[カタール・ワールドカップ ラウンド16]日本1(1PK3)1 クロアチア/12月5日/アル・ジャヌーブ・スタジアム

 カタール・ワールドカップのラウンド16、E組を首位突破した日本は、F組2位のクロアチアと対戦。延長戦を含めて120分では1-1だったが、最後はPK戦の末に1-3で敗れ、ベスト16で大会を去ることになった。

 4-3-3を敷くクロアチアに対し、日本はシステムを4-2-3-1に戻して形をかみ合わせて戦う予想もあったが、グループステージで勝利したスペイン戦の流れを継ぎ、再び3バックの3-4-2-1で試合に臨んだ。

 セットした守備時は両ウイングバックが下がって5-4-1となるため、4-3-3を敷くクロアチアとのマークはかみ合わない。日本は人合わせではなく、ブロックの網を張り、待ち構えるやり方を選んだ。

 これはほぼ機能していた。中盤のモドリッチやコバチッチが飛び出しを狙うスペースは、あらかじめ谷口彰悟と冨安健洋が抑えておく。かみ合わせ的にはアンカーのブロゾビッチが浮きやすく、ここに入ったボールをどう制限するかが課題だが、日本は上手く対応した。
 
 1トップの前田大然が背中でブロゾビッチを消しながら相手のCBへプレッシャーをかけ、それに合わせて反対側から遠藤航や守田英正が前へ出て、ブロゾビッチのマークを受け取る。日本はスペイン戦同様に、1トップとダブルボランチで形成される三角形の中に相手のアンカーを置き、受け渡しながら守備を行なった。

 基本的に相手のCBにプレッシャーがかからないので、自陣に下がらざるを得ないが、守備は安定し、クロアチアに与えたチャンスは少なかった。

 唯一、日本の左サイドでクラマリッチと対峙した長友佑都の背後を取り、SBのユラノビッチやモドリッチが飛び出してくる形は、サイドが2対3の数的不利に陥る怖さがあった。しかし、日本は守田のカバーリングも利き、ピンチには至らず。

 また日本は5-4-1で終始引きっぱなしではなく、相手ゴールキック時など機会があれば、3バックが相手の3トップと同数になるリスクを受け入れ、ハイプレスに行った。8分にGKリバコビッチのロングキックから、冨安が倒されてペリシッチにシュートを打たれた場面など、ヒヤリとする瞬間はあったが、全体的にはよく抑えていた。

 すると前半終了間際の43分、日本は右CKから先制に成功する。

 堂安律がショートコーナーで始めると、鎌田大地、伊東純也とのパス交換から、再び堂安が左足でクロス。CKをゾーンで守るクロアチアに対しては、真横から正直にクロスを入れても、そびえ立つ壁に跳ね返されるだけ。そこで日本は一旦ショートで始め、相手のラインアップを誘導し、壁を動かしてからGKの間にスペースを空けた。そこへ堂安が左足でゴールへ向かって曲がるクロスを蹴り、味方を飛び込ませ、こぼれ球を前田が押し込んだ。

「セットプレーに工夫がない」と散々言われた森保ジャパンだが、この土壇場で相手の特長を逆手に取ったパターンを披露し、先制ゴールを挙げた。前半は日本ペースと言っていい内容だった。
 
 しかし後半からは、クロアチアがその対応力を見せ始める。

 日本の5-4-1の網の中には、前半のようには入って来なくなった。アンカーもインサイドハーフも外へ出て、サイドで数的優位を作ってボールを回し、じわじわと押し上げてから、突破せず、そのまま逆サイドへハイクロス。放り込みパターンを多用するようになった。

 すると55分、日本は伊東の箇所でペリシッチにヘディングシュートを打たれ、同点ゴールを許す。ウイングバックに攻撃的な選手を置いた場合、どうしても隙になりやすいエリアであり、それを狡猾なクロアチアに突かれてしまった。

 またクロアチアは守備もハイプレスに切り替え、日本のゴールキック時に前線からマークを当てはめてきた。あまり話題になっていなかったが、日本はスペイン戦ではポゼッション率20パーセントの割に、ロングキックを簡単に蹴らず、積極的なビルドアップを試みていた。クロアチア戦も、そのチャレンジの流れを継ぎ、前半はよくボールを動かせていた。

 ところが、そうやって日本のリズムを作っていたポゼッションが、後半のクロアチアのハイプレス転換によって崩され、徐々に日本はロングキックへ傾いた。ピッチ状態が悪かったこと、後方でミスが出てショートカウンターを食らいかけたことなど、複数の要因があり、以降はGKからつなぐのをやめた。
 
 ただし、この状況でも日本は浅野拓磨を投入し、ロングボールで相手を裏返そうとしていた。狙いは徹底して右サイド。浅野が走り、途中出場の酒井宏樹もターゲットになったが、浅野は裏抜けがグバルディオルに全く通じず、酒井の競り合いはファウルを取られた。せめて、浅野が早めにポストプレーに切り替えてくれれば良かったが、少し愚直すぎた。

 プランAに続き、このプランBが詰まったのは痛かった。三笘薫の単独ドリブルからのシュートなど、2-1になってもおかしくない機会はあったが、それ以上のチャンスを増やすのも可能だったはず。

 結果、日本はPK戦に持ち込まれてしまった。遠藤など多くの選手は、「持ち込まれた」という印象を持っていた。体調不良により、この試合をベンチ外で観戦していた久保建英も、試合翌日に率直な印象を語っている。

「クロアチアは試合巧者というより、それ以外にできることがなく、それをやっていただけ。でも日本は疲労があって、それを押し返せずに、PK戦に持ち込まれました。持ち込まれた、という感覚で見ていました」

 逆にPK戦に持ち込んだクロアチアは、入念にPKの準備をしており、GKリバコビッチがスーパーセーブを連続。日本は敗れてしまった。

 PK戦の技術向上、相手のハイプレス転換に対するビルドアップの駆け引き、ロングボールを使った際のプレー精度など、改善できるポイントは山ほどある。おそらく、それらすべてを改善させた先はベスト8ではなく、ベスト8「以上」。4年後に向け、日本代表の活動はすぐに始まる。

取材・文●清水英斗(サッカーライター)

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