スペイン代表戦の出場メンバー16選手を5段階査定
森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング24位)は、12月1日にカタール・ドーハのカリファ・スタジアムでカタール・ワールドカップ(W杯)グループE第3節のスペイン代表(同7位)戦を行い、第1節のドイツ代表戦(2-1)に続く大金星を挙げている。
初戦でW杯4度優勝歴のあるドイツに逆転勝利を収めた日本だが、第2節のコスタリカ代表戦では攻め込みながら相手を崩せず、終盤の失点で0-1と敗れた。自力でのグループリーグ突破へ、スペイン戦では勝利が求められた。
森保一監督は、今大会で初めて3-4-2-1で試合をスタートさせたなか、前半11分にFWアルバロ・モラタに先制点を献上。その後も2010年のW杯王者に圧倒的にボールを保持されたが、追加点は与えなかった。
79%のボール支配率をマークしたスペインに対し、日本は後半開始と同時に2人の交代カードを切ると、この采配が的中。堂安律、田中碧のゴールで2-1と逆転勝利し、グループ首位で決勝トーナメント進出を決めた。
リードを奪ってからも、全員でゴールを守り抜き、ドイツ戦に続く金星を挙げた森保ジャパン。ここでは各選手たちのパフォーマンスを振り返るべく、選手を5段階評価(最高が五つ星★★★★★)で査定する。(取材・文=FOOTBALL ZONE特派・河合 拓)
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<GK>
■権田修一(清水エスパルス)=★★★★★
スペインがプレスを掛けてくるなかで、バックパスを多く受けることもあったが、落ち着いたボール回しを見せた。フリーで至近距離から打たれたモラタのヘディングを防ぐのは困難。後半には枠内に飛んだシュートもしっかり抑え、弾くことなくキャッチングしたことで相手に2次攻撃を許さなかったことも良かった。
<DF>
■谷口彰悟(川崎フロンターレ)=★★★★☆
W杯初出場ながらも、堂々としたプレーぶり。序盤は少し相手に対してチェックに行けていなかったが、前半の途中から積極的な守備を見せて相手をしっかり潰した。フィードにも安定感があり、板倉が出場停止となる決勝トーナメント1回戦に向けても、チームにとっては好材料と言える。
■吉田麻也(シャルケ)=★★★☆☆
前半は守備では効果的なブロックもあったが、ロングフィードの判断と精度に欠け、チャンスを作れそうな場面でも機能しなかった。後半の立ち上がりにチームが逆転してからは、3バックのセンターで抜群の存在感を発揮。コスタリカ戦の反省も踏まえ、無理につなごうとし過ぎず明確なクリアを見せた。
■板倉 滉(ボルシアMG)=★★★☆☆
全体的には相手のマークにしっかりと付けていたものの、先制点の場面では、完全にモラタをフリーにしてしまう。最終ラインを少し崩すくらい、相手選手に対してチェックにいっていたが、その詰めが効果的だった。ラウンド16の出場停止は痛恨だが、負傷明けで3戦フル出場した疲れを回復させ、準々決勝に備えてもらいたい。
■長友佑都(FC東京)=★★★☆☆(→ハーフタイムOUT)
コスタリカ戦に続き、前半のみの出場。我慢が必要な45分を戦うなかで、しっかりと守備面での強さを見せてサイドを封殺しただけでなく、時間が経つにつれて効果的な攻撃参加も見せた。交代後もベンチで存在感を示し、チームの一体感を作る役割を最後まで果たした。
■冨安健洋(アーセナル)=★★★★★(←後半23分IN)
ジョルディ・アルバとアンス・ファティが投入され、スペインが左サイドからの攻撃を強めようとしたところに立ちはだかったのがこの男。右ウインバックに入り、相手の攻撃を完璧に封じた。堂安からの「休んでいた分、仕事して」という注文に、文句なしのプレーで応えてくれた。
伊東が前後半で存在感、鎌田は持ち味を発揮できず…
■守田英正(スポルティング)=★★★☆☆
