ベスト8が出揃ったカタール・ワールドカップ。ここからさらに熾烈なバトルが予想されるが、最後に黄金のトロフィーを掲げるのはどの国か。スポーツライターの加部究氏に優勝予想を訊いた。

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 ラウンド(R)16では、唯一日本だけがグループステージ(GS)で首位通過ながら敗れ、結局E組は真っ先に全滅した。3連勝が皆無だったのは、2戦目で突破を決めた国が過密日程を考慮しターンオーバーを選択したからで、フランス、ブラジル、ポルトガルの3か国はGS最終戦を落としたが、休養十分のR16は快勝した。そしておそらく最終的にカップを掲げるチームは、この3か国の中から生まれるはずである。

 まず最も確実に決勝戦への道が約束されそうなのがブラジルだ。もはやサッカーの王国は、奔放にプレーを楽しむだけではなく、全員が豊富な運動量と迅速な守備へのアプローチを誇り随一の安定性を誇る。来日した際の日本戦もそうだったが、今大会でもスイスやセルビアには1本も枠内シュートを許さず、R16の韓国戦では6本を許し1失点を記録したが、すでに4ゴールを決めてリラックスムードに入ってからだった。
 
 歴代の伝説的なチームに比べれば爆発力や娯楽性では劣るが、滅多にチャンスさえ作らせない守備力は出色で隙がない。もし決勝戦までに障害になるとすれば、最後の大会に賭けるリオネル・メッシの一撃くらいだろう。

 一方フランスとポルトガルは、現在最も育成力に長けた人材の宝庫だ。フランスは、前回優勝の立役者ポール・ポグバやエンゴロ・カンテ、さらにはチャンピオンズリーグでレアル・マドリーの優勝を牽引したカリム・ベンゼマまでも失いながら、攻守両面で一切陰りがない。大会に入ってもリュカ・エルナンデズを故障で欠くことになったが、即座に弟のテオ・エルナンデズが穴を埋めた。現状で非常事態に直面するとすれば、ケタ外れのスピードと創造性を備え、すでに5ゴールのキリアン・エムバペが故障した場合だけだ。

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 ただしフランスの決勝までの階段は、ブラジルに比べると遥かに厳しい。準々決勝ではイングランド、それを乗り越えても、おそらくポルトガルが立ちはだかる。どちらもここまで4試合で最多の12ゴールと上げ潮ムード。イングランドは、R16でセネガルの驚異的なハイプレスに苦戦を強いられかけたが、途中から試合巧者ぶりを発揮してしっかりと3ゴールを奪い突き放した。

 一方19年にネーションズリーグを制したポルトガルは、フェルナンド・サントス監督がR16でクリスティアーノ・ロナウドを控えに回し、大胆な抜擢に踏み切った21歳のゴンサロ・ラモスがハットトリックの大活躍。堅守のスイスを6-1で一蹴し弾みをつけている。C・ロナウドが火種にならないかが懸念材料だが、もともとタレントは豊富なので、チームのコンディションとムードが良好ならフランスを叩くだけの潜在能力は秘めている。
 
 だが逆にフランスは、これらの難敵を連破して再び決勝戦のピッチに登場した場合は、ブラジルが60年前に達成した大会連覇に肩を並べる可能性が強い。総合力で甲乙つけ難いフランスとブラジルだが、より膠着状況を破壊する光景が浮かぶのは前者だ。

文●加部究(スポーツライター)