取材対象者に対しては、なるべくフラットな姿勢を心掛けている。でも、カタールでの日々を通じて、ほんの少しだけ肩入れしたくなる選手がいる。

 町野修斗。負傷した中山選手に代わって追加招集された23歳のストライカーだ。

 今夏のE-1選手権で代表に初招集され、3ゴールを挙げて相馬選手とともに得点王に。9月のドイツ遠征のメンバーにも選出。日の丸が着実に似合うようになってきていた。

 それでも、カタールでの活動がスタートした当初は、代表の雰囲気にまだ慣れていないように見えた。笑顔も少ない。そんな若者を、長友選手がロンドの最中にいじり倒して、輪に入れようとしていたほどだ。

 それから約3週間、冒頭15分だけ公開された11月29日のトレーニング。町野選手はランニングで先頭を走っていた。しかも、大黒柱の長友選手や吉田選手を押しのけて、先頭のセンターポジションだ。表情もかなり気合が入っている。

 これまでを振り返ってみる。最初の頃は、たしかに馴染めていない印象があった。でも、及び腰になっていたわけでもなければ、世界の舞台に挑むチームの中で怖気づいていたわけでもない。
 
 毎日の練習で、一つひとつのプレーで常に真剣。決して手を抜かない。実直に、集中を切らさず、ボールを蹴る。真摯にサッカーと向き合う。本番前のカナダ戦を含めて、ここまで出場はない。でも、ふてくされるような素振りは皆無。いつしか笑顔も増えてきた。

 シュート練習では、鋭いショットを次々と決めていく。力強い軌道には、不屈の気持ちが込められているように思う。ネットを揺らす音が心地良い。

 町野修斗、スペイン戦を前に、スタンバイOK。隠し切れないギラギラ感。出場がないからメンタルが落ちている? いや、青天井で上がり続けている。やってくれそうなオーラを醸し出している。

 決勝トーナメント進出がかかる大一番に、出る気満々だ。凛々しすぎる顔つきを見ると、否が応でも期待したくなる。応援したくなる。忍者ポーズ、見たいです。

取材・文・写真●金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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