前半は守備では相手の的を絞れず、ボールを持った時も判断が悪い場面が多くてピンチを招くことも。両翼が高い位置を取れるようになった後半は、つなぎ役としてチームメイトをサポート。試合の大部分で遠藤航がいなかったなか、最終ライン前のフィルターとして守備でも奮闘した。
■田中 碧(デュッセルドルフ)★★★★☆(→後半42分OUT)
「死んだふり作戦」の象徴のようなプレーぶり。前半はうしろに張り付き過ぎた印象で、なかなか前線からのプレッシングに連動できず。チャンスを作れそうな場面でも簡単にボールを失うなど、攻守に勇敢さに欠けていた。ところが後半に入ると、前への姿勢が一気に出始める。しっかりとゴール前に詰めて行き、殊勲の逆転ゴールを挙げた。
■伊東純也(スタッド・ランス)=★★★★☆
前後半でパフォーマンスが落ちなかった数少ない選手。相手に押し込まれながらも、サイドバックのように懸命な守備を見せ、日本のファーストシュートを放つなど、攻めるべきタイミングではしっかり前に出た。正確なボールコントロールで多少雑なパスも収め、チームの拠りどころになる。右ウイングバック、シャドーと異なるポジションでも機能し相手の脅威になった。
■鎌田大地(フランクフルト)=★★☆☆☆(→後半23分OUT)
前半5分に左サイドから中途半端なクリアをしてピンチを招くなど、コスタリカ戦と同様に精彩を欠く。先制点の場面でも相手のボール回しについていけず、完全にセサル・アスピリクエタをフリーにしてクロスを許した。何度か最終ラインの裏を取ろうとするが、これも簡単にオフサイドに引っかかり効果的ではなかった。久保を代えて、鎌田を残したことは疑問に感じた。
■久保建英(レアル・ソシエダ)=★★★☆☆(→ハーフタイムOUT)
ドイツ戦に続き、前半のみでベンチへ退く。この日はボールを収めたり、カウンターを仕掛けたりする場面も。ただ、求められる攻撃面での決定的な役割や、個で違いを出すところまではいかず。チームが攻撃的な姿勢を持つ後半のような流れのなかで、本来のプレーが見たいところ。
■前田大然(セルティック)=★★★☆☆(→後半17分OUT)
初戦のドイツ戦でのプレーに比べると、格段に相手に対してのプレッシングが機能。守備のスイッチを入れるだけでなく、自分でも取り切るようなプレーが何度か見られた。後半立ち上がり、点に絡んだ堂安、三笘に注目が集まるが、前田の鬼のようなプレッシングがスペインのミスを誘発し、日本を勢いづけたのは間違いない。
(小見出し)
後半頭からピッチに立った堂安&三笘が、反撃ムードを高める好パフォーマンス
■堂安 律(フライブルク)★★★★★(←ハーフタイムIN)
先発出場したコスタリカ戦では、なかなか思うようなプレーができなかったが、その鬱憤を晴らすかのような活躍ぶり。後半のスタートからシャドーに入りいきなりの大仕事。伊東が競ったこぼれ球から左足で強烈なシュートを叩き込み、試合を振り出しに戻す。このゴールによって、日本の反撃ムードを一気に強めた。
■三笘 薫(ブライトン)=★★★★★(←ハーフタイムIN)
タッチラインを割りそうなボールに対して、諦めることなく走り込み、信じがたい軌道のクロスで田中の決勝ゴールをアシスト。ドリブルで相手を翻弄する最大の持ち味は、それほど出す機会がなかったが、守備面での安定感は特筆もの。奪ってから前へ出る意識も失わず、あらためて最上級の切り札となることを証明した。
■浅野拓磨(ボーフム)=★★★☆☆(←後半17分IN)
前田と比較すると、プレッシングに行く回数と動くエリアに物足りなさを感じる。それでもカウンターを狙う意識は圧倒的に高く、ラインを上げるスペインのDFを牽制する役割を果たした。よりフィニッシュの精度が求められるだけに、三笘からの折り返しは、しっかりと枠に飛ばしてほしかった。
■遠藤 航(シュツットガルト)=※短時間のため採点なし(←後半42分IN)
前の試合から3日間、まったくチームに合流できなかったものの、試合終盤にクローザーとして投入される。出場時間が短かったものの、逃げ切りに貢献した。(FOOTBALL ZONE特派・河合 拓 / Taku Kawai)