●ブラジル代表「控え組」に与えられたチャンス

FIFAワールドカップカタール2022グループG第3節、ブラジル代表対カメルーン代表が現地時間2日に行われ、0-1でブラジル代表は敗れている。すでに決勝トーナメント進出を決め、大幅にメンバーを入れ替えて臨んだこの試合で、ブラジル代表は負傷中のネイマールの代役を見つけることはできたのだろうか。(文:西部謙司)
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 すでにグループリーグ通過が決まっているブラジル代表は控え組を起用した。チーム内の序列を明確に決める伝統がある。つまり、この試合に先発していない選手が本来のレギュラーである。負傷者が出ているためにエデル・ミリトン、フレッジはスイス代表戦に続く先発となったが、基本的には控えメンバーだ。

 控え組にとっては、いつでもプレーする準備ができていることを示し、あわよくばレギュラーポジションを奪えるだけの実力をアピールする機会となった。とくに負傷で2試合連続の欠場となったネイマールのポジションが誰になるかは注目されるところだった。

 ネイマールの代役候補の一番手は、スイス代表戦で先発したルーカス・パケタとみられるが、その試合後半から交代出場したロドリゴにも期待がかかる。カメルーン代表戦ではガブリエウ・ジェズスと2トップを組んだ。ナンバー10のポジションだ。

 ネイマールを意識しているわけではないだろうが、ロドリゴはネイマールっぽいプレーをしていた。DFの近くまで引いてボールを預かり、ワンツーやフリックでブラジルらしいリズムを作りつつ、フィニッシュへ絡んでいく。ネイマールよりシンプルなプレースタイルとはいえ、万能型のパケタよりもブラジルの10番らしさは示していた。

 ただ、22分に自らもらったFKは壁に当ててしまい得点ならず。スルーパスやショートパスで相手のDFを圧縮させ、隙があればスムーズな加速ですり抜けるなど、良いプレーはみせていた。しかしこれといった結果は残せず、55分にフラメンゴのベテランであるエベルトン・リベイロと交代となった。

●「ネイマールの代役」答えは出た?

 パケタ、ロドリゴに次ぐポスト・ネイマールのエベルトン・リベイロは落ち着いたボール捌きだったが、ネイマールの代役としてインパクト不足は否めず。1962年チリ大会ではペレがグループリーグで負傷、代役のアマリルドが活躍して優勝した。

 ネイマールがいつ復帰できるかはわからないが、もし長引くようなら“アマリルド”が必要になる。ロドリゴが大活躍すれば序列の変更はあったかもしれないが、決定的な答えはないままというのが現状かもしれない。

 GKエデルソンはいつでもアリソンの代わりにゴールを守れる実力を示した。CB起用のミリトンは負傷中のダニーロの回復が間に合わなければ、スイス代表戦と同じくSBに起用されるだろう。気になるのは左SBのアレックス・テレスが負傷してしまったことだ。序列一番手のアレックス・サンドロも負傷しているので、CBのレギュラーであるマルキーニョスが急遽出場したが、左SB不在は頭が痛い。

 ボランチはフレッジとファビーニョのコンビでスタート。55分にフレッジを休ませてブルーノ・ギマラエスが出場している。しかし、このポジションでプレーした3人ともミスが散見され、ブルーノ・ギマラエスは終盤の決定機を2つ続けて逃してしまい空回りの印象。本来のカゼミーロ、パケタのペアを上回るものは示せなかった。パケタが「10番」なら、フレッジが入るという序列はおそらく変わらなさそうだ。

 序列を覆す可能性が最も高いのはFWだった。アントニー、ジェズス、ガブリエウ・マルティネッリはハフィーニャ、リシャルリソン、ヴィニシウス・ジュニオールに勝るとも劣らない能力がある。3人とも意欲的にプレーした。

 しかし、アントニーは対面のヌフ・トロに止められてしまうケースが多く、シュート連発のマルティネッリもGKデビス・エパシの美技に阻まれた。ジェズスも球際の強さはみせたがゴールはあげられず。

 結局のところ、控え組が起用されたこの試合で序列を覆すほどの結果を出せた選手はいなかった。それが圧倒的に押し込みながら敗れるという試合結果にもつながっていた。

●カメルーン代表が掴んだ歴史的勝利

 カメルーン代表は4-4-2の守備ブロックで粘り強く守りながら、ときおり効果的な攻め込みもみせている。数々のシュートもGKエパシが防ぎまくった。

 強烈なフィジカルで存在感を示したアンドレ・フランク・ザンボ・アンギサは、ビルドアップではCBの間へ下りて起点となっていた。後半途中出場のオリビエ・エンチャムと組んで組み立てをリード。この2人を経由してから右サイドのジェローム・エンゴムへ展開し、エンゴムのクロスボールをエース、バンサン・アブバカルがヘディングで決めて決勝点を奪った。

 2人のCBの間へポジションをとったアブバカルへロングクロスがピタリと命中、ポスト際へ収めるヘディングの精度も素晴らしかった。喜び爆発のアブバカルはユニフォームを脱いでしまい2枚目のイエローカードで退場になってしまったが、残り時間をしのいで歴史的なブラジル代表戦から勝利をあげた。

 勝利したカメルーン代表だったが、スイス代表がセルビア代表に勝ったためにグループリーグ敗退。主力を温存したブラジル代表も負傷者が増えただけで得るものは少なく、どちらにとってもほろ苦い結末となった。

(文:西部謙司)

【決勝トーナメント表】FIFAワールドカップカタール2022<組合せ>
【グループリーグ順位表】FIFAワールドカップカタール2022<組合せ>
【全試合日程・結果・放送予定】サッカーFIFAワールドカップカタール2022