キャリアの晩年にJリーグのセレッソ大阪へ移籍するまで、ディエゴ・フォルランがクラブチームで10番を背負ったことは一度もない。マンチェスター・ユナイテッドでは21、ビジャレアルでは5、アトレティコ・マドリーでは7といった具合にだ。それはすなわち、組み立て、崩し、フィニッシュと攻撃のあらゆる局面に顔を出し、さらには前線のパートナーを選ばないオールラウンドな才能を裏付けてもいるだろう。
 
 ビジャレアル時代に生粋の10番ファン・ロマン・リケルメと息の合ったコンビを組み、ヨーロッパ・ゴールデンシューにも輝いた点取り屋でありながら、ウルグアイ代表で07年から長きにわたって背番号10を託されたのも、その万能性ゆえだろう。
 
 02年の日韓大会から3大会連続でワールドカップ出場を果たしたフォルランだが、そのハイライトは言うまでもなく10年の南アフリカ大会だ。開催国とのグループリーグ第2戦で、攻守をつなぐ潤滑油となりながら強烈なドライブシュートとPKで勝利をもたらすと、韓国とのラウンド・オブ16では先制点をアシスト。さらに準々決勝のガーナ戦ではFKで、敗れはしたがオランダとの準決勝でも豪快な左足でゴールをねじ込んでみせるのだ。

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 結局、ドイツとの3位決定戦で沈めた右足のダイレクトボレーも含め、魂を揺さぶるような5つのゴールをマークし、大会得点王に輝いたフォルラン。トーマス・ミュラーらと4人でタイトルを分け合ったとはいえ、気の利いたサポートで周りを活かし、キャプテンの重責も担いながら、古豪ウルグアイの4位躍進を支えた31歳のベテランストライカーは、MVPの栄誉にも浴している。
 
 14年のブラジル大会を最後に35歳で代表を去った万能の10番――。その息の長さと利他的なメンタリティーは、同じく35歳でカタール大会に挑んでいるルイス・スアレスとエディンソン・カバーニに、確実に受け継がれている。
 
文●吉田治良
 
※『ワールドサッカーダイジェスト』2022年11月17日号より転載