ベスト8が出揃ったカタール・ワールドカップ。4強入りをかけた熱きバトルに世界中のフットボールファンが注目している。本稿では、現地時間12月9日に行なわれる準々決勝のオランダ対アルゼンチンを展望する。
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決勝の会場であるルサイル・スタジアムで行なわれる一戦。過去の対戦をトータルすると、オランダの4勝1分1敗と圧倒的だが、2014年ブラジル大会では準決勝で対峙し、PK戦をアルゼンチンが制する形で、ファイナルに進出した因縁がある。
当時の指揮官でもあったルイス・ファン・ハール監督が率いるオランダが、アルゼンチンの強力な攻撃をいかに抑えて、少ないチャンスをモノにできるかが鍵になりそうだ。
オランダには絶対的なFWがいないのが不安要素ではあったが、二列目も兼ねる193センチのFWコディ・ガクポがここまで3得点、10番を背負うメンフィス・デパイもラウンド16のアメリカ戦で、ついにゴールを決めた。
フィルジル・ファン・ダイクを中心に、自陣では5バックになる手堅い戦術ながら、左CBのネイサン・アケーからのフィードや、MFフレンキー・デ・ヨングの展開からタイミングよく右サイドのデンゼル・ドゥムフリースなどが攻め上がる。
おそらくアルゼンチンが60%ぐらいボールを握る側になるが、3得点のリオネル・メッシと2得点のフリアン・アルバレスという“新旧エース”を擁するアルゼンチンに対しても、そうそう崩されることはないはず。
中盤の底でデ・ヨングの相棒を努めるマルテン・デ・ローンは決して派手さのある選手ではないが、サイドからインに入ってくるアレクシス・マク・アリステルや手前に落ちてくるメッシを監視する役割が適している。
アルゼンチンは基本的に、右サイドのアンヘル・ディ・マリアが実質的にウイングで、左サイドのマク・アリステルがボランチのエンソ・フェルナンデスやロドリゴ・デ・パウルと近い距離感を作るなど、前目のポジションはかなり可変性がある。
左SBのマルコス・アクーニャも変速型の左ウイングと見ていい。ファン・ハール監督はそうした状況も想定して、ボランチやCB、さらに左右ウイングバックに指示を授けるだろう。
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オランダは堅実に相手の出どころを消しながら、裏返しのカウンターに加えて、時間帯によって迫力ある攻勢をかけることがある。アルゼンチンは8強まで勝ち上がった強豪国の中で見ると、若干ながらCBの対応に不安がある。
おそらくクリスティアン・ロメロとニコラス・オタメンディのコンビになるが、ガクポなどのオフ・ザ・ボールで背後を狙ってくる動き出しに対応し切れるかどうか。
0-0で終盤になると、ゲーム展開としてはオランダのペースにも思えるが、アルゼンチンにはラウタロ・マルティネスなどがいる。怪我明けのパウロ・ディバラは未出場だが、リオネル・スカローニ監督もそれなりにカードを切りやすい陣容だ。
一方のオランダはデパイをスタメンで使うと、勝負を決めに行くカードが不足するところもある。197センチのヴォウト・ヴェフホルストというハイタワーを備えるが、基本はアルゼンチンのほうが決め手となるタレントが揃うなかで、百戦錬磨のファン・ハール監督のプランニングにも注目だ。
文●河治良幸