グループリーグ出場全22選手と監督のパフォーマンスを査定

 森保一監督率いる日本代表は、カタール・ワールドカップ(W杯)のグループリーグを首位で突破し、2大会連続となる決勝トーナメント進出を果たした。優勝経験国のドイツ代表、スペイン代表を下すサプライズを起こした森保ジャパンの戦いぶりを振り返るべく、ここまで出場した全22選手と監督のパフォーマンスを査定する。(取材・文=FOOTBALL ZONE特派・河合 拓)

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【評価内容】
S=抜群の出来
A=上出来
B=まずまずの出来
C=可もなく不可もなく
D=期待外れ

【グループリーグ結果/1位 2勝1敗】
第1戦 ドイツ(○2-1) 得点者:堂安律、浅野拓磨
第2戦 コスタリカ(●0-1) 得点者:――
第3戦 スペイン(○2-1) 得点者:堂安律、田中碧

【グループEの順位/★=グループ突破】
1位 日本(勝ち点6/得失点差+1)★
2位 スペイン(勝ち点4/得失点差+6)★
3位 ドイツ(勝ち点4/得失点差+1)
4位 コスタリカ (勝ち点3/得失点差-8)

■GK
権田修一 (清水エスパルス/3試合出場)【評価:A】

(出場なし)
川島永嗣(RCストラスブール)、シュミット・ダニエル(シント=トロイデン)

 3試合を通じて、権田修一が日本のゴールを守り続けている。ドイツ戦ではチーム全体が奮闘しているなかで、PKを与えてしまい1失点。コスタリカ戦ではシュートにタイミングが合わずに唯一の枠内シュートで1失点と、ミスから失点に絡んだ。スペイン戦のアルバロ・モラタのヘディング弾も、ハイボールに強いGKであれば飛び出せていたかもしれない。このように失点シーンでの対応のミスを挙げることはできるものの、ドイツ戦、スペイン戦で権田の好セーブがなければ、日本はすでにカタールを離れることになっていただろう。特にドイツ戦では、セルフジャッジで守備陣が棒立ちとなったなかで、獅子奮迅のセービングを見せてゴールを死守。スペイン戦では相手がプレッシングをかけにくるなかでも、落ち着いたボール回しを見せ、後方における数的優位を感じさせた。この先、さらに厳しくなる戦いのなかで、S評価を付けられるような活躍を期待したい。

■DF
長友佑都(FC東京/3試合出場0得点)【評価:A】
吉田麻也(シャルケ/3試合出場0得点)【評価:A】
酒井宏樹(浦和レッズ/1試合出場0得点)【評価:B】
谷口彰悟(川崎フロンターレ/1試合出場0得点)【評価:S】
山根視来(川崎フロンターレ/1試合出場0得点)【評価:B】
板倉 滉(ボルシアMG/3試合出場0得点)【評価:S】
冨安健洋(アーセナル/2試合出場0得点)【評価:A】
伊藤洋輝(シュツットガルト/1試合出場0得点)【評価:D】

 左膝靱帯の損傷から回復した板倉滉は、負傷した冨安健洋が務めるはずであった吉田麻也のパートナー役となり、センターバックで大きな活躍を見せた。スペイン戦ではモラタのマークを外してしまい、失点に関与したものの、全体的なパフォーマンスは非常に高く、期待以上の働きぶりだと言える。同様に最終ラインを支える吉田、コンディションによりピッチに立つ時間が制限されるものの、抜群の安心感を与えてくれる冨安をA評価とした。また、スペイン戦で初出場となった谷口彰悟も十分な働きを見せてチームに貢献。しっかりと準備を怠らずに出場機会のない選手の模範となるプレーを見せられたことを高く評価したい。ピッチ外での貢献も大きい長友佑都は、ドイツ、スペインの前半も安定したプレーを見せた。伊藤洋輝は敗れたコスタリカ戦での印象が悪くD評価としたが、この先の戦いでの挽回に期待したい。

