膠着状態を破壊する強烈なメッシの個性

MATCH 57 準々決勝 
2022年12月9日22:00キックオフ(会場:ルサイル・アイコニック・スタジアム)
オランダ 2-2(PK 3-4) アルゼンチン


ブラジル衝撃の敗戦で始まったFIFAワールドカップ・カタール大会ベスト8の戦い。オランダ代表に挑むのは、南米唯一のチームとなったアルゼンチンだ。

オランダは大会を通じて3バックを使用してきたが、この日はアルゼンチンも3バックを選択。守備時には5バックとなるため、どちらも最終ラインが重くなる。オープンな展開とはならず、どちらも決定機を作れないまま時間が過ぎていった。

両チームに違いがあるとするならば、やはりアルゼンチンのFWリオネル・メッシだろう。膠着状態を崩す強烈な武器の1つがメッシであり、そのメッシが35分に魅せる。

得意のドリブルでピッチ中央へと侵入すると、右サイドから中へ切り込んできたウイングバックのナウエル・モリーナへスルーパス。メッシにしか出せないであろう絶妙なコースを通したパスがモリーナへ繋がり、GKとの1対1を冷静にモリーナが制してアルゼンチンが先制に成功する。

[W杯マッチ58]イエロー15枚が乱れ飛ぶ大熱戦 PK戦を制したアルゼンチン、悲願の優勝狙うメッシの旅は続く
土壇場で追いついたオランダ驚異の粘り photo/Getty Images

オランダの高さ活かしたパワープレイが試合を変える

後半も展開は変わらない。オランダは攻撃的なカードを切るが、リオネル・スカローニ率いるアルゼンチンは守備も堅い。リードを守ることに慣れており、リサンドロ・マルティネス、クリスティアン・ロメロ、ニコラス・オタメンディで組む最終ラインはオランダに決定機を与えない。

1点のリードを守りながら、のらりくらりと時計の針を進めながら迎えた73分、左サイドを駆け上がったアクーニャがダンフリースに倒されてPKを獲得。そこまで激しい接触ではなかったが、あのあたりもファウルをもらうのが上手い。オランダが焦り始めた時間でもあり、そこを上手く突いた格好だ。

このPKをメッシが冷静に沈めて2-0。ここまではアルゼンチンにとって理想通りの試合運びで、試合は残り約20分。ベスト4の景色は見えていた。

しかし、ここからオランダが猛攻を仕掛ける。反撃のカギとなったのは高さだ。ルーク・デ・ヨング、ベグホルストと高さ自慢の選手を投入し、80分あたりからパワープレイを敢行。高さではオランダが上回っており、アルゼンチンは対応しきれなかった。

83分に右サイドからのクロスにベグホルストが頭で合わせて1点を返すと、その後もオランダは次々とロングボールを放り込んでアルゼンチンを押し込んでいく。

すると後半アディショナルタイム、ペナルティエリア手前で得たフリーキックでオランダはトリックプレイを披露。直接狙うと見せかけたコープマイネルスがパスを選択し、それを受けたベグホルストが相手DFを抑えながら左足でゴールへ流し込んで同点。オランダが土壇場で追いつき、準々決勝は2試合続けて延長戦へ持ち込まれた。

延長ではアルゼンチンに何度か決定機があったが、エンソ・フェルナンデスのミドルシュートもポストに弾かれて決まらず。2-2のままPK戦へと突入。

オランダは1人目のファン・ダイク、2人目のベルハイスが失敗。アルゼンチンは4人目のエンソ・フェルナンデスが失敗したものの、5人目のラウタロ・マルティネスが冷静に沈めて勝利。クロアチアの待つベスト4へと駒を進めた。

[W杯マッチ58]イエロー15枚が乱れ飛ぶ大熱戦 PK戦を制したアルゼンチン、悲願の優勝狙うメッシの旅は続く
5人目のラウタロが決めてアルゼンチンがベスト4へ photo/Getty Images

