「嬉しいです。いやー……すごく嬉しいです」
 
 主将・吉田麻也の第一声には、喜びと安堵感が含まれていた。
 
 日本代表は現地時間12月1日、カタール・ワールドカップ(W杯)のグループステージ第3戦でスペイン代表と対戦した。
 
 吉田にとってはドイツとの初戦に続き、神経を擦り減らすような厳しい試合だっただろう。前半開始直後から相手にボールを支配され、一瞬たりとも気を抜けない展開。3CBの谷口彰悟、板倉滉とともに中央を締めて対応を試みたが、11分にクロスをアルバロ・モラタに頭で合わせられて失点を許す。このシーンについて吉田は「甘かったと思います」と反省を口にした。
 
 その後も押し込まれ続け、攻撃では決定機を作れないまま前半を終えたが、チームは下を向かなかったという。試合後、キャプテンは前半の戦いをこう振り返った。
 
「前半は前線の選手にほとんどチャンスがなく、ディフェンダーとして申し訳なかったですが、ドイツ戦の経験から、0-1なら後半にチャンスがあると全員が思えていました」
 
 その予感通り、後半開始早々に「チャンス」が訪れる。
 
 48分にハイプレスから伊東純也がボールを引っかけ、こぼれ球が後半頭から入った堂安律の元へ。得意のカットインから左足を振り抜くと、相手GKの手を弾きネットを揺らした。

 同点に追いついた勢いそのままに、51分に再び堂安が左サイドでボールを受けると、今度は縦に仕掛けて右足クロス。逆サイドに待っていた、こちらも途中出場の三笘薫が折り返し、田中碧が詰めて逆転に成功。その後は前半同様の堅実な守備で耐え切り、ベスト16進出を果たした。
 
 ドラマを起こした後半のプランを、吉田は次のように明かした。
 
「点を取りにいかなければいけない状況だったので、リスクをかけて後半の立ち上がりから5分から10分は前からプレスに行こうと決めて、勝ち越せた。そこからは長い間守備の時間でしたが、ブロックを作っていればドイツもスペインもなかなか崩せないのは試合前からわかっていたので、最後まで気を抜かず戦えました」
 
 歴史的な勝利を手にした要因については、「出ていない選手も含めて良い準備をできています。例えば今日先発した彰悟も、出番が少ない中で与えられたチャンスを生かせたのは準備の賜物だと思う。また、フォワードの選手も試合中にほとんどチャンスがないなかで労を惜しまず戦ってくれています。個人の結果だけをみれば後半から出た選手が結果を出していますが、前半からハードワークしてくれている先発の選手も含めて、今のチームの強みになっています」とコメント。チーム全員で勝ち取った白星だと強調した。。
 
 続けて、日本サッカーへの熱い想いも口にした。
 
「将来代表になる子供たちが、今日の試合を見たからプロを目ざしたということになれば、日本サッカー未来にもつながる。そういう意味でも、大きな勝利です。」
 
 喜びや反省など様々な気持ちを語った吉田だが、最も印象的なのは「何より、明日からまたみんなと一緒にサッカーができるのがすごく嬉しいです」というひと言。チームの充実感を象徴するようなキャプテンの言葉は、史上初のベスト8進出を期待させてくれる。
 
構成●サッカーダイジェスト編集部
 
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