パスは回れどフィニッシュへ持ち込めない
グループステージ初戦でコスタリカ代表を7-0で粉砕した際には大絶賛されたが、結局スペイン代表はこの1勝だけでFIFAワールドカップ・カタール大会を終えることになった。
グループステージ最終節では日本に敗れ、ベスト16ではモロッコ代表にPK戦の末敗れた。コスタリカ戦で見せたゴールラッシュはピタリと止まってしまい、日本とモロッコの守備陣を最後まで崩し切ることが出来なかった印象だ。
足りないのは、やはりダビド・ビジャのような点取り屋だろう。スペインが2010年のFIFAワールドカップ・南アフリカ大会を制した時、前線にはスペイン代表歴代最多得点記録の持ち主ビジャがいてくれた。もちろんシャビ、イニエスタ、ブスケッツ、シャビ・アロンソら中盤のクオリティも今より豪華ではあったが、やはりフィニッシュをしっかりと決めてくれるビジャの存在は大きい。今のチームにビジャ級の点取り屋は存在せず、ボールを回しても決め切る選手が欠けている。
ポゼッション率を高く保つことは決して悪いことではない。現代はポゼッション率にこだわらなくなってきているが、ボールを支配して自分たちのリズムを刻めるのはポジティブな部分も多い。
だが、スペインの場合はフィニッシュへと持ち込む引き出しが少ない。ビジャ不足もそうだが、敵陣でボールを保持する割にミドルシュートの数が少ないのだ。
ベスト16の戦いが終了した時点で、スペインの今大会平均ポゼッション率は驚異の76.8%だ。これは大会No.1の数字で、2位アルゼンチン代表とは大きな差がある(65.3%)。
しかし、シュート数は43本。これはドイツ、スペイン相手に守る時間も長かった日本代表ともほとんど差がない(40本)。そのうちスペインがエリア外から放ったシュート本数は16本となっており、引いた相手を崩す際には中盤からのミドルシュートも有効な武器になり得る。その武器がブスケッツ、ペドリ、ガビの中盤トリオにはなく、結果としてスペインは攻め手を欠いてしまった。
振り返ると、優勝した2010年大会以降、スペインはワールドカップで11戦3勝とかなり苦戦している。ポゼッションを高めるのは悪いことではないが、どう得点へ繋げていくのか自分たちのスタイルを見直す必要はあるだろう。シャビやビジャがいた時代に比べると、同じポゼッションでも相手チームはスペインの攻撃をそこまで恐れていない。4年後の巻き返しへスペインは自分たちを見つめ直す時間となりそうだ(データは『WhoScored』より)。