前回のコスタリカ戦の時は「柳の下にドジョウは二匹いなかった」と言ったが、今回は「柳の下で鯛が釣れた」ような感じだ。見事というほかない勝利だった。

　勝因は最後まであきらめない気持ちを持ち続けたことだったと思うよ。２点目が象徴するように、ラインを割りそうなボールにもしっかり食らいついてチャンスを逃さない。そういう姿勢が決勝点に繋がったと思うし、ゴール前の危ないシーンでも身体を投げ出して最後まできっちりと守り切った。
 
　ドイツもそうだったが、スペインも前半の早い段階で先制点を取った。だから、日本を相手にいつでもゴールを奪えると安心してしまった部分があるんじゃないか。それが彼らの油断を生み、日本が付け入る隙となった。もちろん、日本が前半のうちに２点目を取られなかったことも大きかったと思う。３バックが全員警告をもらうという苦しい時間帯もあったが、なんとかそこを凌いだ。今大会はこの粘り強さが後半になって生きている。

　後半立ち上がりの反撃の鋭さは凄かったね。堂安の同点ミドルや複数人が関わった田中の身体ごと押し込んだゴールも良かったが、守備の時からスペインの選手に余裕を与えない迫力があった。パスサッカーを標榜する相手だが、そのパス回しも窮屈にさせるほど攻撃的なプレスが、特にゴールが生まれた時間帯は光っていた。

　終盤は権田のファインセーブもあったが、本当に良く集中していたよ。パスを繋がれてもある意味ボールを持たせているような余裕が感じられた。実際選手たちはどう感じていたのか分からないけどね(笑)。

　それにしても、日本がワールドカップでドイツやスペインに勝つなんて隔世の感があるよ。私らが現役の頃はもちろん思ってもみなかったことで、日本にプロが出来た時代から見ても格段に進歩した。とにかく一人ひとりの技術の高さが目につくが、それに加えてフィジカル的な強さも備わったことは間違いない。今でも欧米選手と比べれば身体のサイズは及ばないが、それでも普段からヨーロッパでやっている選手たちが自信をもって競り合いなどで渡り合っている。そういう部分は国内の選手にも刺激になっているんじゃないか。

　ここまでは見事な戦いぶりだった。ただ、日本の選手たちが言っていたように、勝負はここから先だ。これまでの日本サッカーの歴史を塗り替えるためにも、ベスト８進出を実現させてほしいね。

構成●サッカーダイジェストWeb