった2大会連続となる対戦の結果、イングランドが勝利(1-0)した。
グループ全体では全6試合中3試合が引き分けと、大混戦となる。アルゼンチンは勝ち点でスウェーデンとイングランドに及ばず、姿を消すこととなった。また日韓W杯では「グループA」でもフランスとウルグアイという優勝経験国が顔を合わせるなど、グループリーグの段階で注目度の高い対戦カードが多いことでも知られている。
2006年ドイツW杯:グループC
- アルゼンチン
- オランダ
- コートジボワール
- セルビア・モンテネグロ
ドイツW杯で注目されたのは「グループC」だ。2006年アフリカネイションズカップ準優勝の実績を引っ提げて初出場を果たしたコートジボワール。セルビア・モンテネグロは、開幕直前にモンテネグロが独立宣言を行いセルビアが承認したことで、実質セルビア・モンテネグロとして最初で最後の出場となるなど、話題性も多くあった。
強国アルゼンチンは、エルナン・クレスポ、ハビエル・サビオラ、カルロス・テベスといった強力な攻撃陣を中心にグループリーグは3試合8得点と爆発で1位突破。オランダもルート・ファン・ニステルローイやロビン・ファン・ペルシ―らやはり強力な攻撃陣の貢献が目覚ましく、アルゼンチンに引き分けての2位突破となった。
2010年南アフリカW杯:グループG
- ブラジル
- ポルトガル
- コートジボワール
- 北朝鮮
南アフリカW杯で死の組と呼ばれた「グループG」。結果的に突破を決める王国ブラジルと、クリスティアーノ・ロナウド擁するポルトガルは、当時FIFAランクがいずれも5位以内。加えて奇しくも2大会連続となる死の組入りとなったコートジボワールも、当時チェルシーで得点を量産していた屈指のストライカー、ディディエ・ドログバを擁していた。
北朝鮮は苦戦が予想されたが、初戦のブラジル戦では1-2(2010年6月15日)と善戦し一矢報いていた。結果、グループ順位はFIFAランク順通り、ブラジル1位、ポルトガル2位で突破となった。ポルトガルが北朝鮮戦(2010年6月21日)にて7得点挙げるなどとインパクトのある内容でもあった。
2014年ブラジルW杯:グループD
- コスタリカ
- ウルグアイ
- イタリア
- イングランド
イングランド、イタリア、ウルグアイと優勝経験のある3ヵ国が一堂に会し、コスタリカに同情するサッカーファンも多かったブラジルW杯の「グループD」。結果はまったく予想外のものとなり、大会を大いに盛り上げた。
なんとコスタリカが、守護神ケイロル・ナバスを中心にわずか1失点。2勝1分けの成績で堂々グループ1位通過を果たし、過去最高のベスト8まで駒を進めたのだった。
2位通過ウルグアイは、初戦でコスタリカ相手に先制しながらも3失点の逆転負け(2014年6月14日)を喫し、残る2ヵ国には勝利を収めていた。予想外の敗退となったイタリアとイングランドは、コスタリカ戦で取れなかった勝ち点が大きな痛手となってしまった。
2018年ロシアW杯:該当グループなし
直近のロシアW杯では、FIFAランクをもとにポットを分けたうえで抽選を行ったことで均等なグループ割り当てが実現し、死の組と呼ばれるグループは出なかった。
一方で、スペインとポルトガルの入った「グループB」、ベルギーとイングランドの入った「グループG」では、明らかな2強2弱という構図も生まれていた。