[スコア]
オランダ 2-2(PK 3-4) アルゼンチン

[得点者]
アルゼンチン

35分 ナウエル・モリーナ
73分 リオネル・メッシ(PK)

オランダ

83分 ボウト・ベグホルスト
90分+11 ボウト・ベグホルスト


[ポゼッション]
オランダ 45% アルゼンチン 39% 中立 16%

[シュート数]
オランダ 5本 アルゼンチン 15本

[枠内シュート]
オランダ 2本 アルゼンチン 6本

[イエローカード]

オランダ 7枚
ユリエン・ティンバー
ボウト・ベグホルスト
メンフィス・デパイ
ステフェン・ベルフハイス
ステフェン・ベルフワイン
デンゼル・ダンフリース
ノア・ラング

アルゼンチン 8枚

クリスティアン・ロメロ
マルコス・アクーニャ
リサンドロ・マルティネス
レアンドロ・パレデス
リオネル・メッシ
ニコラス・オタメンディ
ゴンサロ・モンティエル
ヘルマン・ペッセッラ



[レッドカード]

オランダ 1枚

129分 デンゼル・ダンフリース


[ラインナップ]

オランダ
フォーメーション:[3-5-2]

監督:ルイ・ファン・ハール

GK
アンドリエス・ノペルト(ヘーレンフェーン)

DF
ユリエン・ティンバー(アヤックス)
フィルジル・ファン・ダイク(リヴァプール/イングランド)
ナタン・アケ(マンチェスター・C/イングランド)

MF
ダレイ・ブリント(アヤックス)
デンゼル・ダンフリース(インテル/イタリア)
マルテン・デ・ローン(アタランタ/イタリア)
フレンキー・デ・ヨング(バルセロナ/スペイン)
コーディ・ガクポ(PSV)

FW
メンフィス・デパイ(バルセロナ/スペイン)
ステフェン・ベルフワイン(アヤックス)

交代出場
46分 ステフェン・ベルフワイン→ステフェン・ベルフハイス
46分 マルテン・デ・ローン→トゥーン・コープマイネルス(アタランタ/イタリア)
64分 ダレイ・ブリント→ルーク・デ・ヨング(PSV)
78分 メンフィス・デパイ→ボウト・ベグホルスト(ベジクタシュ/トルコ)
113分 コーディ・ガクポ→ノア・ラング(クラブ・ブルージュ/ベルギー)

アルゼンチン

フォーメーション:[3-5-2]

監督:リオネル・スカローニ

GK
エミリアーノ・マルティネス(アストン・ヴィラ/イングランド)

DF

クリスティアン・ロメロ(トッテナム/イングランド)
ニコラス・オタメンディ(ベンフィカ/ポルトガル)
リサンドロ・マルティネス(マンチェスター・ユナイテッド/イングランド)


MF
ナウエル・モリーナ(アトレティコ・マドリード/スペイン)
ロドリゴ・デ・パウル(アトレティコ・マドリード/スペイン)
アレクシス・マック・アリスター(ブライトン/イングランド)
エンソ・フェルナンデス(ベンフィカ/ポルトガル)
マルコス・アクーニャ(セビージャ/スペイン)

FW
フリアン・アルバレス(マンチェスター・シティ/イングランド)
リオネル・メッシ(パリ・サンジェルマン/フランス)


交代出場
67分 ロドリゴ・デ・パウル→レアンドロ・パレデス(ユヴェントス/イタリア)
78分 マルコス・アクーニャ→ニコラス・タグリアフィコ(オリンピック・リヨン/フランス)
78分 クリスティアン・ロメロ→ヘルマン・ペッセッラ(レアル・ベティス/スペイン)
82分 フリアン・アルバレス→ラウタロ・マルティネス(インテル/イタリア)
106分 ナウエル・モリーナ→ゴンサロ・モンティエル(セビージャ/スペイン)
112分 リサンドロ・マルティネス→アンヘル・ディ・マリア(ユヴェントス/イタリア)