【FIFA ワールドカップ カタール 2022・グループH】ポルトガル2-0ウルグアイ(日本時間11月29日/ルサイル スタジアム)

ポルトガル代表の絶対的エース、クリスティアーノ・ロナウド、通称クリロナ。37歳。

W杯初戦のガーナ戦で自ら得たPKを決め、驚愕のW杯5大会連続ゴールを決めた。だがクリロナが連続でゴールを決めたのはこのW杯だけではない。2020EUROでも得点をあげ5大会連続得点を記録。W杯と合わせるとこれで10大会連続だ。

【映像】C・ロナウド破壊的な能力は未だ健在

クリロナはサッカー史上最多得点、代表最多得点、の記録保持者であり、3大リーグ(イングランド、スペイン、イタリア)すべてにおいて得点王、最優秀選手、を記録。各々の国でリーグ戦、カップ戦、スーペル戦の優勝経験を持つ世界唯一の選手である。世界最高峰のチャンピオンズリーグ得点王7度でさえ付録のように思える、まるで漫画の世界のような超一流のスーパースターだ。

考えて見てほしい。「クリロナはいつでも点を獲る」。これはポルトガル国民だけでなく、ヨーロッパ中、いや世界中が知っている事実である。そしてそれは対戦相手が一番よく知っている。

「クリロナを抑えろ!」それは、対戦する選手が、DF陣が、GKが、監督から一番最初に指示されるミッションのはずだ。それでも、いつでも、どんなにマークが激しくてもゴールを奪い続けている。どうしてなんだ?

ゴールゲッターには「お得意の形」というものがある。右利きの選手は、左カットインからゴール隅へ。左利きの選手はその逆パターン。デル・ピエーロやロッベンがそれだ。

ドリブル突破でゴールに向かうパターン。独特の嗅覚でゴール前の瞬間の隙を突くパターン。お得意のFKの位置を持つパターン。いろいろだ。ではクリロナはどんなパターンを持っているのか?

答えを先に言おう。全てだ。

プレースタイルは超がつくほどのオールマイティ。過去最高のゴール数を誇るセンターフォワードでありながら、引き技・シザース・股抜き・を入り交ぜたフェイントでタッチライン際のウイングプレーをも得意とする。

右左、どちらの足からも強烈なシュートをファーサイドにもニアサイドにも撃ち込み、相手DFの裏へすり抜ける駆け引きとスピードは未だ一級品である。

クリロナは、フリーキックこそが最も得意で、ボールに回転をかけて壁を巻くコースというよりも、壁上に無回転でボールを無回転で壁上に叩き上げるという感覚で、決定的なゴールを決める。

両足を広げて「俺は今、ここにいる!」と叫ぶゴールパフォーマンスは重要な試合になればなるほど、出現率が高い。

ヘディングは恐ろしく高い打点を誇る。「これは本当に人間なのか?」と疑うほどの跳躍力。頭2つほど相手DFから抜け出してインパクトの瞬間は強烈にゴールラインに叩きつける。

また、多くの画像や映像が証明しているように、クリロナはヘディング前に一瞬「空中で止まっている」ように見える。これは驚異的な背筋力で、跳躍後に自身の身体を反らせてボールを叩く反動力を増幅させると同時に、空中にいる時間をコンマ何秒でも長くするためだ。

ヘディングをするために、大地を蹴る脚の力。飛んだあとの自身の姿勢を維持する背筋力。それらが頭抜けているからこそのプレーだ。

クリロナがボールを撃つ瞬間、周りのDFは無力となる。敵を無人化させる男クリロナ。無人となればゴールを割るのは難しくない!だからいつでもクリロナはゴールを奪えるのだろう。

サッカーの勝利に最も直結するゴールを、最も高い確率で最も多く生み出す。完璧な選手、それがクリロナだ。カタールW杯はクリロナの最後のW杯になるかもしれない。それでもクリロナの破壊的な能力は未だ健在だ。いつでも我々に驚きを与えてくれる。クリロナのプレーをW杯で見られる。我々はそんな幸せをもう一度噛みしめるべきだ。

文:橘高唯史

(ABEMA/FIFA ワールドカップ カタール 2022)