逆転劇に貢献の堂安&三笘は高評価、鎌田は今後の奮起に期待

■MF
遠藤 航(シュツットガルト/3 試合出場0得点)【評価:A】
伊東純也(スタッド・ランス/3試合出場0得点)【評価:A】
南野拓実(ASモナコ/2試合出場0得点)【評価:B】
守田英正(スポルティング/2試合出場0得点)【評価:B】
鎌田大地(フランクフルト/3試合出場0得点)【評価:D】
相馬勇紀(名古屋グランパス/1試合出場0得点)【評価:C】
三笘 薫(ブライトン/3試合出場0得点)【評価:S】
堂安 律(フライブルク/3試合出場2得点)【評価:S】
田中 碧(デュッセルドルフ/2試合出場1得点)【評価:A】
久保建英(レアル・ソシエダ/2試合出場0得点)【評価:C】

(出場なし)
柴崎 岳(レガネス)

 ドイツ戦、スペイン戦で後半に投入されて、チームの逆転を呼び込む働きをした堂安律と三笘薫の2人は、最高評価以外ないだろう。特に堂安は2試合ともに同点ゴールを決める活躍ぶりで、大会前に宣言していた「ヒーローになる」という言葉を実践している。主力としての活躍が期待された遠藤航や伊東純也も、それぞれの持ち味を発揮しながら、チームにとって不可欠な存在であることを示している。大会直前まで負傷していた田中碧は、まだ本調子じゃないと感じさせるプレーもあるが、スペイン戦では貴重な決勝ゴールを記録して結果を残したことを高く評価する。チームとしての戦いぶりに課題を覗かせたコスタリカ戦のみの出場となっている相馬勇紀、前半の耐える時間でしかピッチに立てていない久保建英は、与えられたタスクはしっかりとこなしている。大会前から主軸として大きく期待されたものの試合を追うごとにパフォーマンスが下がっている鎌田大地は、今後の奮起に期待したい。

■FW
浅野拓磨(ボーフム/3試合出場1得点)【評価:S】
前田大然(セルティック/2試合出場0得点)【評価:A】
上田綺世(セルクル・ブルージュ/1試合出場0得点)【評価:D】

(出場なし)
町野修斗(湘南ベルマーレ)

 グループリーグでは、3選手が起用された。最も高い評価はFW陣で唯一、ゴールも決めている浅野拓磨になる。右膝内側側副靱帯の損傷により大会出場も危ぶまれたが、初戦のドイツ戦で途中出場すると、スピードを生かしてシュートに持ち込んだ。名手マヌエル・ノイアーの守るゴールを割り、チームに勝利をもたらして勢いに乗せた。一方、前田大然はW杯という舞台の緊張や背後の守備が固まらなかった影響からか、初戦のドイツ戦では持ち味のスピードを生かしたプレスを十分にかけられなかった反面、スペイン戦では同点ゴールシーンの起点となったプレーに象徴されるように、前線からのチェイシングで存在感を発揮した。ここまでコスタリカ戦の前半のみの出場となっている上田綺世は、完全に引いた相手に何もできず、期待外れと言わざるを得ない。

優勝候補ドイツ、スペイン撃破で“株を上げた”指揮官

■監督
森保 一【評価:S】

 日本が日本がこれまで出場した過去6大会のW杯と比較しても、優勝経験のあるドイツ、スペインと同組になった今大会は、最も厳しい組み合わせであったことは間違いない。理想を言えばコスタリカ戦でもターンオーバーを行わずに明確に勝利を目指して、その時点でW杯出場を決め、スペイン戦は主力を温存できれば最高だったが、そんな要求をしたくなくなるくらいの結果を出している。このグループを最終的に首位通過して世界を驚かせたのだから、S評価以外は付けようがない。自分を犠牲にすることを厭わずにチームのために戦える26人の選手を選出し、短い準備期間のなかで、どちらかというとこれまでは守備時の逃げ切りのためのオプションだった3-4-2-1を攻撃的に使ってドイツ、スペインを撃破したことで国民からの支持を取り戻した。この先の戦いでは、日本の戦いもより緻密に分析されてくる。その時に、さらなる幅を見せられるか。(FOOTBALL ZONE特派・河合 拓 / Taku Kawai)