【識者コラム】グループリーグの戦いぶりを総括、予想外の結果
森保一監督率いる日本代表は、カタール・ワールドカップ(W杯)のグループリーグで2勝1敗の成績を収め、2大会連続の決勝トーナメント進出を果たした。かつてアジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ(W杯)を6大会連続で取材した英国人記者のマイケル・チャーチ氏が、ここまでの日本の戦いぶりを総括。優勝候補のドイツ代表、スペイン代表を撃破したパフォーマンスを受け、ベスト16のクロアチア代表戦も「勝てる可能性はある」と評価している。
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カタール・ワールドカップ(W杯)の日本代表は浮き沈みが激しく、まさにジェットコースターのようだ。試合が進むごとに、あるいは1分1秒ごとに目まぐるしく感情が変化するエモーショナルな旅が続いている。
大会前は日本がノックアウトラウンドに進出するチャンスはないと予想されていた。W杯優勝経験のあるドイツ代表とスペイン代表がいるグループでは、コスタリカ代表を上回る3位がサムライブルーに期待できる最高の結果だった。
夢だったはずのグループリーグ突破の可能性に火が付いたのは初戦のドイツ戦だった。森保監督はベンチメンバーを完璧に使いこなし、後半8分間の2ゴールでハンジ・フリックのチームを撃退。退屈な前半戦から展開は一変した。
第2戦のコスタリカ戦では日本がW杯史上でもっとも無能、そして全く予想どおりのパフォーマンスを見せ、どん底に突き落とされたような気持ちだった。
森保監督が抱える選手たちであれば、もっといい結果を残せるはずだった。日本が勇気と決意を示していれば、1試合残してノックアウトラウンド進出を決められる可能性もあったのだ。希望はまだ消えてはいなかったが、そのまま出口へ向かうことになろうとしていた。
グループリーグ最終戦でアルバロ・モラタがスペインに先制点をもたらした時、カリファ国際競技場の高いスタンドからも日本にとっての出口がはっきりと見えた。ルイス・エンリケ監督が率いるチームに対し、わずか11分でビハインドを背負ったのだから、不安は拭えるはずがない
しかし、森保ジャパンの選手たちのレジリエンス(回復力)は過小評価されていたのかもしれない。彼らは、多くの人が思っているよりもはるかに強靭なメンタルと肉体を持っているのだろう。逆境に立ち向かう決意と意欲が、スペイン戦の最高の勝利を導いた。
スペイン戦決勝点のビルドアップは、カタールでの森保ジャパンを象徴
スペインは日本がアジアの格下相手に対してよく見せるようなやり方で、巧みにボールを支配していた。それも森保ジャパンよりも優れたやり方で。コスタリカはそのスペインの才能を十分に味わったことだろう。
しかし、日本は序盤に失点しながら、その嵐を切り抜けた。そしてその試合だけでなく、グループ全体をひっくり返すような得点を生み出した。堂安律の同点弾は力強く、田中碧が決めたシュートは正確さと意思の強さ感じさせるものだった。
決勝点のビルドアップは、カタールでの森保ジャパンを象徴するものだった。堂安が三笘薫に向かって放った角度のあるパスは強過ぎたが、三笘は全身の筋肉を駆使してボールをゴール前に折り返した。そこに彼の決して諦めない姿勢が表れた。それはドイツ戦でもスペイン戦でも実を結んだのだ。
日本は期待と不安が入り混じった気持ちで、クロアチア代表との試合を待っている。ヨーロッパ勢のクオリティーを考えれば、勝てる可能性はある。
森保ジャパンの激しい戦術変更により、クロアチアのズラトコ・ダリッチ監督は日本がどのようなプレーを見せるのか確信が持てずにいるだろう。クロアチアの選手が自分たちのポジショニングに自信を持てないような、絶え間ない変化が起きないことを願っているはずだ。
スペイン戦とドイツ戦の勝利はこれからも日本にとって歴史的な日として記憶されるだろう。そのなかでコスタリカ戦の敗戦が異常なものとして見られるかもしれないが、森保監督が月曜日に再び勝利を収めて歴史を作ることができれば、その印象も薄れるだろう。(マイケル・チャーチ/Michael Church)